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賃貸事例 0812-R-0053
共有者全員から委任状のとれていない建物賃貸借の可否

 5名共有の建物を賃貸するに当たり、そのうちの1名が海外に居住しているため委任状がとれていない。そのような状況の中で、1名の代表者が4名の代理人として賃貸借契約を締結しても問題ないか。

事実関係
 当社は賃貸の媒介業者であるが、このたび賃貸物件の所有権が5名の共有になっていて、そのうちの1名が海外に居住している物件を賃貸する。
 契約は、そのうちの1名が5名の代表として、賃貸借契約を締結するが、海外に行っている者からの委任状はとれていないという。

 なお、代表者は、海外に居住している者の同意はとれているとは言っているが、確証はない。ただ、その物件の持分は、各自5分の1ずつで、その点は不動産登記記録により確認がとれている。
 
質問
(1)  このような状況の中で、そのうちの1名(代表者)と賃貸借契約を締結しても問題ないか。
(2)  委任状のとれていない海外居住者がいずれ日本に帰ってきたときに、海外に居住していたことや、4人が勝手に賃貸したなどということを理由に、物件の明け渡しを求めてくるようなことは考えられないか。
 
回答
1.結論
 
(1) 質問1.について ― 海外にいる者も賃貸の委任をしている旨の確認書を他の4名から取り付け、そのうえで代表者が海外居住者を含めた4名の代理人として賃貸借契約を締結するのであれば、とりあえずのところは問題ない。
(2) 質問2.について ― 考えられなくもないが、それだけの理由で明け渡しが認められることはないと考えてよい。
 ただ、実際に海外居住者が賃貸の委任をしていないとすれば、帰国後にその持分についての無断賃貸ということで、共有者間で紛争が生じないとも限らない。したがって、後日に問題を残さないようにするためには、その代表者に事前に海外居住者からも委任状を取り付けておいてもらうことが必要となる。
 
2.理由
 
(1)について
 本件の【回答】における結論とは別に、「共有物を賃貸する行為は「管理行為」であるから、今回の賃貸借契約を代表者が締結するには、その共有者の共有持分の過半数の同意があれば、適法に行うことができる(民法第252条)」という見解もある。
 したがって、その見解に従えば、本件の場合には、すでに全体の持分の5分の4が同意し、委任状も提出されているので、それだけで代表者は賃貸借契約を有効に成立させることができる、ということになる。
 しかし、その見解はまだ確立されたものになっているとはいえないので、後日紛争になっても、その解決を共有者間で行ってもらえるよう、【回答】にあるような方法で対処するのが適当であろう。
(2)について
 本件の取引は、少なくとも共有持分の5分の4が同意しているので、残りの5分の1の共有者(海外居住者)が無効を主張するようなことは考えられない。
 したがって、その海外居住者からの帰国後の理由が、持分の無断賃貸であるとか、仮にその者が海外での事業に失敗し、帰国後の住まいがないとしても、それだけで共有物全体の賃貸借契約を終了させることは、共有理論上も、また、共有物の賃貸借契約の解除を「管理行為」とする判例理論上からもできないと考えられる(最判昭和29年3月12日民集8巻696頁、最判昭和39年2月25日民集18巻329頁)。
 
参照条文
  ○ 民法第252条(共有物の管理)
 共有物の管理に関する事項は、前条(共有物の変更)の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
 
監修者のコメント
 
共有物を目的とする賃貸借契約の「解除」は、民法252条の管理行為に該当するということは、最高裁の判例理論として確立しているが、賃貸借契約の「締結」そのものについて管理行為と解する最高裁判例はない。下級審の判例では、共有地への賃借権の設定を管理行為と判断したものがあるが(大阪高判昭和34年8月29日判時205号14頁)、学説では賃借権の設定は処分行為とみて共有者全員の同意が必要という見解も有力である。したがって、慎重を期し、海外居住者からも委任状を取ることが望ましい。

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