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賃貸事例 0704-R-0006
共同賃借人の権利義務と賃貸人の対応

共同賃借人の1人を「賃料支払責任者」として定めたが、その責任者が賃貸人に無断で退去してしまった場合の法的な対応

事実関係
  最近、女性専用の賃貸マンションなどを募集すると、数人で部屋を借りたいという申出を受けることがある。貸主は、きちんと家賃さえ払ってきれいに使ってくれるのであれば構わないと言っているのだが、仲介・管理をする業者の立場からすると、もし途中でけんか別れなどをして、1人が出ていった場合に、残りの者が家賃を全額支払えるのかといった不安もあるし、あとの権利関係がどうなるのかという心配もある。
質問
  1. 借主2名が連名で契約書に署名押印し、そのうちの1人を賃料の「支払責任者」と定めた場合、法的な賃料の支払義務がある者はその「支払責任者」ということになるのか。それとも、借主2名の共同責任ということになるのか。
  2. 契約の途中で、賃料の「支払責任者」が貸主に無断で退去してしまった場合、貸主は残りの1人に賃料の全額を請求することができるか。この場合、敷金についても、残りの1人がその全額を差し入れたものとみなして、原状回復の費用に充当することができるか。
  3. 借主2人にそれぞれ賃料の全額の支払義務があるようにするには、どのように定めればよいか。
回答
  1.結論
 
(1) 質問1.について
「支払責任者」を定めた取り決めの内容いかんによる。すなわち、その内容が「支払責任者」以外の者には支払義務がないという趣旨で賃貸人も了解のうえ定めたのであれば、当然「支払責任者」のみに支払義務があるということになるが、その「支払責任者」の意味が単なる「支払窓口」ということであれば、各人にその全額についての支払義務があるということになる(各人が2分の1ずつを負担する義務を負うということではない)。
  (2) 質問2.について
「支払責任者」の意味がいずれの場合であっても、(特段の事情がない限り)残りの者が入居を継続する限り、家主は賃料の全額を請求することができるし、敷金についても同様に全額原状回復費用に充当することができる。
  (3) 質問3.について
賃借人2人をそれぞれ「連帯債務者」とすればよい。
 
2.理由
(1)について

たとえば、A・B2人がCから共同で部屋を借りたとする。この場合、A・BはCに対し部屋を引渡せという債権をもつ代わりに、賃料を支払う義務を負う。逆に、A・B2人が共有しているマンションをCが借りた場合、CはA・Bに部屋を引渡せという債権をもつ代わりに、賃料を支払う義務を負う。

このように、債権債務の関係は一見表裏一体でわかりやすいようにみえるが、このような複数の当事者が関係する取引の場合には、1対1の当事者間の債権債務の関係とは異なり、まず第1に、多数の債権者または債務者の各自がどのように(部屋の引渡しや賃料の支払を)請求し、どのように(賃料の支払や部屋の引渡しという債務の)弁済をするかが問題となる。そして、第2に、その多数債務者のうちの1人が弁済したときに、それが他の債権者または債務者にどのような影響を与えるかが問題となる。

この点について、民法は次のような規定を置いている。

 
○第427条(分割債権及び分割債務)
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
 
たとえば、A・B2人で共有する不動産をCに2,000万円で売却した場合、(特約がなければ)A・B2人はCに対し各自1,000万円ずつの代金債権をもつ。逆に、A・B2人が共同でCから不動産を2,000万円で購入した場合には、(特約がなければ)A・B2人はCに対し各自1,000万円ずつの代金債務を負う。これを「分割債権債務の原則」という。

