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2601-R-0296
定期建物賃貸借契約の媒介時に賃貸人の事前説明義務を十分に説明しなかったときの宅建業者の責任。

定期建物賃貸借契約の媒介をしたが、賃借人に対し事前説明書の交付・説明をせず、また、依頼者である賃貸人に事前説明義務があることを説明しなかったため、契約期間が満了しても賃借人から契約の終了を争われ、その点について賃貸人から責任を問われている。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。取引のあった先代ビルオーナーが亡くなり、唯一の収益物件であるビルを相続した息子から空きテナントの賃貸の媒介を依頼された。当社は長年にわたり亡父親と懇意にしており、同ビルの賃貸について当社に全面的に任されていた。息子も不動産経営を熟知しておらず、父親が当社を信頼していたこともあり、テナント募集や契約に関してすべて当社に委任していた。同ビルは、築年数が古く数年後には建て替えの予定があった。これまで媒介した賃借人とは定期建物賃貸借契約を締結していることもあり、息子からは期間5年の定期建物賃貸借契約を依頼され、法人の賃借人との契約締結をした。契約期間の5年を迎えるため、当社は、息子名義で満了日の6か月前に、賃借人に対して契約が終了になる旨を文書で通知した。
 しかし、賃借人は、締結した契約書は定期建物賃貸借契約であるが、同契約の要件である事前の説明を受けていないため、契約は終了せず、更新できるはずであると言ってきた。賃貸人は、この賃借人の契約終了ですべてのテナントが退去するのを見込んでビルの建替えに着手する予定だった。賃貸人は、賃借人に対して明け渡しを求めたが、賃借人は明け渡しを拒否したため、裁判で争うこととなった。しかし、賃貸人が定期建物賃貸借契約の事前説明をしなかったとの理由で、同賃貸借契約は成立しておらず、賃貸人の敗訴の方向となったため、最終的に、賃貸人が賃借人に対し和解金(立退料)を支払うことで収まった。賃貸人は当社に対して契約締結のすべてを任せていたにもかかわらず、当社が賃借人に対し事前説明を行わなかったのは当社に債務不履行責任があり、賃貸人が支払った和解金を損害賠償として請求すると言っている。賃貸人は、定期建物賃貸借契約は賃貸人が賃借人に対し事前説明書をもって説明することが成立要件であることを裁判の過程で知ったが、当社は事前説明が必要であることを賃貸人に説明していなかった。

質 問

 定期建物賃貸借契約における事前説明を当社が賃借人に対して説明しなかったことや賃貸人による事前説明が必要なことを賃貸人に告げなかったことは当社に責任があるか。

回 答

1. 結 論
定期建物賃貸借契約が成立するためには、賃貸人が賃借人に対して契約締結までに事前説明することが必要である。媒介業者が賃貸人を代理して説明することもできる。また、媒介業者は事前説明が同契約の成立要件であることを依頼者に説明する善管注意義務があり、説明しなかった場合、媒介業者は、債務不履行責任を負うことがある。
2. 理 由
 定期建物賃貸借契約は、期間を定め、期間満了により無条件で契約が終了する賃貸借契約の一類型であることは広く知られている。同契約を締結する際は、あらかじめ、賃貸人は、賃借人に対し、契約の更新がなく、期間満了時に契約は終了する旨を記載した書面を交付して説明する必要がある。同契約の事前説明と言われているものである(借地借家法第38条第3項)。賃貸人が説明しなかったときは、更新がない旨の定めは無効となり、賃借人が契約更新を望んだ場合には更新されることになる(同法第38条第5項)。更新されると普通賃貸借契約に切り替わると解されている。事前説明する者は、必ずしも賃貸人本人でなくても、親族等の説明の代理権を付与された者も説明することができる。また、媒介する宅建業者が代理権を得て説明することも認められている(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方第35条第1項第14号関係 法第35条第1項第14号の省令事項(規則第16条の4の3)について 9)。相談ケースのような定期建物賃貸借契約の事前説明や終了通知(同法第38条第6項)等の手続きに関するトラブルが散見される。契約の成立や終了の要件が不十分なときは、賃貸人・賃借人双方の契約終了・継続を巡る主張の相違により紛争となることがある。

宅建業者は、消費者とは情報の格差があり、媒介の依頼を受けた際は、不動産取引の専門家として適切な業務処理することが必要である。宅建業法では、依頼者に対し、信義誠実に業務を履行することが義務付けられている(宅建業法第31条)。また、宅建業者の媒介行為は準委任とされているが、受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負っている(民法第644条)。宅建業者である媒介業者が、事前説明もせず、依頼者に説明が必要なことも説明しないことにより、賃借人の退去で紛争となった事案で、「免許登録を受けて不動産の媒介業務に携わる者は、委託者から、不動産の売買賃貸等の取引に関する専門的知見を有する者として信頼を受け、その介入によって取引に過誤のないことを期待されているものであるから、このような社会的要請にも鑑み、委託者に対し、準委任関係に基づく善良な管理者としての注意義務を負担することはもちろん、その媒介をするに際しては、委託者が定期建物賃貸借を意図しているのであれば、その実現に必要な手続が履践されているかにつき格段の注意を払い、もって、取引上の過誤による不測の損害を生ぜしめないよう配慮すべき業務上の一般的注意義務があるというべきである」と媒介業者の業務上の注意義務を指摘した上で、「媒介業者は、本件賃貸借契約締結に際し、賃貸人から委任状を得た上で賃借人に事前説明をすることも、賃貸人に対して事前説明の手続が必要となることを伝えることもなかったのであるから、媒介業者は、賃貸人と媒介業者との間の媒介契約の善管注意義務及び前記業務上の一般的注意義務に違反したというべきであり、媒介業者には債務不履行が認められる」として賃貸人への損害賠償を命じた裁判例がある(【参照判例】参照)。
媒介業者が賃貸人から定期建物賃貸借契約を依頼されたときは、契約締結までに賃貸人による事前説明が必要なこと、媒介業者が代理で説明することもできることについて賃貸人に十分説明する必要がある他、契約終了時の終了通知をすること等、同契約形態を理解させることが肝要である。
なお、事前説明は、賃貸人及び媒介業者による事前説明書による説明のほか、賃貸人から代理権を得て重要事項説明書に記載して説明できることも知っておきたい(国土交通省通知に基づく重要事項説明書における定期建物賃貸借に係る記載例参照)。

