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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0812-R-0052
建物賃貸借における中途解約時の敷金没収条項等の有効性

 建物賃貸借契約を借主が中途解約する場合に、貸主がその敷金を全部没収するという特約は有効か。一定の賃料を前払いすることにより、契約を即時終了させることができる特約を同時に設けた場合はどうか。

事実関係
 当社は、賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、店舗や事務所の賃貸借(定期借家を含む。)の場合には、借主からの中途解約に際し、一定の範囲内のものであれば、敷金を全額没収するなどの違約金を定めても法的に問題ないと考えているが、住宅の賃貸借(ただし、定期借家を除く。)についても、同様の違約金条項を定めたいと考えている。
 
質問
(1)  店舗・事務所の場合には、原状回復費用の負担のほかに、敷金が賃料の6か月分程度以内のものであれば、その全額を没収しても法的に問題ないと考えてよいか。
(2)  住宅の場合には、原状回復費用の負担のほかに、敷金が賃料の2か月分程度以内のものであれば、その全額を没収しても法的に問題ないと考えてよいか。
 なお、この場合の原状回復費用の中には、通常使用に伴う損耗分についての負担は含まれないものとするつもりである。
(3)  店舗・事務所については、たとえば3か月前の予告と3か月分の賃料の支払いをもって、また、住宅については、たとえば1か月前の予告と1か月分の賃料の支払いをもって、それぞれその間に借室を原状回復のうえ明け渡す場合には、契約期間中であっても、即時に契約を終了させることができる旨の特約を設けることにしたいが、このような条項を設ける場合に、併せて上記1.2.のような敷金没収条項を定めることは、暴利行為として無効になるか。
(4)  上記1.から3.のような条項は、借地借家法上「借主に不利な条項」として無効とされるようなことはないか。
 
回答
1.結論
 
(1) 質問1.について ― 原則として、問題ないと考えてよい。
(2) 質問2.について ― 原則として、問題ないと考えてよい。
(3) 質問3.について ― 必ずしも暴利行為になるとはいえないが、たとえば、解約の申し出による借主の明渡しが当初の契約期間の満了前であったとしても、その前提として、借主が期間満了3か月前の予告をし、かつ、3か月分の賃料を支払い、その間に原状回復のうえ借室を明け渡したような場合には、実質的には期間の満了による契約の終了であり、貸主に損害が生じるとはいえないので、ペナルティとしての敷金の没収は暴利行為とされる可能性がある。
(4) 質問4.について ― 条項自体が無効とされることはないと考えられるが、たとえば、前記(3)のようなケースにおいては、運用面で一部無効とされる余地もあると考えられる。
 
2.理由
 
(1)について
 貸室が店舗・事務所の場合には、借主が法人の場合はもちろん、個人であっても消費者契約法上「事業者」として取り扱われることになるので、借主からの中途解約によるペナルティとして、貸主が敷金を没収することは、必ずしも不当な行為とはいえない。
 しかし、その没収される敷金の額が、「損害賠償額の予定」としてはあまりにも高額であったりするような場合には、その相当な範囲を超える部分について、暴利行為として無効とされる可能性がないとはいえない。
(2)について
 貸室が住宅の場合で、借主が個人の場合、その借主は消費者であり、消費者契約法の適用を受けることになる。
 したがって、本件の没収条項の有効性について判断する場合には、その没収条項が同法第9条の「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」の規定に抵触するか、あるいは第10条に定める「消費者の利益を一方的に害する条項」になるのかどうかということになるが、この点については、特に関西方面での裁判において「敷引特約」の有効性について出されているいくつかの判例が参考になると考えられる。

 しかし、特約の内容としては、本件の場合は、一般的な明渡しや原状回復に伴う特約とは異なり、借主の中途解約という契約違反に対するペナルティとしての敷金没収であるので、本件の賃料の2か月分程度の没収であれば、契約自由の原則からも、また、実際に貸主が被るであろう損害額からも、原則的には有効なものとして取り扱って差し支えないものと考える。

(3)について
 一定の予告期間の設定と、一定の賃料の前払いを前提として、即時契約を終了させる条項を設けることはよくあるが、その場合の賃料の前払分は、借主がその間は物件を占有しうる権利としての対価でもあるから、その前払分が3か月分(住宅の場合は1か月分)になったからといって、即時解約条項が無効になるということはまずないと考えてよい。
 とすると、問題は敷金の没収条項の有効性いかんということになるのであるが、この敷金の没収条項の目的は、即時解約を含めた借主からの中途解約であった場合に、貸主に予想される賃料の減収分を埋め合わせるためのものであるから、実際に没収する敷金の額が、貸主に予想される減収額を大幅に上回るものであるかどうかが、暴利行為となるか否かを判断するひとつのメルクマールになると考えられる。

 このように考えると、本件の店舗・事務所の場合の敷金6か月分の没収や住宅の場合の敷金2か月分の没収は、必ずしも貸主に予想される賃料の減収分を大幅に上回るものとは考えられないので、これらの没収条項と上記即時解約条項を併せて定めたとしても、【回答】の結論(3)で述べたようなケースを除き、通常のケースにおいては、暴利行為として無効になるというようなことはないと考えられる。

(4)について
 建物の賃貸借契約において、その条項が「借主に不利な条項」として無効とされるのは、借地借家法第30条(強行規定)に定められているとおり、同法第3章(借家)における第26条(建物賃貸借契約の更新等)、第27条(解約による建物賃貸借の終了)、第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)および第29条(建物賃貸借の期間)の規定に反する特約で、建物の賃借人に不利なものが無効とされる。

 したがって、本件のような特約については、借地借家法の規定からではなく、個々の契約内容ごとに、民法の一般条項(公序良俗(90条)、信義則(1条2項))や消費者契約法の観点から、その有効・無効が判断されるということになる。

 
参照条文
  ○ 民法第420条(賠償額の予定)
(1)  当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
(2)  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行為を妨げない。
(3)  違約金は、賠償額の予定と推定する。
 
○ 消費者契約法第2条(定義)
(1)  この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。
(2)  この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。
(3)  この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。
 
○ 同法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払い期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
 
○ 同法第10条(消費者の利益を一方的に害する各項の無効)
 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に(注)規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
(注)民法第1条(基本原則)
(1)(略)
(2)権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
(3)(略)
 
○ 借地借家法法第30条(強行規定)
 この節(注)建物賃貸借の更新等)の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
(注)第3章 借家 第1節 建物賃貸借の更新等
・第26条(建物賃貸借の更新等)
・第27条(解約による建物賃貸借の終了)
・第28条(建物賃貸借の更新拒絶等の要件)
・第29条(建物賃貸借の期間)
 
監修者のコメント
 敷金の没収条項が暴利行為になるかどうかは、個別事案における諸般の事情を総合考慮して判断しなければならないので、一律にその基準を設けることはできない。ただ、【回答】にあるように「個人」が「居住用」の建物を賃借する契約は、平成13年4月1日から施行されている消費者契約法が適用されるので、従来の暴利行為の成否の検討とは別に同法の観点からの有効性が検討されることになり、従来よりかなり緩やかな要件で無効とされる可能性が高い。

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