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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

賃貸事例 1304-R-0115
入居中の「自然死」の場合の遺族に対する損害賠償請求と相続の「限定承認」との関係

 1人暮らしの入居者が、賃貸借物件の中で「自然死」(脳卒中)したが、発見が遅れたため、死臭がひどく、クロスの張り替えやクリーニングをしても臭いがとれず、次の入居者の募集ができない。
 このような場合、貸主から遺族に対し、損害賠償の請求ができるか。遺族は、相続について「限定承認」をしたというが、限定承認とはどういうものか。損害賠償の請求はできるのか。

事実関係

 当社は賃貸の媒介・管理業者であるが、当社が管理をしている賃貸借物件の部屋の中で、1人暮らしの入居者(年齢75歳)が死亡した。警察の検視の結果、死因は「自然死」(脳卒中)とされたが、発見が遅れたために、部屋中に死臭が残り、壁クロス等をすべて取り替え、クリーニングもしたが、それでもまだ臭いが残っているようで、暫らくは入居者の募集ができない状況にある。

質問

  •  このような状況の中で、貸主は遺族に対し、何らかの損害賠償請求をしたいと考えているが、請求は可能か。
  •  遺族は、弁護士と相談し、相続については「限定承認」をしたということであるが、この限定承認とはどういうものか。貸主は損害賠償の請求ができなくなるのか。

回答

1.   結 論
 質問1.について ― 死臭問題を含めて原状回復をどこまで行うかという問題はあるにしても、病死した借主の遺族に対し、損害賠償の請求をすることについては、かなり難しいと考えざるを得ない。
 質問2.について ― 「限定承認」とは、相続人が相続財産の限度でのみ、被相続人の債務と遺贈を弁済するという留保条件付きでする相続の承認のことである(民法第922条)。したがって、相続する財産の額と債務の内容・額いかんによっては、請求ができなくなる可能性もある。
2.   理 由
について
 建物賃貸借契約の借主は、その契約が終了するまで、建物を善良な管理者の注意をもって保存しなければならない(民法第400条)。そして、この借主の保存義務の不履行は、賃貸借契約上の債務不履行になる。しかし、その借主の債務不履行を理由に、借主の遺族に損害賠償の請求をするためには、少なくとも死亡した借主に「過失」があることが必要で、もし「過失」がないとすれば、請求はできないということになる。このことは、たとえば借主が重度の高血圧症であったとか、そのことを遺族も知っていたというような場合の不法行為責任を追及する場合においても同じである (民法第415条、第709条)。
 いずれにしても、借主が自殺をしたのであればともかく、脳卒中で死亡した借主に「過失」があったと断定するのは、本件の事実関係からだけではかなり難しいと考えざるを得ない。
について
 「限定承認」とは、結論で述べたとおり、相続財産の限度で、相続人が、被相続人の債務と遺贈を弁済するという制度であるから、たとえば相続財産の額より借財の方が多いというのであれば、その借財は原則として債権額に応じて弁済されることになるが、(民法第929条本文)、債権者の中に、抵当権などの優先権をもつ債権者がいる場合には、その債権者に対し優先して弁済されることになるので(同法同条ただし書き)、本件の損害について、実際に賠償請求ができるかどうかは、それらの優先権をもつ債権者の債権額いかんということになる。

参照条文

   民法第400条(特定物の引渡しの場合の注意義務)
 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
   民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
   民法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
   民法第896条(相続の一般的効力)
 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
   民法第922条(限定承認)
 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
   民法第923条(共同相続人の限定承認)
 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
   民法第924条(限定承認の方式)
 相続人は、限定承認をしようとするときは、第915条第1項の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。
   民法第929条(公告期間満了後の弁済)
 第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれの債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。ただし、優先権を有する債権者の権利を害することはできない。

監修者のコメント

 本件で、債務不履行にせよ不法行為にせよ、損害賠償請求権が発生するためには、行為者すなわち請求される者に「故意又は過失」がなければならない。単なる結果責任ではないからである。
 まず、入居者本人については、自殺ではなく自然死(病死)したことに過失があったことが必要であるが、その評価はかなり困難である。
 また、遺族については発見が遅れたことについて、やむを得ない事情がなかったかが検討されなければならない。
 なお、本件では死臭が残っていることから問題となるのであって、そのようなことはなく、単に病死したというだけであるなら、自殺と異なり、損害賠償請求はできないと考えたほうが良い。

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