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賃貸事例 0812-R-0052掲載日:2008年12月
建物賃貸借における中途解約時の敷金没収条項等の有効性
建物賃貸借契約を借主が中途解約する場合に、貸主がその敷金を全部没収するという特約は有効か。一定の賃料を前払いすることにより、契約を即時終了させることができる特約を同時に設けた場合はどうか。
事実関係 | |
当社は、賃貸の媒介業者兼管理業者であるが、店舗や事務所の賃貸借(定期借家を含む。)の場合には、借主からの中途解約に際し、一定の範囲内のものであれば、敷金を全額没収するなどの違約金を定めても法的に問題ないと考えているが、住宅の賃貸借(ただし、定期借家を除く。)についても、同様の違約金条項を定めたいと考えている。 | ||
質問 | |
(1) | 店舗・事務所の場合には、原状回復費用の負担のほかに、敷金が賃料の6か月分程度以内のものであれば、その全額を没収しても法的に問題ないと考えてよいか。 | |
(2) | 住宅の場合には、原状回復費用の負担のほかに、敷金が賃料の2か月分程度以内のものであれば、その全額を没収しても法的に問題ないと考えてよいか。 なお、この場合の原状回復費用の中には、通常使用に伴う損耗分についての負担は含まれないものとするつもりである。 |
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(3) | 店舗・事務所については、たとえば3か月前の予告と3か月分の賃料の支払いをもって、また、住宅については、たとえば1か月前の予告と1か月分の賃料の支払いをもって、それぞれその間に借室を原状回復のうえ明け渡す場合には、契約期間中であっても、即時に契約を終了させることができる旨の特約を設けることにしたいが、このような条項を設ける場合に、併せて上記1.2.のような敷金没収条項を定めることは、暴利行為として無効になるか。 | |
(4) | 上記1.から3.のような条項は、借地借家法上「借主に不利な条項」として無効とされるようなことはないか。 | |
回答 | |
1.結論 | ||||||||||
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2.理由 | ||||||
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参照条文 | ||
○ 民法第420条(賠償額の予定) | ||
(1) | 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。 | |
(2) | 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行為を妨げない。 | |
(3) | 違約金は、賠償額の予定と推定する。 | |
○ 消費者契約法第2条(定義) | ||
(1) | この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。 | |
(2) | この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。 | |
(3) | この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。 | |
○ 同法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効) | ||
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。 一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分 二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が2以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払い期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分 |
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○ 同法第10条(消費者の利益を一方的に害する各項の無効) | ||
民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に(注)規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 (注)民法第1条(基本原則) (1)(略) (2)権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 (3)(略) |
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○ 借地借家法法第30条(強行規定) | ||
この節(注)建物賃貸借の更新等)の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。 | ||
(注)第3章 借家 第1節 建物賃貸借の更新等 ・第26条(建物賃貸借の更新等) ・第27条(解約による建物賃貸借の終了) ・第28条(建物賃貸借の更新拒絶等の要件) ・第29条(建物賃貸借の期間) |
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監修者のコメント | |
敷金の没収条項が暴利行為になるかどうかは、個別事案における諸般の事情を総合考慮して判断しなければならないので、一律にその基準を設けることはできない。ただ、【回答】にあるように「個人」が「居住用」の建物を賃借する契約は、平成13年4月1日から施行されている消費者契約法が適用されるので、従来の暴利行為の成否の検討とは別に同法の観点からの有効性が検討されることになり、従来よりかなり緩やかな要件で無効とされる可能性が高い。 |