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1504-R-0146
共有持分に抵当権が設定された賃貸物件の重要事項説明等

 共有者の1人の持分に抵当権が設定されている物件の賃貸借を媒介する場合、登記記録についての借主への重要事項説明をどのように行ったらよいか。
 この持分に設定された抵当権が実行された場合、競落人は、裁判所から賃貸物件の全部について引渡しを受け、新たな貸主としての地位を取得することになるか。

事実関係

 このたび当社が親子2名(母子=子供は成人)がその所有権を共同相続した賃貸アパートの1室を媒介するにあたり、その登記記録を見ると、下記のように特定の共有者(甲=母親)だけが債務者となり、その特定の共有者だけの持分に抵当権の設定登記がなされていた。
 そこで当社は、その事情を母親に確認したところ、借財の目的はアパートのリフォームであるが、子供の将来のことを考え、金融機関とも相談した結果、借財の借入名義を母親名義にし、かつ、抵当権の登記も母親の持分についてだけ行うこととし、その代わりに別の母親名義の定期預金に質権を設定したという。
 なお、本件のアパートの貸主はすべて母親名義にしており、そのことは共有者である子供も同意している。

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質 問

1.  本件のような抵当権の登記が共有者の1人の持分についてだけなされている物件を賃貸する場合、登記記録についての借主への重要事項説明をどのように行ったらよいか。
2.  本件の母親(貸主)の持分権に対する抵当権が実行された場合、競落人は、裁判所から賃貸アパートの全部について引渡しを受け、新たな貸主としての地位を取得することになるか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 借主への重要事項説明は、次のように行うことになろう。
「本物件には、貸主の共有持分に対し抵当権が設定されており、その共有持分権に対する抵当権が実行された場合には、その持分に対応する借主の賃借権は競売によって消滅しますので、競落人の代金の納付の日から6か月を経過した後は建物を明け渡さなければならなくなる可能性があります。」
 質問2.について ― 具体的なケースに応じ、執行裁判所が裁判手続をもって決めることなので、一概にはいえない。
2.  理 由
⑵について
 抵当権の目的となる不動産が共有の場合、抵当権は、その共有持分にも設定することができるので、その持分権だけが競売に付されることがある。したがって、その場合には本件のような競落人に対抗できない借主(抵当権の登記に後れる賃借人)に対しては、民法第395条の6か月間の明渡し猶予の規定の適用があると解される。
 しかし、その持分権だけが競売に付された場合、他の共有者の持分は競売の対象になっていないので、その不動産全体が競落人に引き渡されるかどうかは、個々の事案において、通常競落人の申立てに基づいて裁判所が判断することになるので(民事執行法第83条=引渡命令の制度(注))、一概に結論を出すことはできない。したがって、競売を担当する執行裁判所においては、次のような冊子を窓口に常備し、関係者に配布している(東京地方裁判所のケース)。
 冊子名:競売ファイル・競売手続説明書(再訂版)
 そして、その説明書の中の「物件明細書の詳細説明」として、その「4.物件の占有状況等に関する特記事項」の中に、「売却対象外の共有持分を有する○○が占有している」というケースの欄を設け、その説明として、「売却対象不動産を複数人が共有しており、今回の競売で対象となっている持分以外の共有持分権者が占有している場合の記載です。このような占有者については、引渡命令が発令されない可能性があります。」と記載しており、更にその「引渡命令の詳細説明」の項における「2.引渡命令の対象」欄に、次のように記載している。
「2)「4.物件の占有状況等に関する特記事項」欄に記載してある占有者であっても、以下に該当する場合は引渡命令が発令されない可能性があります。
ア) 買受人が共有持分を取得した場合(複数所有者の各共有持分を取得し、合計すれば完全な所有権を取得した場合は含みません。)で、他の共有者が占有している場合、又は共有者の一部から使用を許されている者が占有している場合」
 以上のことから、本物件(賃貸アパート)の貸主である母親の共有持分に設定された抵当権が実行された場合に、その持分を競落した買受人が、他の共有者である子供の共有持分に対応した占有権を排除して物件の引渡しを受けることができるかどうかは、裁判所の判断を待たざるを得ないからである。
 なお、一般に不動産の共有持分の買受人が引渡命令の申立人になり得るかどうかについては、これを否定する裁判例もあったが(東京地決昭和63年10月7日判時1295号86頁ほか)、これは共有持分の買受人が、当然に他の共有者を無視して排他的に不動産を使用収益する権利を取得するものではないことを理由としている。
 しかし、不動産の共有持分の買受人も民事執行法第83条の「代金を納付した買受人」であり、強制競売における債務者や担保権実行における建物の所有者がその建物全体を占有使用している場合には、その者と買受人との間の売買契約に基づく債権的請求権として、建物全体の引渡しを求めることも可能であると解され、判例もおおむねその方向にある(大阪高決平成6年3月4日高民47巻1号79頁、判時1497号63頁(相手方は、担保権実行事件の債務者たる無権限占有者)ほか=法曹会登行:改訂「不動産執行の理論と実務(下)」518頁)。
(注) 「引渡命令」とは、不動産の買受人に対し、簡易・迅速に不動産の占有を確保してもらうために、代金を納付した買受人の申し立てにより、執行裁判所が、債務者、所有者および一定の要件のある占有者に対し、競売不動産を買受人に引き渡すべきことを命ずる裁判のことをいう。

参照条文

 民法第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
一 競売手続の開始前から使用又は収益する者
二、三 (略)
 民事執行法第83条(引渡命令)
 執行裁判所は、代金を納付した買受人の申し立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる、ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りではない。
~⑤ (略)

監修者のコメント

 共有者の共有持ち分は、単独の一つの財産権であって、ほかの共有者の制約を受けずに自由に処分ができるので、質問のように共有持分に抵当権を設定することはできる。しかし、抵当権の実行をした場合でも、回答のとおり複雑な法律関係になるので、金融機関がこれを担保に融資する例は必ずしも多くはない。
 媒介業者としての注意点は、単に登記記録の内容を説明するだけでなく、法律的な効果、賃借人としてのリスクを十分に説明することである。
 また、競落人はもう一人の共有者と共同の貸主になることは当然であるが引き渡し命令が出されることはないと思われる。
 いずれにせよ、その抵当権設定登記後の賃借人は、競売の買受人に対抗できないことは、一般の場合と同じである。

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