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ホームページに掲載しています不動産相談事例の「回答」「参照条文」「参照判例」「監修者のコメント」は、改正民法(令和2年4月1日施行)に依らず、旧民法で表示されているものが含まれております。適宜、改正民法を参照または読み替えていただくようお願いいたします。

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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1310-R-0125
建物賃貸借契約における賃料債権等の消滅時効

 建物賃貸借契約において、入居者が賃料を滞納したまま行方不明になったりすることがあるが、そのような場合の賃料債権の消滅時効は何年か。
 借主が入居中に発生させた建物の損害に対する賠償請求権については、どうか。

事実関係

 当社は、賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、最近賃料の滞納等のトラブルで、入居者が行方不明になり、その行方不明になった者がいつの間にか他人の物件に入居していたりして、所在が判明することがある。
 そのような場合に、その入居者から今までの滞納賃料等を回収したいと思うが、年数が経っているために、「時効」にかかっているのではないかということから、どうしても二の足を踏んでしまう。

質問

  •  賃料債権の消滅時効は何年か。賃料債権は「定期給付債権」なので、民法第169条に規定されている「5年」だという人がいるが、その5年というのは正しいか。
  •  原状回復費用のうち、敷金では賄い切れなかった損害に対する賠償請求権については、何年で消滅時効にかかるか。

回答

 質問1.について ― 正しい。しかし、実際に消滅時効にかかるのは、その月々の滞納賃料が、5年経過するごとに、毎月消滅時効にかかっていくということであるから、滞納賃料が何か月分もあるときは、必ずしも一度に消滅時効にかかるということではない。
 質問2.について ― 損害賠償請求権については、消滅時効の進行も考えられるが、本件のような建物賃貸借の明渡しに伴う損害賠償請求権については、民法に特別な規定があり、貸主は、借主から建物の返還を受けた時から1年以内にその請求をしなければならないと定められている(民法第621条、第600条)。この規定に定められている期間は「除斥期間(注)」とされており、判例によれば、貸主が、その除斥期間内(1年以内)に裁判上ないし裁判外での請求をすれば、請求権は普通の債権となり、10年の消滅時効(民法第167条第1項)によらなければ消滅しないとしている(大判昭和8年2月8日民集12巻60頁)。
(注)  「除斥期間」とは、消滅時効と同様に権利の行使を一定期間内に制限する制度であるが、「時効」と異なり、中断はなく、当事者の援用も必要としない。

参照条文

民法第167条(債権等の消滅時効)
 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
 (略)
民法第169条(定期給付債権の短期消滅時効)
 年又はこれにより短い期間によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。
民法第600条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。
民法第621条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
 第600条の規定は、賃貸借について準用する。

監修者のコメント

 月払いの賃料は、回答のとおり5年であるが、その計算の始期は、それぞれの月の支払時期からである。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「敷金」

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