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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 0801-B-0053
両手媒介と「双方代理」の禁止規定との関係

両手媒介は、「双方代理」の禁止規定に抵触するか。

事実関係
 当社は媒介を主業務とする宅建業者であるが、業界の関係者の中には、いわゆる両手媒介は民法の「双方代理」の禁止規定に抵触するとか、賃貸の管理業務などについても、オーナーとの管理委託契約の受託者としての立場と入居者との関係について、同様の関係が生じるという人がいる。
質問
これらの意見は、正しいのか。
回答
 
1. 結論
正しいとはいえない。
2. 理由
(1)  媒介業務におけるいわゆる両手媒介は、たとえば売主からの依頼により、物件の元付業者となった媒介業者が、みずから買主を見つけ、買主からも媒介の依頼を受けた場合に成り立ち得る。
 しかし、この場合の媒介業者は、売主の代理人として行動したり、買主の代理人として行動するわけではなく、また、契約の一方の当事者になるわけでもないので、何ら民法第108条の双方代理や自己契約の禁止規定に抵触するものではない。単に、媒介の受託者として、売主・買主双方に対し、それぞれ公正中立な媒介業務を行うべく「善管注意義務」と「報告義務」などの受託者としての義務を負うに過ぎない(民法第656条、第644条、第645条等)。

 つまり、当該業界関係者の意見は、代理の場合は、委任による代理が多いことから、代理と委任の規定を準用する準委任(=媒介業務(民法第656条))の関係について、混乱が生じているものではないかと考えられる。
(2)  なお、この民法第108条の規定は、後記の判例等の蓄積により、自己契約や双方代理であっても、本人があらかじめ許諾している場合には、有権代理行為として有効であるとする判例理論が確立され、そのために平成16年12月1日の民法大改正の際に、その旨の規定がこの第108条に明文化されたのである。
 したがって、先の両手媒介についての混乱は、賃貸管理の場合にも同様に、管理業務は本来的には法律行為を行う委任に基づくものではなく、むしろ、管理代行者としての事実行為を行う準委任によるものとしての性質を有するものであるにもかかわらず、代理と委任(準委任)の関係と同様の混乱があり、また、賃貸の媒介が終了したあとの管理の局面で、媒介業者や管理業者がいつ入居者との間に管理についての委任(準委任)関係が生じたのかという点についても、混乱があるのではないかと考えられる。
 
参照条文
 
○  民法第108条(自己契約及び双方代理)
 同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
○  民法第656条(準委任)
 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
 
参照判例
 
○  大判大正4年4月7日民録21輯451頁、大判大正8年12月26日民録25輯2429頁、等(要旨)
 本条は、本人の利益を保護するために代理権を制限した規定なので、本人があらかじめ許諾していた場合には、代理人が自ら相手方となり又は相手方の代理人となってした行為は有権代理行為として有効である。
 
監修者のコメント
 同一業者が売主・買主双方の代理人となることは、【回答】のとおり、民法の双方代理の禁止(第108条)に抵触し、原則的にはできず、行われた代理行為は無権代理として扱われるというのが、最高裁判例である。しかし、双方代理といわゆる「両手媒介」すなわち一人の宅建業者が売主・買主双方と媒介契約を締結することとは全く異なる。代理人は、本人に代わって意思表示を行い、場合によっては意思決定を行うので、一人が双方の代理人になると、いずれかの当事者の利益を害する結果をもたらす可能性があるので、双方代理が原則的に禁止されているのである。これに対して、媒介は本人に代わって意思表示を行うのではなく、契約の成立に向けて尽力する行為であって、いわば双方の取次ぎである。意思表示あるいは意思決定を行うのは、あくまでも本人であるから、本人の利益を害することはない。不動産仲介問題に関する過去の議論において、それ相応の博識を有すると思われる識者が、不動産業者が双方の媒介をすることは、どちらかの利益を害するから禁止すべきだなどという意見を出したことがあるが、全くの見当はずれの見解である。もし、業者が依頼者の利益を害するケースがあるとすれば、それは双方の媒介だから生じたものでなく、別次元の理由によるものである。契約締結後、不幸にも紛争になった場合、双方それぞれに媒介業者が付いているものは、業者同士の主張が対立するのに対し、一業者が双方を媒介した場合のほうが、間に入って解決に努力し、解決が早いというのが実態である。

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