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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
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売買事例 0810-B-0081
売買契約時の価格を減価した価格で買い戻す特約

 買戻し特約による買戻し代金は、当初の売買契約時の価格と同額でなければならないはずなのに、なぜ、減価した価格での買戻しができるのか。

事実関係
 当社はマンション分譲業者であるが、先日、ある業界誌に、某大手不動産会社を主体とする事業会社が分譲するマンションについて、買戻し特約を付けて販売する旨の記事が出ていた。それによると、「入居5年以内の売却の場合は、事業主である「○○○○(株)」が減価したうえで買い取る買戻し特約が付く。」と書かれていた。
 この物件は、都心の公営住宅の建て替えプロジェクトで、某大手不動産会社が事業コンペで当選した定期借地権付の分譲マンションであるが、もし、このような買戻し特約を付けることができるのであれば、今後の参考にしたい。
質問
 「買戻し特約」における買戻代金は、民法第579条の規定(強行規定)により、当初の売買代金と同額でなければならないはずである。にもかかわらず、なぜ、本件の場合に事業主が減価したうえで買戻しができるのか。
回答
 
1. 結論
 本件の事業において、「買戻し特約」と言っているのは、民法第579条に定める買戻し特約ではなく、別途当事者間で「再売買の予約」あるいは「停止条件付売買契約」といった特別の契約を締結することにより、事業主が事実上買い戻すことができるかたちになっていることを言っているものと考えられる。
 
2. 理由
 民法第579条に定める「買戻し特約」の要件としては、確かに同条が解除構成をとっているために、買戻代金は、当初の売買代金と同額で(注)なければならないとされている。
 しかし、本件のような建物が付いた物件の場合には、実際に買戻しをするときには、その建物部分の価値が減価してしまうことが十分考えられるので、そのような場合にも、事業としての損失が生じないよう、減価条件付の「再売買の予約」あるいは「停止条件付売買」といった事実上買戻しができる特別の対策を講じているものと考えられる。したがって、このような対策をとった場合には、買戻し特約の付記登記(不動産登記法第96条)ができないので、たとえば、再売買の予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記(同法第105条第2号)、あるいは公正証書などの確たる方法で契約を締結することになるものと考えられる。
 
(注) 売買代金に利息を付してもよい(大判大正2年10月3日民録19号741頁)。
 
 
参照条文
  民法第579条(買戻しの特約)
不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
   
民法第556条(売買の一方の予約)
(1) 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
(2) (略)
 
監修者のコメント
 買戻しの特約についての民法の規定は、契約に関する民法の規定の中で、珍しく強行規定と解されているが、それは買戻し特約が暴利行為に利用されるおそれがあるからである。すなわち、AがBに対して実質的には融資をするという経済的関係であるのに、Bが自らの財産をAに売買することにして、後日その売買を解除してAからBに戻すことを約し、その戻す際には当初の代金より遥かに高額にするという特約を許すときは、Bの窮状に乗じてAが暴利をむさぼることを認めることになる。そこで、民法は買戻し特約について厳しい要件を設けた。
 しかし、【回答】にあるとおり、当事者間で「再売買の予約」の形態をとった場合は、自由にその内容を取り決めることができる。その場合は、予約上の権利は、将来の所有権移転請求権の保全の仮登記をすることによって担保することができる。

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