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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1506-R-0148
建物賃貸借契約における加害者不明事故に対する修繕義務の帰属

 賃貸管理物件の郵便受けが何者かに壊されたり、自動車のタイヤで小石が飛ばされ窓ガラスが破損したというような加害者不明の事故の場合、その修繕義務は誰にあるのか。
 貸主が建物の修繕については一切責任を負わないという特約をしていたときは、その修繕義務は借主にあるのか。貸主が、修繕について全く責任を負わないという方法はあるか。

事実関係

 当社は賃貸媒介業者兼管理業者であるが、入居者から、「郵便受けが何者かに壊され、鍵がかからず困っている」という電話が入った。調べてみると、郵便受けの施錠部分を何者かがペンチのようなもので壊したと思われたので、他の同業者にも聞いてみたところ、同業者も同じような被害に遭っていることが判った。
 このような加害者の判らない事故に対し、貸主は、「自分は遠方に住んでおり、そのために管理業者に頼んでいるのだから、管理業者の責任で修繕すべきでないのか」と言ってきた。

質 問

1.  このような加害者が判らない事故に対する修繕義務は、一般に誰にあるのか。
2.  もし本件のような事故が、たとえば自動車による小石のはね飛ばしによる窓ガラスの破損だったとしたら、誰に修繕義務があるのか。
3.  もし本件の場合に、建物賃貸借契約書に、「貸主は建物の修繕について一切責任を負わない」という特約が定められていたときは、借主が修繕することになるのか。
4.  このような修繕に関する問題について、貸主が一切責任を負わないという方法はあるか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 一般には貸主にある。
 質問2.について ― 誰が運転したのか判らなければ、貸主に修繕義務がある。
 質問3.について ― 必ずしも、すべて借主が修繕するということにはならない。
 質問4.について ― 貸主が所有者でありながら完全に責任を負わないという方法は、信頼できる第三者にその賃貸権限を委譲するなどして、貸主としての立場を離れ、その業務を第三者に任せる以外にない。
2.  理 由
について
 貸主には、借主に対しその建物(郵便受けを含む。)を用法に従って使用できるようにする義務があるので、本件のような加害者の判らない事故に対する修繕であっても、その義務は一般に貸主にあると解される(民法第601条、第606条)。
について
 仮にその事故が運転手に過失のある小石のはね飛ばしによるものであったとしても、加害者が不明であるという点については同じであり、貸主には前記(1)同様、借主のために建物を修繕する義務があると解されるからである(民法第601条、第606条)。
について
 本問3.の特約は、建物賃貸借契約に基づいて借主が建物を使用することによって生じた建物の毀損等に対する修繕義務はもとより、本件のような第三者の故意・過失等によって発生した毀損等に対する修繕義務のことも含めて定めているという解釈も可能だからである。
 しかし、本問の特約が、いわゆる大修繕といわれるものも含めた全ての修繕を借主が行うという趣旨のものであった場合には、賃料が特別に安いなど、当事者間に特段の事情がない限り、無効な特約と解されよう(消費者契約法第10条、後記【参照判例】参照)。
について
 単に貸主がそれらの修繕という負担や煩わしさからのがれたいというのであれば、それらの事故を含めた保険を掛けておくとか、代理やサブリース(転貸)という方法も考えられるが、所有者でありながら、一切の煩わしさからのがれ、かつ、その責任も負わないというのであれば、結論(4)で述べたような方法で、貸主の立場を離れる以外に方法はない。なぜならば、代理はもとより、サブリース(転貸)の場合であっても、借主であるサブリース業者との間においてはオーナーが貸主であることには変わりはないし、転借人との間においても完全に手が切れるというものでもないからである(民法第613条)しかし、このようなことができるケースは、一般のオーナーの場合には稀であろう。

参照条文

 民法第601条(賃貸借)
 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
 民法第606条(賃貸物の修繕等)
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
 民法第613条(転貸の効果)
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
 民法、商法(明治32年法律第48号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

参照判例

 大連判昭和2年5月19日裁判例(二)民72頁(要旨)
 家屋の賃貸借に付き特約により賃借人が小修繕をなすべき義務を負担するは敢えて差し支えないが、屋根替又は柱の根継等の如き大修繕の義務までも賃借人をして負担せしむることは、特別の事情なき限りは之を認むることを得ず。
 最判昭和43年1月25日判時513号33頁
 「入居後の大小修繕は賃借人がする」旨の特約条項は、賃貸人は本条1項所定の修繕義務を負わないという趣旨のものにすぎず、賃借人が家屋使用中に生ずる一切の汚損・破損箇所を自己の費用で修繕し、目的家屋を当初と同一の状態に維持すべき義務を負うという趣旨のものではないと解するのが相当である。

監修者のコメント

 本件の質問1と2のように原因者が分からない場合は、回答のとおり、賃貸借契約の内容として賃貸人がその修繕をしなければならない。
 ただ、質問3に関し賃貸借契約書に「賃貸人は…一切責任を負わない」と特約がある場合、その「一切」が、例えば建物の大修繕も行わないという意味であれば、無効の可能性が高いが、「賃貸人に責任のない機器の破損は賃借人に修繕義務がある」旨の特約は、それが契約締結当時に修繕の範囲が明確で、かつ賃借人が明確に認識していたものであれば、消費者契約法第10条の前段には該当するが、後段には該当せず、無効とはいえないとの考え方もあり得る。

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