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賃貸事例 1408-B-0183
いわゆる持回り契約の問題点と代理契約における諸問題

 売買契約におけるいわゆる持回り契約で、買主が先に日付を入れて署名押印した売買契約書を売主に送付し、売主があとから署名押印する契約方式であっても、売買契約の成立に問題はないか。
 買主の代理人が、契約締結の場に買主自らが署名押印した売買契約書を持参し、売主がこれに日付を入れて署名押印した場合、その契約は、代理人の代理行為によって売買契約が成立したことになるか。買主の代理人が、売買契約書に買主の住所・氏名を代筆し、買主の実印を押印し、これに売主が日付を入れて署名押印した場合、その契約は、代理人の代理行為によって売買契約が成立したことになるか。

事実関係

 当社は媒介業者であるが、今回当社が媒介する売買契約は、売主が遠隔地にいるために、当初当事者の合意により持回りで契約を行うことになっていたが、その後買主が持回り契約は不安だということで、急遽買主の父親が代理人として契約の場に出向くことになった。
 この持回り契約というのは、買主があらかじめ2通の売買契約書に署名押印したものを売主の住所に郵送し、売主がこれに署名押印したうえで日付を記入し、その1通を買主に返送し、売主・買主が各自その1通を保有するというものである。

質問

1.  そもそものこの持回り契約の方法に、何か法的に問題があるか。
2.  当初の持回り契約で、買主があらかじめ日付を入れた売買契約書を売主に送付し、売主がこれに署名押印した場合は、契約の成立に何か問題が生じるか。
3.  買主の代理人が売主と会って売買契約を締結する場合に、買主の代理人が持参した売買契約書にすでに買主本人自らの署名押印がしてあったときは、その代理人の行為は、代理人として売買契約を締結したことになるか。その売買契約書に日付が入っていないために、買主の代理人が契約の当日に自ら締結日の日付を記入したときは、どうか。
4.  買主の代理人が、契約締結の場で買主本人の住所・氏名を代筆し、そのうえで本人の実印を押印した場合は、本人の代理行為をしたことになるか。印鑑が本人の認印であった場合は、どうか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 契約の当事者が持回り契約の意味を理解し、合意のうえで行うのであれば、民事的には問題はないが、手付金の授受(振込みなど)が売買契約の締結に合わせて行われない場合には、宅建業法上問題が生じる可能性がある。
 質問2.について ― 売主がその売買契約書に日付を記入しない場合(買主が記入したままの日付の場合)には、売買契約の成立日が契約書上明確でないという問題は生じるが、契約の成立そのものについては、問題はない。この場合の契約の成立日は、特段の事情がない限り、売買契約書に売主が署名押印をし、その1通が買主宛てに投函された日と解されよう(民法第526条第1項)。
 質問3.について ― 代理人(買主の父親)の行為は、代理人としての行為というより、本人の「使者(注)」としての行為ということになろう。これは、契約の締結時に、代理人が売買契約書に当日の日付を記入したとしても同様に解されよう。
(注) 「使者」とは、表意者(本件の場合は、買主)の補助者で、書類を届けたり、言われたとおりのことを伝えるだけのものであって、いわば郵便配達員と同じように解されている。したがって、本件のケースで、代理人(父親)が売買契約書に日付を記入したとしても、それは「法律行為」を行ったのではなく、買主の指示または売主との合意に基づく「事実行為」(日付の記入)を行ったに過ぎないと解されよう。
 質問4.について ― いずれの場合も、代理人としての行為(代理行為)をしたことになる(署名代理:最判昭和39年9月15日民集18巻7号1435頁ほか)。
   
