HOME > 不動産相談 > 売買 > 借地人および借家人の囲繞地通行権

不動産相談

== 更に詳しい相談を希望される方は、当センター認定の全国の資格保有者へ ==

 

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

売買事例 1002-B-0111
借地人および借家人の囲繞地通行権

 ある投資家が、袋地とその袋地上の建物を安く購入し、賃貸事業を営もうと考えているが、囲繞地所有者が借家人の囲繞地通行に反対している。借地人や借家人には囲繞地通行権はあるのか。

事実関係
 私は、不動産コンサルティング技能登録者であるが、ある投資家から、「袋地とその袋地上の建物を安く買って、建物を他人に貸そうと思っているのだが、囲繞地の所有者が、建物を他人に貸すのなら囲繞地を通行させないと言っているので、困っている」という相談を受けた。

  なお、本件の囲繞地についての通行料は、年額いくらということで、袋地の所有者と囲繞地の所有者との間で和解調書が作成されている。
質問
  1.  この囲繞地所有者の言い分は正しいか。
2.  囲繞地通行については、借地の場合であっても、その建物所有者(借地人)が通行できると思うので、借家人についても同様に通行できると思うが、どうか。
回答
  1.結論
(1)  
質問1.について — 和解調書に条件が付けられているなどの特別な事情がない限り、囲繞地所有者の言い分は正しいとはいえない。
(2)  
質問2.について — 今までの判例の動向をみる限り、そのとおりと考えて差し支えない。ただし、囲繞地通行権はもともとそれらの人達の通行が無制限に認められるものではないので、借家人の通行が認められるとしても、その通行の方法や範囲、通行料等については、別途、囲繞地所有者との間で取り決める必要があると考えられる(民法第211条、第212条)。
 
  2.理由
(1)(2)について
 借地権者も囲繞地通行権を有することについては、その借地権が「地上権」である場合には、相隣関係の規定が地上権にも準用されることから問題ないとしても(民法第267条)、土地の「賃借権」の場合には、民法に明文がないことから、問題にされてきたが、昭和36年に最高裁が対抗力のある賃借権のみに囲繞地通行権を認める判断を示したことから、以後、この問題について決着が付けられた(後記【参照判例】参照)。
 一方、借家人については、袋地の所有者あるいはその借地人が有する囲繞地通行権を代位して行使することによって、通行を確保することが認められ(民法第423条)、これを認めた裁判例としては、昭和53年の東京高裁の事例などがあるが(後記【参照判例】参照)、建物の賃借人自身にも独自の囲繞地通行権があることを認めた裁判例には、昭和42年の米子簡裁の裁判例がある(後記【参照判例】参照)。
 
参照条文
 
民法第210条(公道に至るための他の土地の通行権)
(1)  他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
(2) (略)
 

民法第211条(同条)
(1)  前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
(2) (略)
 


民法第212条(同条)
 第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない。ただし、通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる。
 
○ 民法第213条(同条)
(1)  分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
(2)  前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
 
○ 民法第267条(相隣関係の規定の準用)
 前章第1節第2款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する。ただし、第229条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する。
 
○ 民法第423条(債権者代位権)
(1)  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
(2) (略)
 
参照判例
  ○ 最判昭和36年3月24日民集15巻3号542頁
 「原判決が右の如く賃借土地の引渡を受けて現に賃借権を有するX1のために民法213条を準用してその隣接する乙板垣の存する土地につき通行権を認めたことは是認できるけれども、単なる占有者に対して右法条を準用することは許されないと解するを相当とする。」
   
○ 東京高判昭和53年11月29日判タ380号88頁
 「後記のとおり甲地が袋地である以上、同人は借地人として、民法第210条もしくは第213条の規定に基づき固有の囲繞地通行権を有しているものというべく、したがって、同人からその所有の建物を賃借しているXらは、同建物の使用、収益に必要な限度において甲地の借地人であるAに代位して囲繞地通行権及びその他の妨害排除請求権を行使することができるものと解するのが相当である。」
 
○ 米子簡裁昭和42年12月25日判時523号72頁
 「囲繞地通行権は、袋地自体に対する権利行使の前提として必要欠くべからざるものであり、(中略)したがって、物件的効力の与えられた土地利用権にも右民法の規定を準用するのが相当である。よって、権原に基づいて袋地の利用権を有する者は、その権原が賃借地上建物の登記もしくは賃借建物の引渡(中略)によって対抗要件を具備し、これを対世的に主張し得る以上は、民法210条を準用して囲繞地通行権を主張することができるといわなければならないから、Xらはいずれも、その固有の権利として、(中略)囲繞地の通行権を主張し得るものというべきである。」
 
監修者のコメント
 
囲繞地通行権その他の相隣関係に関する民法の規定は、土地の相互の利用の調整を図ろうとするものであるから、当該土地を利用する者である以上、それらの規定の適用ないし類推適用があると解することに、異論は見受けられない。
 回答が示す昭和36年3月24日最高裁判決は、同一の土地が甲、乙、丙地に分筆されたのち、公路に通じない甲地をAがBから賃借し、耕作していたところ、Cが乙地と丙地をBから譲り受けた結果、甲地が袋地になったという場合について、土地賃借人Aが民法213条により乙地を通行する権利を有し、これを妨害する板垣の撤去を求めることができる、としたもので、本ケースとは若干その状況が異なるが、結論は回答のとおりと解される。
 ただ、法的にはそのとおりだとしても、現実に囲繞地の所有者が反対している以上紛争になる可能性が極めて高いので、それを先に解決することが前提と考えて仕事を進めることが適切と思われる。

当センターでは、不動産取引に関するご相談を
電話にて無料で受け付けています。

専用電話:03-5843-20819:30〜16:00(土日祝、年末年始 除く)

相談内容:不動産取引に関する相談(消費者、不動産業者等のご相談に応じます)

更に詳しい相談を希望される方は、
当センター認定の全国の資格保有者へ

 

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ページトップへ