参照条文①

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
① 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
② 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。
 同法第643条(委任)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
 同法第644条(受任者の注意義務)
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
 同法第656条(準委任)
① 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
 借地借家法第38条(定期建物賃貸借)
① 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
② (略)
③ 第1項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
④ (略)
⑤ 建物の賃貸人が第3項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
⑥ 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
⑦~⑨ (略)
 宅地建物取引業法第31条(宅地建物取引業者の業務処理の原則)
① 宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
 ② (略)  
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方
第35条第1項第14号関係
法第35条第1項第14号の省令事項(規則第16条の4の3)について
宅地の売買又は交換の契約に当たっては以下の1から3の2を、建物の売買又は交換の契約に当たっては1から6までの事項を、宅地の貸借の契約に当たっては1から3の2まで及び8から13までの事項を、建物の貸借の契約に当たっては1から5まで及び7から12までの事項を説明することとする。
1~8 (略)
9 定期借地権、定期建物賃貸借及び終身建物賃貸借について(規則第16条の4の3第9号関係) 定期借地権を設定しようとするとき、定期建物賃貸借契約又は終身建物賃貸借契 約をしようとするときは、その旨を説明することとする。なお、定期建物賃貸借に関する上記説明義務は、借地借家法第38条第2項に規定する賃貸人の説明義務とは別個のものである。また、宅地建物取引業者が賃貸人を代理して当該説明義務を行う行為は、宅地建物取引業法上の貸借の代理の一部に該当し、関連の規定が適用されることとなる。
10~13 (略)
 国土交通省通知(平成30年2月28日国土動第133号及び国住賃第23号)に基づく重要事項説明書における定期建物賃貸借に係る記載例

参照判例①

 東京地裁令和6年1月29日 判タ1520号73頁(要旨)
およそ免許登録を受けて不動産の媒介業務に携わる者は、委託者から、不動産の売買賃貸等の取引に関する専門的知見を有する者として信頼を受け、その介入によって取引に過誤のないことを期待されているものであるから、このような社会的要請にも鑑み、委託者に対し、準委任関係に基づく善良な管理者としての注意義務を負担することはもちろん、その媒介をするに際しては、委託者が定期建物賃貸借を意図しているのであれば、その実現に必要な手続が履践されているかにつき格段の注意を払い、もって、取引上の過誤による不測の損害を生ぜしめないよう配慮すべき業務上の一般的注意義務があるというべきである。
本件では、媒介業者は、本件賃貸借契約締結に際し、賃貸人から委任状を得た上で賃借人に事前説明をすることも、賃貸人に対して事前説明の手続が必要となることを伝えることもなかったのであるから、媒介業者は、賃貸人と媒介業者との間の媒介契約の善管注意義務及び前記業務上の一般的注意義務に違反したというべきであり、媒介業者には債務不履行が認められる。
媒介業者の注意義務違反の具体的内容は、賃貸人から委任状を得た上でI社に事前説明をするか、賃貸人に対して事前説明の手続が必要となることを伝える義務を怠ったことにあるところ、仮にそのような義務が履行された場合には、定期建物賃貸借に必要な手続が履践される結果、本件賃貸借契約のうち、契約の更新がなく期間の満了により賃貸借が終了する旨の条項が有効となるから(借地借家法第38条5項)、賃貸人は、賃借人に対し、平成〇〇年〇月〇〇日の期間満了をもって、本件賃貸借契約を終了することができることになる。
そうすると、賃貸人が賃借人に対して支払った解決金△△△万円から、約定の償却をした後の保証金残金である△△万△△△△円を控除した金額。△△△万△△△△円は、媒介業者による債務不履行と相当因果関係のある損害ということができる。

監修者のコメント

 定期建物賃貸借契約を媒介する場合には、更新がなく期間満了で終了する旨の事前説明書による説明が必要であることは言うまでもないが、いまだにこれを忘れるトラブルが散見される。特に、再契約の場面でこれを怠ることが少なくないようなので、注意したい。事前説明を怠れば、賃貸人に多大な損害が発生し、それについて媒介業者が責任を負わざるを得ないことは、上記相談事例で指摘されているとおりである。
なお、重要事項説明書で事前説明を兼ねる方法については、記載内容や代理権証書の作成に十分注意する必要がある。要件を満たさなければ、事前説明を怠る場合と同じ結論となる恐れがあるのであるから、慎重を期して対応し、確信が持てなければ定型の事前説明書による説明をしておく方が無難な場合もあるだろう。

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<ご注意>
◎ たいへん多くの方からご相談を受け付けており、通話中の場合があります。ご了承ください。
◎ ご相談・ご質問は、簡潔にお願いします。
◎ 既に訴訟になっている事案については、原則ご相談をお受けできません。ご担当の弁護士等と協議してください。

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