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売買事例 0803-B-0058
建物の無償譲渡等における売主の瑕疵担保責任

古工場付の土地売買において、その古工場の解体撤去を買主に義務づける条件で売却したが、売買契約締結後、その古工場からPCBが発見された場合、売主に瑕疵担保責任が発生するか。

事実関係
 当社は媒介業者であるが、当社があるマンション業者に媒介をしたマンション用地が不要になったため、再度その土地を当社の媒介で売却することになった。
その土地は、古工場付の土地で、最初の媒介時に古工場付の現状有姿で売買し、買主がそのまま建物を解体せずにいたために、今度の売買においても、古工場付の現状有姿で売買をした。

 ところが、決済・引渡し後、買主から、「この工場内の変電設備には、ポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)が使われているものがある。このPCBが使われている機器は、解体・撤去するのに特別の費用がかかる。ついては、これは「隠れた瑕疵」であるから、売主において当該変電設備の解体撤去費用を負担してもらいたい。」と言ってきた。

 なお、本件の工場は、土壌汚染対策法上の「特定有害物質」を扱うような工場ではなく、また、建物の解体を前提にしていたために、古工場については、当初の売買契約のときと同じように、特約として、「本件古工場は、買主の責任と負担で解体撤去するものとする。」と契約書に明記し、かつ、建物の売買代金を「0(ゼロ)円」と記入し、媒介をした。
質問
1.  本件の取引は、古工場付の現状有姿による「土地だけ」の売買であるから、建物(古工場)については、瑕疵担保責任を負わない契約であると考えてよいと思うが、どうか。
2.  本件のように、「土地だけ」の売買で、建物の解体撤去を買主の負担とする特約をしている場合には、買主は、建物の瑕疵のいかんにかかわらず、その解体撤去に要する費用の全額を負担する特約をしているものと考えられるが、どうか。
3.  本件の媒介において、媒介業者に何か責任が発生するか。
4.  この問題を解決するのに、何かよい方法はないか。
回答
 
1. 結論
(1)  質問1.について — 本当に「土地だけ」の売買であるかどうかについては、契約書の文言や契約時の経緯等の事実関係がわからないので、判断できない。よって、本問についての結論は出せない。
 なお、(参考までに)「現状有姿」で売買をするということは、「外形」について現状有姿(ありすがた)のままで売買をするということであって、目的物の「隠れた瑕疵」についてまでも責任を負わないという趣旨ではないので、注意が必要である。
(2)  質問2.について — 前記(1)と同様の理由により、結論は出せない。
(3)  質問3.について — 物件調査の方法や変電設備の状況いかんによっては、責任が全く発生しないとは断定できない。
(4)  質問4.について — 売主に瑕疵担保責任があるかどうかという難しい議論をするよりも、「PCB」の存在という誰もが予想していなかった事実が発生したのだから、その予想していなかった費用を誰がどのような割合で分担するのが最も丸く収まるかということを考えた方がよいのではないかと考える。
 そのためには、質問者(媒介業者)が考えているような、買主に全ての費用負担をさせるという考え方をとった場合に、その「隠れた瑕疵」のある工場の解体義務を買主に課した売主には何の責任もないのかという信義則上の観点から、よく話し合うことが必要なのではないかと考える。
2. 理由
 本件の取引が本当に「土地だけ」の売買であれば、売主は、建物(古工場)については、瑕疵担保責任を負わなくてもよいのであるが(民法第570条)、本当に「土地だけ」についての売買であるかどうかは、建物の「解体撤去についての特約」や建物の「売買代金が0(ゼロ)円」であるということ以外に、それ以外の具体的な売買契約書の文言がどうなっているか、契約当時の当事者の意思がどうであったのか(本当は、買主はその工場を使用する意思があったのではないか)、なぜ買主は更地渡しにしなかったのか、実質的な建物の代金はいくらなのか、等により総合的に判断されるので、ここではわからない。
 仮に、本件の取引において、建物(古工場)が無償で譲渡(贈与)されたと判断されれば、贈与者(売主)がその「隠れた瑕疵」(PCB)の存在を知っていたかどうかによって、瑕疵担保責任の有無が判断されることになるし(注)(民法第551条第1項)、また、その判断の過程において、買主が負担する建物(古工場)の解体撤去の費用が本当に土地代金から差し引かれていたのかどうか等についても、本件の譲渡が実質的な有償譲渡(売買)か否(贈与)かを判定するために、その解明が必要となるからである。
贈与者が「瑕疵」があることを知りながら、そのことを受贈者に告げなかった場合の贈与者の担保責任の内容については、判例も参考にすべきものはないが、学説は、一般に受贈者が瑕疵のないものと誤信したためにこうむった損害に限り、賠償請求ができると解している(我妻・有泉コンメンタール民法・1003頁)。
 
参照条文
 
○  民法第570条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
○  民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
(1) 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
  (2) (略)
○  民法第551条(贈与者の担保責任)
(1) 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
  (2) (略)
 
監修者のコメント
 本事例は、仮に裁判になっても容易に結論を出せない難しい事例であるが、【回答】のように法を適用するための前提事実を確定する必要がある。
 なお、本事例のようなケースでは、売主の瑕疵担保責任の問題のほかに、買主からの錯誤無効(民法第95条)の主張、商人間の売買であるから商法第526条の買主の検査・通知義務、あるいは土地の使用来歴等に関する売主の信義則上の告知説明義務なども争点になり得ると思われる。

より詳しく学ぶための関連リンク

ザ・ライブラリー 松田先生

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

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