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賃貸事例 1508-R-0150
敷金の償却特約(敷引特約)と原状回復費用との関係

 敷金の償却特約(敷引特約)に基づく償却分相当額の法的性質はどのようなものか。
 その敷金の償却が、原状回復費用の支払いだという借主の主張によるトラブルを防止する方法はあるか。中途解約時の未経過分の返金トラブルについては、どうか。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者であるが、店舗の貸主から媒介委託を受ける際に、貸主から、契約期間を2年とし、敷金は賃料の6か月分、うち2か月分は明渡し時に償却するという条件にしてもらいたいという申入れを受けた。
 ところが、この敷金の償却特約については、以前に、実際の原状回復の際に借主から、「原状回復は、すでにその敷金の償却によって終わっているのではないのか」と言われ、対応に苦慮したことがあったので、この際どのように対応したらよいか迷っている。

質 問

1.  そもそもその敷金の償却特約に基づく償却分相当額というのは、どのような性質のものか。
2.  本件の貸主からの要望に対し、どのように対応すれば、明渡し時にトラブルにならないか。また、中途解約の場合にも、未経過分の返還トラブルがあると聞くが、この点についてはどのように対応したらよいか。

回 答

 質問1.について ― 当事者間に特段の合意がない限り、その償却分相当額は、当該賃貸借における権利金ないし建物または付属備品等の損耗その他の価値減に対する補償としての性質を有するものと解する裁判例があり、(東京地判平成4年7月23日。後記【参照判例】参照)、その損耗その他の価値減に対する補償の範囲には、いわゆる通常損耗等すなわち借主が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる損耗や経年により自然に生ずる損耗を含む(最判平成23年3月24日)と解されている。したがって、その特約において当事者が特段の定めをしていない場合には、借主の故意・過失によって生じた汚損・破損等の補修費用については、その償却分の中には含まれていないと解される。
 質問2.について ― たとえば、本件の償却特約において、償却分が原状回復時に、借主の故意・過失によるものを除く通常損耗等の補修費用に充当されることを約定しておくとともに、償却の時期についても、明渡し時だけでなく、契約の更新時にも一定の償却をとり、その償却分の補充を更新の条件にし、かつ、原状回復時にその償却額の合計をもって通常損耗等の費用に過不足が生じても清算をしないという条項を定めておくことにより、特に長期間借りる借主との間においては、少なくとも通常損耗等の補修費用の過不足といったトラブルは防止できるのではないかと考えられる。
 なお、中途解約に伴う償却額の未経過分返還のトラブルについては、本件の償却特約の中に、中途解約の場合にも約定額の全額が償却される旨の約定を定めておくことにより、防止できると考えられる(後記【参照判例】(注)参照)。

参照判例

 東京地判平成4年7月23日判時1459号137頁(判旨)
 「先ず、事務所等の賃貸借契約において、借主が貸主に預託することを約した保証金の性質は、これを限時解約金(借主が賃貸期間の定めに違背して早期に明け渡すような場合において貸主に支払われるべき制裁金)とするなどの別段の特約がない限り、いわゆる敷金と同一の性質を有するものと解するのが相当であって、貸主は、賃貸借契約が終了して目的物の返還を受けたときは、これを借主に返還する義務を負うものというべきである。そして、本件におけるように、貸主が預託を受けた保証金のうちの一定額を償却費名下に取得するものとされている場合のいわゆる償却費相当分は、いわゆる権利金ないし建物又は付属備品等の損耗その他の価値減に対する補償としての性質を有するものであり、この場合において、賃貸借契約の存続期間及び保証金の償却期間の定めがあって、その途中において賃貸借契約が終了したときには、貸主は、特段の合意がない限り、約定にかかる償却費を賃貸期間と残存期間とに按分比して、残存期間に相当する償却費を借主に返還すべきものと解するのが相当である。(注)
(注)本事例は、中途解約の場合には、当事者間に特段の定めがない限り、償却額の期間対応分のみを収受できるとするものであるが、全額収受できるとする事例もあり、裁判例が分かれている。その主な裁判例は、次のとおりである。
(期間対応分を収受できるとするもの)
○東京地判昭和45年2月10日判時603号62頁
○東京高判昭和49年8月29日判時759号37頁
(全額を収受できるとするもの)
○東京地判昭和59年4月26日判タ531号173頁
○浦和地判昭和60年11月12日判タ576号70頁
○東京地判平成5年5月17日判時1481号144頁

監修者のコメント

 敷金の償却は、明文上の根拠はなく、その法的性格は、いろいろな説明がなされているが、その償却相当分は、実質的に権利金の性格をもつと解する見解が有力である。
 もっとも、敷引き特約の消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)の該当性を審理した最高裁判例(平成23年3月24日及び同年7月12日)は、いずれも、敷引き特約が通常損耗等の補修費用を賃借人に負担させる趣旨を含むものと理解し、「通常損耗の補修費用に充てるために賃貸人が取得する金員を具体的な一定の額とすることは、通常損耗等の補修の要否やその費用の額をめぐる紛争を防止するといった観点から、あながち不合理なものとはいえない」と判示している。
 ただ、これは当該事案において、敷金の償却の定めの中で、通常損耗分の原状回復費用は、この償却分でまかなうとの約定があったことを前提としての判断であって、敷金の償却(敷引き)の法的性格一般について、原状回復費用の賃借人負担だとしたものではない。
 敷金の償却をめぐるトラブルを防止するためには、回答のとおり、賃貸借契約の締結時に契約書に明確に定め、媒介に当たっては重要事項説明書にも明示し、借主にその将来の負担について明確に認識させておかなければならない。

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