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売買事例 0806-B-0070
「現状有姿」売買における瑕疵の発見と代金の一部支払留保

「現状有姿」売買をした土地付建物の取引において、契約後、建物に買主の知らなかった瑕疵が発見された場合、買主は、売主がその瑕疵を修理するまで、売買代金の一部の支払を留保することができるか。

事実関係
 当社は媒介業者であるが、このたび、業者が売主で、一般の個人が買主となっている築30年の土地付戸建住宅の売買の媒介をした。媒介にあたっては、建物が古いので、買主からの指し値に応じるかたちで、建物の評価を0(ゼロ)として売買することにしたが、売主の瑕疵担保責任(民法第570条)については、買主がその建物を引き続き使用すると言うので、(業法どおり)引渡しから2年間負うことにし、その代わり、経年劣化部分については「現状有姿」で売買するということとした。
 ところが、契約締結後、買主が建物の雨漏り跡や土台の腐蝕状況などがひどいことに気付き、買主が、「建物の修理をしてくれるまでは、代金の一部(売買代金4,800万円のうち1,000万円)を支払いたくない。」と言ってきた。
質問
(1) このような場合、買主が、代金の一部の支払をストップすることが認められるか。
(2) 媒介業者として、どのような対応をすべきか。
回答
 
1. 結論
(1)  質問1.について — 雨漏り跡の状況や土台の腐蝕など、建物の状況いかんによっては、(具体的な金額はともかく、)買主の代金一部支払留保の主張が認められる可能性があると考えられる(後期【参照条文】および【参照判例】参照)。
(2)  質問2.について —あらためて売主・買主両当事者に会い、契約条件を取り決めた当時の状況を再確認することが重要である。そして、たとえば、今回買主が指摘している雨漏り跡や土台の腐蝕箇所などが、通常の業者であれば容易に発見できるようなものであるにもかかわらず、当時、買主に見せてもいないし、説明もしていないというようなことにでもなれば、媒介業者としての注意義務違反(不法行為)や媒介契約上の債務不履行責任を問われかねないので、再度売主と交渉し、媒介業者がその費用の一部を負担してでも、物件の引渡しまでに、必要な修理・補強をしておいてもらうことが適切であろう。
2. 理由
(1)(2)について

 本件における問題点は、建物の経年劣化部分について「現状有姿」売買としたことから、本件の雨漏り跡や土台の腐蝕等についても、「現状有姿」売買ということで、当然に売主が責任を負わないということになるのかどうかということと、そもそも売主が「現状有姿」売買を主張するためには、買主が本件の雨漏り跡や土台の腐蝕状況を認識したうえで、「現状有姿」売買としたことが必要なのかどうかという点にある。

 もとより、瑕疵担保責任についての「現状有姿」売買というのは、いわゆる「隠れた瑕疵」については売主は免責にはならないが、「表に現れている瑕疵」については、買主が現状を見て、そのままの状態(現状有姿(ありすがた))で買ったのだから、売主はその責任を負わないという意味で行われているものと考えられる。

とすると、売主がその瑕疵について免責を得るためには、買主が表に現れている瑕疵についての現状を認識したうえで契約したものでない限り、「現状有姿」売買としての効力は生じないと言わざるを得ない。

 ところが、本件の取引においては、(本件の【事実関係】を見る限り)買主が雨漏り跡や土台の腐蝕状況について認識したうえで、「現状有姿」による売買としたとは考えにくい。とすれば、本件の取引においては、少なくとも今回の雨漏り跡と土台の腐蝕については、売主が担保責任を負わない合意が成立しているとは考えられないので、そうなると、本件の問題は、買主に過失がない限り、いわゆる「隠れた瑕疵」としての扱いになるか、あるいは媒介業者の「注意義務違反」による不法行為責任等が問われる事案ということになる。

 なお、因みに、売買契約は双務契約であるから、売主・買主双方に「同時履行の抗弁権」が認められている(民法第533条)。そして、その抗弁権は、残金決済時における売買代金の支払と物件の引渡し、所有権の移転登記といった、いわゆる債務の履行段階で行使される。しかし、本件のように、その履行の前段階で、債務の完全な履行がなされない可能性があることが明らかなケースにおいては、過去の判例を見る限り、直接的な修理の請求はともかく、今回の買主が要求しているような代金の一部支払留保や予備的な代金減額請求(相殺)等の行使は認められる可能性はあると考えられる(民法第571条)。(注)
 
参照条文
 
○  民法第533条(同時履行の抗弁)
 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
 
○  同法第570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定(地上権等がある場合における売主の担保責任)を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
 
○  同法第571条(担保責任と同時履行の抗弁権)
 第533条の規定(同時履行の抗弁権の規定)は、第563条(権利の一部が他人に属する場合の売主の担保責任)から第566条(地上権等がある場合における売主の担保責任)まで及び前条(売主の瑕疵担保責任)の場合について準用する。
  (注) 実質的な代金減額請求(相殺)を認めた判例として、買主が代金の一部を留保し、他方で買主が売主に対し瑕疵についての損害賠償請求権を有する場合に、買主がその損害賠償請求権を自働債権として売買代金債権を受働債権とする相殺ができるかという問題について、判例はこれをできるとしている(最判昭和50年2月25日民集29巻2号168頁)。
 
参照判例
 
○  最判昭和41年3月22日民集20巻3号468頁(要旨)
 「双務契約において、当事者の一方が自己の債務の履行をしない意思が明確な場合には、相手方において自己の債務の弁済の提供をしなくても、右当事者の一方は自己の債務の不履行について履行遅滞の責を免れることをえないものと解するのが相当である。」
 
監修者のコメント
 「現状有姿」売買の意味について、物件にたとえ瑕疵があったとしても売主が瑕疵担保責任を負わないということであるという理解が業界内にかなりある。「現状有姿」というのは、もともとは山林の売買において、売主は何ら手を加えず、そのまま引き渡すという意味で使われた用語のようである。少なくとも、瑕疵担保の免責の意味はないので、売主がどうしても瑕疵担保責任を負いたくないのであれば、その旨を明確に約定すれば、売主が宅建業者あるいは事業者でない限り、原則として有効である。
 なお、本ケースの建物は無償ということであるので、もともと「売買」ではなく、「贈与」と認められ、瑕疵担保責任は原則として生じない。したがって、本ケースの特約は、贈与における瑕疵担保の特約と解される。もっとも、法的な結論は【回答】と同じである。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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