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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1412-R-0141
滞納賃料の有料督促等の業務と非弁行為

 賃貸管理業者が、滞納賃料の督促業務を反覆継続して、一般の管理料とは別に有料で行った場合、その行為は弁護士法第72条の非弁行為に該当するか。
 更新時の賃料改定業務を有料で行った場合は、どうか。

事実関係

 当社は賃貸媒介兼管理業者であるが、当社が管理している賃貸物件については、賃料の集金代行業務の一環として、賃料滞納者に対する督促業務を別料金にし、それを一般の管理料と分けて貸主に請求しており、また、更新時に生じる賃料改定等の交渉についても有料で行っており、その都度明細書を付けて貸主に請求している。

質 問

1.  このような督促業務を有料で反覆継続して行う行為は、弁護士法第72条の非弁行為の禁止規定に抵触するか。内容証明郵便をもって督促したり、その内容が貸主の名をもって行う契約解除通知であったり、当社が貸主の代理人として行う契約解除通知であった場合は、どうか。
2.  管理業務の中には、更新時に賃料の改定業務を行うことがあるが、借主と交渉した結果、賃料の改定合意が成立し、新たな賃料での更新契約書を作成する場合、これを有料で行ったときは、弁護士法第72条の非弁行為の禁止規定に抵触するか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 貸主の名をもって契約解除通知を出したり、貸主の代理人として契約解除通知を出し、その結果として借主が自主的に建物を明け渡すというのであればともかく、借主との間で合意解約証書を作成するなどして、借主を法的に建物から立退かせる前提となる行為まで行った場合には、貴社が実際に明渡し業務まで行わなくても、同条の禁止規定に抵触することになると解される(後記【参照判例①②】参照)。
 質問2.について ― 当事者間に賃料改定について紛争があり、これを管理業者が間に入って折り合いをつけ、その結果を更新契約書にまとめるというような内容のものであれば、抵触する可能性があるが、紛争というほどの対立がなく、当事者間での話し合いの手助けをする程度のものであれば、それは単なる更新手続事務と解されるので、同条の規定に抵触することにはならないと解される(後記【参照条文】および【参照判例①】参照)。
2.  理 由
について
 管理業者が、貸主の名をもって契約解除通知を出したり、貸主の代理人として契約解除通知を出すだけであれば、それらの行為がいずれも代理人としての行為と認められるものであっても、弁護士法の禁止規定に抵触することにはならない。
 しかし、管理業者がその契約解除後の処置として、借主との間で合意解約証書などを作成し、いつでも法的手続をとれば借主を賃貸借物件から立退かせることができるという行為まで行ったとすれば、それらの行為は同法第72条で禁止している非弁行為すなわち「法律事件」に関して「法律事務」を行ったことになり、その時点で同条の規定に抵触することになると解されるからである(後記【参照判例①】参照)。
について
 後記【参照条文】および【参照判例①】参照。

参照条文

 弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

参照判例①

 東京高判昭和39年9月29日高判集17巻6号597頁ほか(要旨)
 「法律事件とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいう」
 「法律事務とは、(それらの法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件について)法律上の効果を発生、変更する事項の処理をいう」

参照判例②

 広島高判平成4年3月6日判時1420号80頁(要旨)
 「賃貸人の代理人として、その賃借人らとの間で建物の賃貸借契約を合意解除し、当該賃借人らに建物から退去して明渡してもらうという事務をすることは「法律事件」に関する業務に該当する」

監修者のコメント

 非弁行為の禁止を規定する弁護士法第72条は、訴訟事件等のほか「その他一般の法律事件」もその対象としている。そして、「その他一般の法律事件」の意味については、かねてから「事件性」すなわち当事者間で争いや疑義が具体化、顕在化していることが必要か否かについて見解が一致していなかったが、平成15年12月に法務省が、それに該当するといえるためには、争いや疑義が具体化又は顕在化しているとの考えを示した。しかし、実際の行為を判断することは大変難しい。ビルの所有会社から、74名のテナントとの賃貸借契約の合意解除と明渡し等の業務の委託を受けた者の弁護士法72条違反事件に関する最高裁判決(平成22年7月20日)がある。被告人らは、「本件では賃借人との間で立退きの話がまだ出ていない段階でその交渉の委託を受けたのであり、法律上の権利義務に争いや疑義が存するなどの事情はないから、弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものといえない」と主張したのに対し、最高裁は、これらの業務は、「立ち退く意向を有していなかった賃借人らに対し、専ら賃貸人の都合で、賃貸借の合意解除と明渡しの実現を図るべく交渉するというものであって、立退き合意の成否、立退きの時期、立退料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件にかかるものであり、同法第72条の「その他一般の法律事件」に関するものであった。」旨を説示している。
 要するに、質問のケースも、現在まったく争いがないというものであればともかく、少しでも争いあるいは意見の対立等がみられた場合は、それを貸主の意向に沿って行うことは、それが有償である限り、弁護士法に抵触するので注意されたい。

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