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賃貸事例 1312-R-0127
ペット禁止マンションの契約違反と違約金、原状回復との関係

 ペット禁止の賃貸マンション(家賃:月額10万円)で、借主が無断で猫を飼ったため、貸主が、原状回復の際に、借主に対し契約違反を理由に、違約金を含めた90万円の原状回復工事費用の支払いを請求してきた。借主はこれに応じなければならないか。
 なお、この契約において、敷金は家賃の2か月分が支払われており、入居時には、畳の表替えと襖の張り替えはなされていたが、その他の場所はハウスクリーニングのみで、違約金の定めはもとより、原状回復に関する特約は一切されていない。

事実関係

 当社は、従業員の社宅用に賃貸マンションを借り上げているが、このたびペット飼育禁止特約のある賃貸マンションで、入居者が猫を飼ったため、建物の明渡しに際し、貸主が、入居者の契約違反を理由に、違約金を含めた原状回復工事費用として、畳、襖の交換のほか、床(フローリング)、壁クロスの全面張り替えとハウスクリーニング費用の支払いを請求してきた。
 なお、本件の建物は、入居時には畳の表替えと襖の張り替えはしてあったが、その他の箇所はハウスクリーニングがしてあっただけであり、当社はそれに対し敷金として家賃の2か月分(20万円)を差し入れているが、今回貸主が請求してきた原状回復のための工事費用が90万円のため、70万円もの追加費用が発生する。

質問

  •  賃貸借契約書には、ペットの飼育禁止の特約はあるが、借主がこれに違反した場合の違約金の定めはない。このような場合にも、貸主は借主に対し違約金の支払いを請求することができるのか。
  •  もし違約金の支払いの請求ができないとした場合、貸主は借主に対しどのようなペナルティの支払いを請求することができるのか。それは具体的にはどのような額になるのか。
     なお、本件の契約においては、ペット飼育に関する違約金の定めはもとより、いわゆる原状回復特約と称する特約は一切定めていないし、実際の建物の使い方にしても、多少の猫のにおいは残っているとしても、爪によるひっかきキズやフン・尿のシミやにおいはほとんどないといってよい程である。にもかかわらず、貸主は自分がアレルギー体質だからと言って、床や壁の全面張り替え費用まで請求してきている。
  •  当社は、貸主が訴訟で原状回復費用の90万円を請求してきた場合、応訴も辞さないつもりでいるが、この契約においては、物件が地方にあるため、その物件の所在地を管轄する地方の裁判所を合意管轄裁判所としている。このような場合、今回のような貸主の不当な請求に対しても、当社はその地方の裁判所で訴訟をしなければならないのか。なお、貸主はその物件の所在地を住所地としている。

回答

1. 結 論
 質問1.について ― 違約金の請求はできない。
 質問2.について ― 貸主は借主に対し違約金の請求はできないので、貸主は、ペナルティ(制裁金)ではなく、その借主の違約によって生じた損害を立証したうえで、損害賠償請求というかたちで請求をすることになる。したがって、貸主としては、それを今回の原状回復工事の中で、その猫の飼育との因果関係が認められる範囲の損害(一般的には、たとえば猫のにおいや毛の落下、建物への付着、猫の爪による建物へのキズ、フン・尿のにおいやシミなどの除去、修復、脱臭、消毒等に要する費用が損害ということになろう。)について、原状回復費用と合わせて賠償請求をするというかたちをとったのであろうが、その賠償請求と合わせた原状回復工事の総額が90万円というのは、家賃10万円の建物に比し、やや高額に過ぎるのではないかと考えられる。具体的には、床(フローリング)と壁クロスの全面張り替え工事について、貸主がどこまでその因果関係を立証することができるか、そして、その場合の借主の入居年数や部材の経過年数をどのように評価するかなどが争点となろう。
 なお、その場合の貸主自身のアレルギー体質云々については、建物が、基本的には第三者に賃貸されるものであることから、当事者に特段の事情がない限り、特に考慮する必要はないと考えられる。
 質問3.について ― 原則的には、その地方の裁判所で訴訟をしなければならない(民事訴訟法第11条)。
2. 理 由
⑴について
 違約金は、当事者に違約があった場合に、その相手方に支払うべきものとして、当事者が特別に定めた金銭のことである。したがって、本件の場合は当事者間で違約金の定めをしていないのであるから、借主に違約があったとしても、貸主は借主に対し違約金の支払いを請求することはできない。
 なお、本件の場合に、ペット飼育についての違約金の定めがあれば、その違約金の性質について当事者間で特別の定めをしていない限り、その違約金の定めが損害賠償額の予定と推定されるので(民法第420条第3項)、あとは、そのペット飼育の違約の部分以外の借主の故意・過失等による原状回復の問題だけを検討すればよいということになる。
⑵について
 (略)
⑶について
 裁判を、どこの裁判所で行うかについて当事者間で合意した場合には、特別な事情がない限り、その合意された裁判所で裁判が行われる(民事訴訟法第11条)。しかし、その審理の過程で、たとえば証人や訴訟当事者の遠距離出廷等の問題で、著しく訴訟が遅滞したり、当事者間の衡平を欠くというような事態が生じるときは、当事者の申立てにより、または裁判官の職権で、他の裁判所への移送が行われることもあるが(民事訴訟法第17条)、本件のような建物賃貸借契約における原状回復絡みの裁判においては、物件の所在地を管轄する裁判所で裁判が行われている限り、他の地域の裁判所に移送されることはまずないと考えられる。

参照条文

民法第420条(賠償額の予定)
 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
 (略)
 違約金は、賠償額の予定と推定する。
民事訴訟法第11条(管轄の合意)
 当事者は、第1審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
 (略)
同法第17条(遅滞を避ける等のための移送)
 第1審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

監修者のコメント

 違約金は、その定めがない限り、その請求はできないことは当然であり、債務不履行の一般原則によることとなる。すなわち、本ケースでは、借主のペット飼育による原状回復費用の増加額が貸主の損害ということになり、そのことは貸主が立証(証明)しなければならない。
 ただ、本件で借主がペットを飼育していることを貸主が知りながら、そのまま放置し、いよいよ契約が終了した時に違約を初めて主張するという場合は、貸主の主張が、信義則又は権利の濫用の法理によって、一部が認められない可能性がある。
 なお裁判管轄の合意については、合意した裁判所しか認めない「専属的管轄合意」と法律上認められている管轄にプラスしてその合意した裁判所でもよいという「付加的管轄合意」があり、契約の解釈として、そのどちらであるかを決定しなければならない。

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