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売買事例 1508-B-0201
建物の傾斜による瑕疵担保責任の有無の判断とその対応の是非

 当社が売買の媒介をした築後15年の住宅について、建物の傾斜が発見された。そこで当社は自社の「水平器」で計測し、その傾斜角が約1,000分の10だったので、買主に対し、専門の調査会社に調査を依頼し、そのあとの処理は弁護士に相談するよう伝えた。
 一般に建物の傾斜は、どの程度以上が瑕疵となるか。本件の当社の対応は、媒介者として妥当か。何か問題があるか。

事実関係

 当社が先日売買の媒介をした築後15年の住宅について、買主が入居後すぐに建物の傾斜に気が付いたので、当社が自社の「水平器」で計測したところ、居間の床部分に約1,000分の10の傾斜があることがわかった。
 しかし、他の部分がどうかよくわからなかったので、当社は買主に対し、他の部分にも傾斜があるかも知れないので、専門の調査会社に詳しく調べてもらうよう伝え、そのあとの対応については、その調査結果を踏まえて弁護士に相談するよう伝えた。

質 問

1.  建物の傾斜は、一般にどの程度以上が瑕疵となるか。
2.  本件の当社の対応は、媒介業者として妥当か。何か問題はあるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 建物の築年数など、ケースによって一概にはいえないが、最近の裁判例の中で約1,000分の8の傾斜を「瑕疵」と判断したものがあり、1つの参考にはなるが、その判旨を読む限り、それ以下の傾斜(1,000分の5)であっても「瑕疵」と認定される可能性があるといえる(後記【参照判例】参照)。
 質問2.について ― 方向性としては、妥当といえる。しかし、貴社が自社の「水平器」による調査の結果を売主に伝える前に買主に伝え、今後の対応についてのアドバイスをした点については、仮に売主が遠方に転居しているという事情があったとしても、問題点として残る可能性がある。
2.  理 由
について
 築年数が経った建物の傾斜の原因は大きく分けて2つあり、1つは建物の床組の欠陥による傾斜(たとえば、床を支えているつかや根太・大引き等が折れている、曲っている、欠けているなど)で、もう1つはつか石や地盤そのものの不同沈下による建物の傾斜である。したがって、いずれもその原因が隠れたところにあり、一見して傾斜の有無もわかりにくいため、その傾斜の度合が一定以上の場合には、入居者の日常生活にも健康面にも支障を来たす可能性があり、瑕疵担保責任の対象になり得る。
 しかし、その傾斜の度合がどの程度以上であれば「瑕疵」になるかについては、その原因との関係もあり、一様ではなく、過去の裁判例によって判断するしかないが、1つの例として、その中でも比較的本事例と同じような築年数の建物で、傾斜の度合いが小さい平成19年の東京地方裁判所の約1,000分の8の傾斜を「瑕疵」と判断した裁判例が参考になると考えられる。ただ、結論⑴でも述べたとおり、その判旨を読む限り、それ以下の傾斜度(1,000分の5)のものであっても「瑕疵」とされる可能性があるので、実務においては慎重な対応が必要である(後記【参照判例】参照)。
について
 本件のような建物の傾斜の問題は、売主が一番よく知っていることなので、本件のように買主との間だけで対応するのでなく、むしろ先に売主に計測結果を伝えることによって、売主としてもその対応についての時間がとれるので、当事者が感情的になることもなく、その原因(たとえば、ピアノの重量による床の沈下など)についても早期に発見でき、そのために買主からの「詳細調査」というムダな出費もなくスムーズな解決が得られる可能性があるからである。

参照条文

 民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。(以下、略)

参照判例

 東京地判平成19年4月6日
 「本件建物の傾斜についての測定結果によれば、本件建物は、出入口のある北側から建物奥になる南側にかけて低くなっており、その高低差は1,490㎝の距離で約12㎝程度(傾斜角約1,000分の8)にはなっていると認められる。(中略)一般に、1,000分の5の傾斜角で壁と柱の間に隙間が生じ、壁やタイルにきれつが入る。窓・額縁や出入口枠の接合部に隙間が生じ、犬走りやブロック塀など外部構造的に被害が生じるとされ、1,000分の10の傾斜角では柱が傾き、建具の開閉が不良となる、使用困難であるとされており、本件建物が本件売買契約当時、築16年が経過した木造建物であることを考慮しても、通常有すべき品質を備えていなかったものと評価でき、本件建物の傾斜は瑕疵にあたる。」

監修者のコメント

 建物の床の傾斜について、どの程度以上が瑕疵といえるかということは数値で一律に決定することはできない。質問のケースは、築15年であるが、「瑕疵」という概念は、その目的物が通常有すべき品質、性能、性状を有しないということであるからその「目的物」が新築住宅か築30年の中古住宅かで、通常有すべき品質等が異なってくるのは当然であり、また同じ数値の傾斜でも、日常的に使っている部屋と殆んど使っていない部屋とでは同じ判断をすることはできない。前者では瑕疵だが、後者のものは瑕疵ではないと判断される可能性もある。回答の掲載判例も一応の参考にはなるが、同じ数値でもその傾斜方向が違えば結論が異なる可能性もある。
 いずれにせよ、中古建物の媒介に当たっては、水平器やゴルフボール、パチンコ玉を持参して調査し、傾斜があれば購入検討者に告げることが紛争を防止する道である。媒介業務の心情として、告げたくないとしても、購入者が入居すれば、すぐに分かることであり、結局は紛争に巻き込まれ、得た仲介報酬を上回る労力、時間、費用のロスが生じることも多い。

より詳しく学ぶための関連リンク

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