2.  理 由
  ⑴について
     手付金の授受は、売買契約の締結時に行うのが一般的である。にもかかわらず、持回り契約の場合には往々にして契約の締結前に手付金を授受する(振り込む)ことが多い。それは、1つは契約の締結時に当事者が顔を合わせないからなのであるが、もう1つの理由は、契約の締結後に手付金の授受をすると、宅建業法第47条第3号の手付金についての信用供与の規定に抵触するのではないかという懸念が生じるからであり、他方宅建業者が売主で宅建業者以外の者が買主になる売買契約の場合には、宅建業法第47条第3号の問題とは別に、契約の締結前に手付金を授受する(振り込ませる)ことが、当事者間にまだ売買契約が成立していないだけに、宅建業法第39条第2項・第3項の買主の契約解除権留保の規定に抵触するのではないかという問題もあるからである。
  ⑵について
     民法は、本件のような隔地者間契約の場合の契約の成立時期について規定を設けており、契約の申込者(本件の場合は、買主)に対する応諾者(売主)の応諾の返事が発せられた時に契約が成立するとしている(民法第526条第1項)。したがって、本件のような持回り契約の場合には、通常は売主が署名押印した売買契約書の1通が応諾の返書としてポストに投函された時、または貴社(媒介業者)が売主の住所地で売主からその応諾の返書を受け取った時に売買契約が成立したと解することができよう。
  ⑶について
     売買契約における代理人は、通常売買契約の締結という「法律行為」を代理するための代理人であるから、本件の売買の代理人(買主の父親)のように、買主本人が自ら署名押印した売買契約書を売主のところに持参し、それに契約締結日の日付を記入したからといっても、それは売買契約の締結という「法律行為」を行ったことにはならない。なぜならば、「法律行為」というのは、「意思表示」(注)を要素とした権利義務関係に変動を生じさせる行為であり、本件の場合は、代理人が本人に代って意思表示をしているわけではないからである。
 (注) 「意思表示」とは、法律行為の発生すなわち権利義務関係の変動を目的とする意思を表示することをいう。
  ⑷について
     結論でも述べたように、本人の住所・氏名を代筆するいわゆる「署名代理」については、本人の「顕名」がなくても、代筆者に代理権がある以上、これを有効な代理行為とするのが最高裁の判例であるが、併せて、「特定の取引行為に関連して印鑑が交付された場合には、特段の事情がない限り、代理権の授与があったと認めるべきである」とする最高裁の判例もある(最判昭和44年10月17日判時573号56頁、判夕242号161頁)。

参照条文

 民法第99条(代理行為の要件及び効果)
 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
   (略)
 民法第526条(隔地者間契約の契約の成立時期)
 隔地者間の契約は、承諾の通知を発した時に成立する。
   (略)
 宅地建物取引業法第39条(手付の額の制限等)
 (略)
 宅地建物取引業者が、みずから売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。
 (略)
 同法第47条(業務に関する禁止事項)
   宅地建物取引業者は、その業務に関して、宅地建物取引業者の相手方等に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
、二 (略)
   手付けについて貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為

監修者のコメント

 民法の原則では、契約は申込と承諾の意思表示の合致によって成立するとされている。すなわち、AがBに「甲不動産を売ろう」と言い、これに対し、Bが「甲不動産を買おう」と言って、AB間で意思が一致すれば、契約が成立する。しかし、現実の不動産の売買では、当事者の通常の意思は、コンビニで物を買うのとは違い、契約書を作成して初めて契約が成立するとみるのが殆んどであり、それが社会一般の通念である。
 質問の持回り契約というのも、結局は契約書に双方が署名捺印して契約が成立したと考えることを前提に行われているとみるべきである。そうすると、特段の事情がない限り、双方の署名捺印により、契約書が完成したとき、言い換えれば、あとの署名捺印がなされた時に契約が成立したとみるのが素直な解釈と思われる。
 なお、すでに本人によって署名捺印された契約書を単に持参した者は、代理人ではなく、本人の手足にすぎない。代理人は、回答にあるとおり、売買等の法律行為(意思表示)を本人に代わって行う代理権を本人から授与された者のことである。

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