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賃貸事例 0808-R-0043
「始期付」賃貸借契約の期限到来前のキャンセル

 賃料の支払開始日や建物の引渡し期日を先日付とする、いわゆる「始期付」の賃貸借契約を締結した場合、その期限の到来前に、解約の申入れをすることができるか。

事実関係
 当社は、賃貸の媒介業者であるが、先月、今月の10日を賃料の支払開始日兼鍵の交付日(建物の引渡し日)とする住宅の賃貸借契約を締結した。そして、借主は、すでに今月の10日からの賃料ほか、その翌月分の賃料まで支払ってはいたが、どういうわけか、急に、近くを貨物列車が何本も走り音がうるさいので、キャンセルをしたいと言ってきた。
 なお、当社としては、事前に、近くに線路があることは説明していたので、特に貨物列車が通ることなどについての説明はしていない。また、中途解約に関する取扱いについては、本件の賃貸借契約書には、借主からの解約申入れには、1か月前の申し出を要する旨を定めたが、賃料の支払開始日前のキャンセルについては何ら取り決めていない。
 
質問
1.,   このような契約の場合、借主からの賃料支払開始日前のキャンセルは認められるのか。
2.  本件の契約においては、すでに敷金も支払われ、媒介手数料も支払われているが、媒介業者としてはどのような対応をとるべきか。
 
回答
1.結論
(1)質問1.について —
契約が成立している以上、原則として、認められない。したがって、どうしても契約を解消するということになれば、借主は、貸主に対し、その損害を賠償しなければならない(民法第128条、第709条)し、キャンセルの問題が長引き、そのまま期限(始期)が到来してしまえば、今度は、債務不履行としての責めを負うことになる(民法第412条第1項、第415条)。
(2)質問2.について —
媒介業者としては、今回のキャンセルは、自らの説明不十分が原因とも考えられるので、ひとつの考え方としては、媒介業者が借主から受領した媒介手数料の全額を借主に返還し、さらに、借主が貸主に差し入れた敷金や賃料の前払分も全額借主に返還する方向で話し合いをまとめることが適当であると考える。
 なお、今回の話し合いをまとめるにあたっては、貸主が被った損害についての補填がなされていないので、この点については、媒介業者が、次の媒介の際に、貸主から受領する半分の媒介手数料を放棄するなどのサービス的対応を検討する余地があろう。
 
2.理由
(1)について
 本件の契約は、当事者の意思としては、いわゆる「始期付」の賃貸借契約を締結したものと考えられる。したがって、このような「始期付」の賃貸借契約の場合には、「停止条件付」の場合と同様に、契約の効力の発生が始期まで停止されることになるので(民法第135条)、その始期付の権利については、一般に民法第128条の規定(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止規定)が準用されると解されている。なぜならば、始期付の権利は、将来必ず取得される権利であって、条件付の権利よりも一層強力だからである。
 したがって、このような「始期付」の賃貸借契約を締結した相手方は、互いに「期限」が到来するまでは、その相手方が期限到来によって受ける利益を害することができない(民法第128条)ので、その結果、その利益を侵害した者は、不法行為として、その相手方に対し、損害賠償の義務を負うことになる(民法第709条)。また、今回のキャンセル問題が長引き、そのまま期限(始期)が到来してしまえば、その期限の到来によって履行遅滞になるので(民法第412条第1項)、今度は、借主は、貸主に対し債務不履行による損害賠償の責任を負うことになる(民法第415条)。
(2)について
(略)
 
参照条文
  ○ 民法第135条(期限到来の効果)
(1)  法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
(2) (略)
○ 民法第128条(条件成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
   条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
○ 民法第412条(履行期と履行遅滞)
(1) 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
(2)(3)(略)
○ 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
○ 民法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 
監修者のコメント
 
 本件のような始期付の契約の場合、その始期の到来するまでの間に、当事者の一方から事情の変更などを理由に契約を白紙に戻したいということがある。そのような場合に備えて、白紙解約の措置を取り決めておくことが望ましいケースもあるが、その特約をしなかった以上、一方的にキャンセル(解除)することはできない。契約の「成立」と「効力発生」は、別概念であって、効力発生が、始期まで留保されているだけで契約自体は完全に成立しているからである。したがって、キャンセルを強行したときは、債務不履行であり、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。
 なお、本ケースでは、キャンセルの理由として「貨物列車が何本も走り音がうるさい」と言っているが、もしそれが真実であったときは、錯誤無効(民法第95条)と、その錯誤に重大な過失があるかどうか(同条ただし書)が問題となり得る。

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