しかし、この分割債権債務の原則は、他方、当事者の意思や取引の実情にそぐわないというデメリットがある。たとえば、本問のように1棟の建物とか1戸のマンションを共同で賃借する場合に、民法の規定どおりであれば、(特約がなければ)賃借人は賃料を均等割して支払うことになるのであるが、それでは当事者の意思あるいは取引の実情にそぐわないということから、判例は、「賃貸人との関係においては、各賃借人は目的物の全部に対する使用収益をなしうる地位にある」として、賃料債務を不可分とみて賃貸人は賃借人各自に賃料の全額を請求できるとした(大判大正11年11月24日民集1巻670頁)。この考え方は、通説・判例であり異説はないといってよい。

したがって、本問1.の場合には、「支払責任者」だけが賃料の支払義務を負うということでない限り、貸主は借主各人に対し賃料の全額を請求することができるということになる。

(2)について
本問2.の敷金の関係においても、民法は次のような規定を置いている。

 
○第428条(不可分債権)
債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
 
たとえば、A・B2人が共同でマンションの1室を購入した場合のように、多数の債権者(買主)が分割することのできない給付を目的とする債権をもち、または多数の債務者(たとえば共有の売主)がそのような分割することのできない債務を負うのを「不可分債権債務の関係」といい、前者を「不可分債権」といい、後者を「不可分債務」という。そして、この不可分給付には、本件のような「性質上不可分」の場合と、「当事者の意思」によって可分の給付を不可分とする場合(たとえば、A・Bが代金を分割しないで、そのうちの1人だけが支払うというような特約をする場合)とがある。

そして、この不可分債務(本問の場合は、貸主の引渡し債務)については、その不可分債権者(共同借主)の1人が履行の請求(部屋を引渡せという請求)をすれば、その効力は全債権者(他の共同借主)のためにも生ずるので、その不可分給付の対価に準じる差入れ敷金についても、賃料と同じように、貸主が原状回復のために権利を行使し、その残りの敷金について現在入居中の借主が返還請求権を行使すれば、その効力は無断で退去した他の借主にも及ぶということになる。

なお、本件に関連し、「共同賃借人は、各自賃借物全部の返還義務を負う。」とする判例があるので、次に紹介する。

(3)について
 (略)

 
(1) 質問1.について
「支払責任者」を定めた取り決めの内容いかんによる。すなわち、その内容が「支払責任者」以外の者には支払義務がないという趣旨で賃貸人も了解のうえ定めたのであれば、当然「支払責任者」のみに支払義務があるということになるが、その「支払責任者」の意味が単なる「支払窓口」ということであれば、各人にその全額についての支払義務があるということになる(各人が2分の1ずつを負担する義務を負うということではない)。
  (2) 質問2.について
「支払責任者」の意味がいずれの場合であっても、(特段の事情がない限り)残りの者が入居を継続する限り、家主は賃料の全額を請求することができるし、敷金についても同様に全額原状回復費用に充当することができる。
  (3) 質問3.について
賃借人2人をそれぞれ「連帯債務者」とすればよい。
参考判例
  ○大判大正7年3月19日民録24輯445頁(要旨)
各賃借人は賃貸人に対し賃借物全部を返還する義務を負担するが故に、賃貸人たる被上告人が共同賃借人の1人たる上告人のみを被告として賃貸物の返還を訴えたるは正当なり。
監修者のコメント
共同賃借人のうちの「賃料支払責任者」の意味について【回答】のいうどちらなのか、裁判で争われてもおかしくない事例であるが、おそらく賃貸借契約締結当時の貸主の意思解釈の問題になると考えられる。貸主が、「この人が払ってくれればよい」と思ってその人を「支払責任者」と定めることに同意したという事実が認定されれば、その者のみの支払義務が認められ、あくまでも「その人が支払の代表者あるいは支払名義人になる」と理解していたということであれば、法的な支払義務は全員にあると判断される可能性が高い。

共同賃借人の場合は、そのような取り決めをしなければ、民法解釈上、【回答】のように当然に全員の連帯債務として、全員が全額の支払義務を負うことになるが、やはり契約書の条文に「賃料は、賃借人全員が連帯して支払う」旨を念のため明記しておくことが適切である。

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