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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 0808-R-0040
短期賃貸借の保護のある物件の競落前の期間満了

 短期賃貸借の保護の制度の適用を受ける賃貸借の場合は、競落人の代金納付(所有権取得)の直前に賃貸借の期間が満了しても、その賃貸借は法定更新され、敷金関係も競落人に承継されるのか。

事実関係
(1)  当社は、ある賃貸アパート1棟を居抜きのまま競落した。ところが、そのうちの1戸については、他の住戸と異なり、その賃貸借(短期賃貸借)の期間が競落前(代金納付前)に満了していた。
(2)  当社としては、この賃貸アパートを収益物件として競落したので、そのまま賃貸経営を続けていきたいが、この住戸については、法的にどのような対応をとったらよいかがよくわからない。
  
 なお、この住戸の賃貸借契約は、抵当権の登記には後れるが、短期賃貸借の保護の制度が廃止になった日(平成16年4月1日)より前の平成16年3月中の契約であり、したがって、短期賃貸借の保護の制度の適用のある賃貸借であることが判った(後記【参照条文】参照)。
 
質問
 この住戸の賃貸借契約は、平成16年4月1日施行の改正民法附則第5条の規定により、法定更新され、敷金関係も競落人である当社に承継されると考えられるが、どうか。
 
回答
1.結論
 競売による差押えの効力が生じた後の期間満了による更新は、競落人に対抗できない。したがって、短期賃貸借の保護の制度の適用がある賃貸借といえども、その契約は当然には更新されず、敷金関係も競落人には承継されない。
2.理由
(1)  この契約は、確かに短期賃貸借の保護の制度の適用を受ける契約ではあるが、短期賃貸借が保護されるのは、抵当権の実行による競売開始決定の登記(差押えの登記)より前に契約が締結または更新された場合の賃貸借の期間の間だけであり、したがって、その契約の期間が差押えの効力が生じた後に満了した場合には、賃借人は、その更新をもって、抵当権者に対抗することができない(後記【参照判例】参照)。そのため、競売実務においても、その物件明細書には、次のように記載されることになっている。
  「左記賃借権は抵当権設定後の賃借権である。期限後の更新は買受人に対抗できない。」
  「○○が占有している。同人の賃借権は、平成○年○月○日の経過により、差押え後に期限が経過するものである。」
(以上、東京地方裁判所民事執行センターの場合の記載例)
(2)  また、本件の賃貸借における「敷金」についても、その賃貸不動産が譲渡された場合に、敷金関係が当然に新貸主に承継されるのは、賃借人が新貸主に対抗できる場合だけであり(大判昭和13年3月1日民集17巻318頁)、また、賃貸借の終了後に賃貸不動産が譲渡された場合には、その敷金関係は譲受人には当然には承継されないとされているので(最判昭和48年2月2日民集27巻1号80頁)、本件の競売の場合においても同様に解されている。
 
参照条文
  ○ 民法附則(平成15年8月1日法律第134号)第5条(短期賃貸借に関する経過措置)
 この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法第602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。
 
 
参照判例
  ○ 最判昭和38年8月27日民集17巻6号871頁、判時351号31頁、判タ154号58頁(要旨)
 
「民法395条の短期賃貸借においても、(中略)、抵当権実行による差押えの効力が生じた後に右賃貸借の期間が満了したような場合には、借地法6条、借家法2条の適用はなく、右賃貸借の更新を抵当権者に対抗できないと解するのが相当である。ただし、抵当権設定登記後に設定登記された賃貸借は、民法602条の期間を超えないものにかぎり、例外として抵当権者に対応しうることとし、かくして、抵当権の設定された不動産の利用と抵当権者の利益とを調整しようとする同法395条の趣旨にてらし、賃借権保護の限界として、右のように制限して適用すべきものと解するのが相当である。」
 
 
監修者のコメント
 平成16年4月1日施行の民法改正による短期賃貸借保護制度の廃止は、抵当権の実行(競売)によって賃借人が賃借不動産を明け渡さなければならない、という点について問題意識をもつ向きが多い。
 しかし、【回答】のように競売開始決定後の賃貸借期間満了による更新は、新所有者に対抗しえないのであるから、賃借人にとってより重大問題は明渡し問題より、差し入れていた敷金の返還請求を新所有者にすることができるか否かの問題である。

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