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賃貸事例 0802-R-0027
建物賃貸借において、明渡しの「正当の事由」が認められる条件

建物賃貸借において、明渡しの「正当の事由」が認められるには、どのような条件が必要か。建物明渡請求訴訟を提起する段階で、「正当の事由」がなくても、貸主からの中途解約が認められることはあるか。

事実関係
 当社が管理しているアパートは、築40年近く経っているので、かなり老朽化している。周辺の建物もほとんど建て替えられ、そのほとんどが鉄骨造か鉄筋コンクリート造のいわゆる賃貸マンションになっている。
 そのような状況下にあって、このアパートには昔からの入居者が住みついており、明渡しに難儀しそうな人達が数人住んでいるが、この際、大家に建て替えの話をし、ビジネスにつなげたいと考えている。
 なお、大家はかなりの資産家で、今建て替えなければ生活に困るというわけではないが、かなり高齢なので、今のうちに息子も交えて話を進めようと思っている。
 
質問
1.  建物もまだ使えるし、大家も資産家で、生活に困ることがないような状況の中で、入居者の立退きについての「正当な事由」が認められる可能性はあるか。
  
 なお、土地の利用状況については、その消化容積率は、50%程度と考えられる。
2.  立退きが難しいと考えられる人のほとんどが、6ヵ月後に更新時期を迎えるので、今からすぐに大家の了解を取り付けたとしても、期間満了1年前から6ヵ月前までの間に行う更新拒絶の通知が間に合わない
 このような場合は、次の更新時(2年後)まで待たなければならないのか。他に何か良い方法はないか。
 
回答
(1)  質問1.について — 貸主を取り巻く客観情勢を見る限り、「正当の事由」が認められる可能性は、かなり低いと考えられる。

 しかし、建物もかなり古いようであるし、周辺の建物とのバランスや、土地の有効利用という観点からの容積率の消化状況も50%程度ということなので、これからの条件提示いかんによっては、認められる可能性が全くないとはいえない。ただし、肝心の貸主に積極的な建物使用の必要性が乏しいので、入居者に対しては、かなり高額の「立退料」を支払わない限り、「正当の事由」を具備するという判断は出ないのではないかと考えられる。

 なお、本件類似のケースの裁判例として、大阪地裁の昭和57年7月19日の判決(判タ479号)があるが、このケースにおける建物(木造長屋式家屋)は、鑑定によれば、「耐用年数があと10年ある」とされており、その判決において、「貸主において、相当高額の立退料を提供するなら、貸主側の必要性等の事情を補完し、正当事由を具備すると認めるのが相当である」とし、立退料として、「借家権価格のみでは不十分であり、移転および移転先確保のための費用のほか、その他の借主の個別的事情を重視して算定した金額が相当である」としている。
 
(2)  質問2.について —
建物の明渡しを求めるためには、必ずしも「更新拒絶」という方法をとらなければならないというわけではなく、法定の期間内に更新拒絶の通知ができなければ、契約は法定更新されることになり、その場合は、期間の定めがない契約となるので、その時点で、貸主に「正当の事由」があるという前提で、貸主から「中途解約」の申し入れをするという方法もある(借地借家法第26条、第27条、第28条)。

 その点について、判例は、「解約申入れの時点で正当事由が具備されていなくとも、解約申入れに基づく建物明渡訴訟の係属中に正当な事由を具備するに至ったときは、その正当事由を具備するに至った時から6ヵ月の期間経過により当該賃貸借は終了する」(最判昭和41年11月10日民集、20巻9号1712頁)と解している。
  
 したがって、借主がどうしても話し合いでは明渡しに応じないというのであれば、訴訟の中で、あらためて「立退料」の支払を正当事由の補完材料として提供することにより、判決を待つという方法も考えられる。
 
参照条文
  ○  借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
(1)  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新しない旨の通知又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
(2)(3) (略)
 
○  借地借家法第27条(解約による建物賃貸借の終了)
(1)  建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
(2)  (略)
  ○  借地借家法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
   建物の賃貸人による第26条第1項の(更新拒絶の)通知又は(第27条の)建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(中略)が建物の使用を必要とする事情のほか、(中略)並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 
監修者のコメント
 更新拒絶又は解約申入れの「正当の事由」の存否は、賃貸借をめぐる問題の中でも、最も難しい問題と言っても過言ではない。しばしば、貸主が建物が古いから建て替えたいからとか、子供が独立して入居させたいという理由で「正当の事由」があると考える人がいるが、そのような簡単な問題ではない。貸主、借主双方の事情を総合的に斟酌して判断しなければならない。ただ、裁判の現実として「立退料」の提供がまったくなく「正当の事由」が認められることは、極めて稀である。
 本ケースも築40年近いので建て替えたいというようであるので、それだけで「正当の事由」が認められることは難しい。相応の立退料の支払いが要件になると思われる。

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