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賃貸事例 1502-R-0144
敷金清算合意直後の原状回復工事前の売却と敷金返還請求の可否

 当社が管理をしている賃貸マンションの明渡しにおいて、当事者間で敷金の清算合意をしたが、貸主が原状回復工事をしないまま物件を売りに出したため、借主がその敷金から差し引かれた清算金の返還を請求してきた。
 貸主には、清算金を返還する義務があるか。当社は、管理業者としてどのように対応したらよいか。

事実関係

 先日、当社が管理をしている賃貸マンションの明渡しが行われ、その際借主が預託している敷金20万円に対し、借主が負担する原状回復費用が15万円ということで話が付き、借主に残りの5万円を返還したうえで、当事者間で清算合意書を作成し双方が署名押印をした。
 ところが、その後貸主はその物件をすぐに売り出すことにし、当社にその売却を依頼してきた。そのため当社は、貸主から工事会社への原状回復工事の発注がなされないまま、販売広告を出すことになった。当社としても、原状回復のための敷金清算については当事者間に特約があったので、約定どおりハウスクリーニングのほか、畳の表替えや襖・障子の張り替えとクロスの一部張り替え費用を敷金から差し引いたが、それでも入居者が比較的きれいに部屋を使っていたので、ハウスクリーニングのみで買主を現地案内できると考え、工事の発注をせずに販売広告を出した。
 暫らくして、その近くに引越した借主が販売広告を見て、現地を訪れたうえで当社に対し、貸主の敷金清算合意義務違反だということで、「自分が負担した15万円のうちハウスクリーニングの費用を差し引いた残りをすぐに返還してもらいたい」と言ってきた。

質 問

1.  この借主の主張は、正しいか。
2.  貸主は、敷金清算はすでに完了しているので、請求には応じられないと言っているが、管理業者として、当社はどのように対応したらよいか。

回答

1.  結 論
 質問1.について ― 正しい。
 質問2.について ― 本件の清算合意は、貸主が原状回復工事を行うということを前提に合意されたものと解することができる。したがって、貸主が工事を行わないのであれば、貸主は法律上の原因なくして工事代金相当額の利益を得たことになり、民法第703条の「不当利得」に当たるということを貸主に説明し、借主に当額工事代金相当額を返還するよう説得すべきである。
2.  理 由
⑴ ⑵について
 不当利得とは、「法律上の原因がない」のに利得が生じた場合に、その利得を得た者に対して、その利得によって損失を被った者にその利得を返還する義務を負わせ、両者の間の公平を回復しようという制度である。そして、その不当利得は、本件のような利得者と損失者との間の法律的行為によって生じる場合が少なくないが、その法律的行為自体が不当利得になるということではなく、その行為によって、一方に「法律上の原因のない」利得が生じたということ(事実)が不当利得になるということなのである。
 つまり、不当利得は、一般的・形式的には正当視される利得であっても、実質的・相対的には正当ではなく、公平の理念に基づいて両者の調節を図るという制度であるから、そのような「事実」がある場合には、利得の変動を認める実質的な原因がないということで、それが、「法律上の原因のない」利得として利得の返還を認める理由になっている。したがって、民法第703条の不当利得の成立要件の1つである「法律上の原因がなく」という意味は、公平の理念から見た実質的・相対的な理由がないということであると解することができる。

参照条文

 民法第703条(不当利得の返還義務)
 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

監修者のコメント

 本ケースの貸主が、敷金の清算合意に当たり15万円の内容としてハウスクリーニングのほか、畳の表替えや襖・障子の張り替え、クロスの一部張り替えを借主に示していた場合に、当初からハウスクリーニングしかやらないつもりであったのであれば、刑法上の詐欺利得罪(刑法246条2項)になり、また清算合意じたいが詐欺による意思表示として取消しの対象となる(民法96条1項)。
 また、当初は原状回復工事を行うつもりでいた場合は、上記詐欺の「だます」意思がないので、詐欺を構成しないが、本来行うべき工事の出捐を免れたのであり、その部分は「法律上の原因なく他人の財産・・・によって利益を受け」ているのであって不当利得(民法703条)として借主に返還しなければならない。

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