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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 1006-B-0117
建築条件付土地売買契約における中途解除の場合のペナルティ等

 建築条件付土地売買契約締結直後のキャンセルに対し、ペナルティを請求できるか。また、建築条件付土地売買契約において、建築条件が折り合わない買主との間で、新たな請負先を紹介できるように、あらかじめ定めることはできるか。

事実関係
 当社は、先日建築条件付土地売買契約の媒介をしたが、買主がその3日後にキャンセルを申し出てきた。また、別の営業マンも、土地売買契約締結後2か月目に入って、建築条件が折り合わないということでキャンセルにあった。
質問
  1.   このような場合、前者のケースで、売主に何らの落ち度がないときは、土地の買主に対し、何らかのペナルティを求めてもよいように思うが、どうか。
2.  後者のケースで、買主が指定された建築業者との間で条件が折り合わなくても、他の建築業者との間で条件が折り合うこともあるわけだから、もし、約定の期間内に建築工事の請負契約が成立しない場合は、改めて他の建築業者を紹介するなどの方法により契約を継続することができるよう定めることができるか。
回答
  1.結論
(1)  質問1.について — 状況いかんによっては、実損害についての賠償請求はできると考えられる。
(2)  質問2.について — 請負先の変更を強制するものでなく、土地の購入者が納得するものであれば可能である。ただし、その場合には、その請負先変更のときからも、条件交渉などのための十分な期間設定が必要になろう。
   
2.理由
(1)について
 建築条件付土地売買は、通常、当事者間で約定した期間内に、建築工事についての請負契約が指定された建築業者と買主との間で成立しなかったときは、条件不成就により契約が解除となり、それまでに売主が買主から受領した土地代金等を全額買主に返還しなければならないことになっている(不動産の表示に関する公正競争規約第6条1号ウ)。
 ところが、本件のように買主が土地売買契約締結後3日目にキャンセルの申し出をしたということになると、買主は建築工事についての請負条件などを建築業者との間で打合せる時間もなかったものと考えられるので、本当に買主が建物を建てる意思があったのかどうかということが問題になってくる。そして、もし最初から買主に建物を建てるという明確な意思がなかったとすれば、買主にはそのような曖昧な売買契約を締結したという過失があることになる。もちろん、指定された建築業者が最初から請負能力のない業者であったり、何か他の売主側の事情で請負契約についての条件交渉ができないというような事情でもあれば格別、もしそのような事情もないのにキャンセルをしたというのであれば、買主は契約上やるべきことをやっていないのであるから、いかに契約が停止条件付のものであっても、契約がすでに成立している以上、買主は契約違反をしたということになるので、買主は売主に対し、その損害を賠償する義務があるというべきである(民法128条、415条)。
(2)について
 土地の売主としては、建築工事の請負先が自社以外の場合には、必ずしも買主がその指定された建築業者との間で請負契約を締結しなくても、同じような提携関係にある他の建築業者との間で請負契約が締結されればよいわけだから、最初から指定業者を何社か用意しておき、買主にその中から選んでもらうとか、あるいは一定の段階までであれば、途中で請負先を変更したりすることもできるようにしておけばよいだけのことだからである。
 
参照条文
  ○ 民法第128条(条件成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
 
○ 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 
監修者のコメント
 建築条件付土地売買契約は、その土地上の建物の建築請負契約の成立を停止条件とする土地売買契約であることが多い(理論的には、一定の時期までに請負契約が成立しなかったことを解除条件とすることも可能である)。いずれにせよ、一旦契約が成立している以上、当事者は相手方に債務不履行もないのに一方的にキャンセル(解除)をすることはできない。この点、まだ契約の効力が生じていないのだから、自由に解除できると考えるのは、契約の「成立」と「効力発生」を混同するものである。
 したがって、売買契約に定められた解除原因が生じたとか、客観的にみて買主に正当な理由が生じたということでない限り、買主の債務不履行になると考えられる。もっともその場合、損害賠償の予定(違約金)の約定がなければ、実損害の証明はなかなか難しいであろう。
 
 質問2については、建築条件が折り合わないことについて、買主の要求の正当性が問題となり、買主の要求が不当なために折り合わないのかどうかで結論が分かれるのではないかと考える。すなわち、買主の建築請負契約に関する条件ないし要求が決して不当とはいえない場合、新たな請負先を紹介するという約定自体は問題ないが、その紹介先との請負交渉を必ずしなければならないという拘束をするのであれば、問題である。不動産広告の業界の自主規制として制定されている「不動産の表示に関する公正競争規約」においては、建築条件が成就しない場合には、土地売買契約が解除され、土地の買主から受領した金銭は遅滞なく返還すべきものとされているからである(同規約第6条)。

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