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賃貸事例 0709-R-0017
抵当権付倉庫が競売された場合の内部造作費用の回収

抵当権の設定登記がなされている倉庫の賃貸借の媒介をするが、万一競売になった場合、借主が数百万円かけて付加した内部造作はどうなるか。借主は投下資本の回収を図ることができるか。

事実関係
   当社は、抵当権の設定登記のなされている倉庫の賃貸借の媒介を行う。
 借主は、この倉庫に数百万円かけて内部造作を行い、営業を開始する。そのため、借主は、賃貸借契約の締結にあたり、万一建物が競売に付された場合、何とか貸主なり競落人あるいは配当の中から投下資本の回収を図りたいと考えている。
 
質問
 
1. 造作部分は、競売の対象になるか。
2. 競売の対象になる場合、借主は競売時点での残存価格(簿価)程度の投下資本の回収を図りたいが、そのようなことができるか。できるとすれば、どのような方法があるか。敷金や保証金についてはどうか。
 
回答
 
1.  結論
(1)  質問1.について
(物件により、ケースバイケースではあるが)原則として、競売の対象になる。ただし、取りはずし可能なものは、借主が執行官に申し出れば、動産として競売の対象にされないこともあると考えられる。
(2)  質問2.について
 敷金・保証金については、あらかじめ貸主との間で賃料債務と敷金・保証金返還請求権との相殺を取り決めておく方法が考えられる。また、内部造作についても、同様に貸主との間で賃料債務との相殺を取り決めるなり、あるいは、競落人に対し民法第196条による「占有者の費用償還請求権」を行使、もしくは費用償還請求権を被担保債権とする「留置権」を行使することにより、競落人から回収するという方法が考えられる。
 しかし、この費用償還請求権の行使や留置権の行使については、そもそも造作費用が「有益費」か否かというその前提となる判断の問題もあるし、また、本件のように買受人に対抗できない借主の場合には、買受人いかんによっては、造作を撤去したうえでの明渡し請求ということも考えられるので、媒介活動の時点で断定的なことを言うのは差し控えた方が無難である。
 なお、敷金・保証金の返還請求権と賃料債務との相殺については、当事者間で競売の申し立てがあった時に相殺の効力が生じる旨の特約(いわゆる相殺予約)をしておけば、仮にその敷金・保証金が第三者に差し押えられても、借主は、その相殺を差押え債権者に対抗することができる(後記【参照判例】参照)。
2.  理由
 競売の対象となる不動産は、まずその前提として、その不動産が債務者(本件の場合は貸主)または物上保証人(担保提供者)の所有であることが必要である。ところが、本件の倉庫の内部造作は、原則として借主の物であり、貸主の物ではない(民法第242条ただし書)。したがって、本件の倉庫の内部造作は、原則として競売の対象にはならないということになる。
 しかし、これはあくまでも理論上のことであって、実際の造作は建物本体と付加一体となっているケースが多いことから、実際の競売実務においては、理論とは逆の方向で行われている(民法第242条本文、第370条)。
 すなわち、執行裁判所の競売実務は、たとえば東京地方裁判所の場合、本件のような内部造作のある物件の評価を行うにあたっては、まず執行官が物件調査を行う際に当事者から内部造作についてのヒアリングを行い、その結果を踏まえ、次のような基準に基づいて評価人(不動産鑑定士)が評価をすることにより、手続上の統一を図っている。つまり、競売実務のうえでは、造作も含めた建物全体を競売の対象にすることを前提に評価をし、その造作による価格の増加額を建物価格から控除することにより、後日借主から費用償還請求等があった場合に、競落人との間で金銭解決が図れるようにしているのである。
○  改訂「競売不動産評価マニュアル」(東京競売不動産評価事務研究会編)=判例タイムズ1193号98頁(抜粋)
 「借家人が支出した必要費、有益費については、借家権が買受人の引受けとなる場合には、賃貸人たる地位の移転とともにその償還債務が買受人に承継されることになるし、借家権が買受人の引受けとならない場合でも、占有者の費用償還請求権(民法第196条)として行使されたり、償還請求権を被担保債権として留置権が成立、行使されることがあるので、そのような償還債務は、買受人が引き受けるべきものとして、建物価格から控除する必要がある。
(注)
(1)  (略)
(2)   建物の有益費については、単なる造作費に止まるものや、客観的な価値の増加が認められないような改装費用が主張されることが多いので、有益費の認定は慎重に行うべきである。例えば、店舗の内装費用についていえば、通常その内装は当該借家人の営業においてのみ価値を有するにすぎず、客観的に建物の価値を増加させていると認められるものは少ない。」
 
参照条文
 
○  民法第242条(不動産の付合)
 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
○  民法第370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)
 抵当権は、(中略)その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。(以下(略))
○  民法第196条(占有者による費用の償還請求)
 抵当権は、(中略)その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。(以下(略))
(1)  (略)
(2)   占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存している場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増加額を償還させることができる。(以下(略))
 
参照判例
 
○  最大判昭和45年6月24日民集24巻6号587頁(要旨)
 「第三者債務者が債務者に対して反対債権を有していたときは、その債権が差押後に取得したものでない限り、右債権及び差押債権の弁済期の前後を問わず、両債権が相殺適状に達しさえすれば、差押え後においても相殺をして差押債権者に対抗することができる。」
 
監修者のコメント
 本件のような倉庫に限らず、抵当権が設定されている建物一般について、競売がなされた場合、同じ問題が生ずる。
 借主の投下資本回収の担保方法としては、【回答】にあるとおりであるが、それらの特約は、あくまでも貸主の経済的破綻を予定してのものであるので、現実にはその約定の申入れをしにくいことも多い。
 このような賃貸借を媒介する場合、仲介業者にとって最も必要なことは、【回答】の2.理由欄にあるような事実を借主に十分に説明することであって、賃貸借を成約させたい一心で、借主に安心させるような方向で安易な説明をすることは厳に慎しむことである。

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