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2511-R-0294
建物賃貸借における期限付合意解約の有効性。

当社が管理している物件の賃貸借契約が更新時期を迎えるが、賃貸人は、当該物件を取り壊して賃貸マンションの建築を予定している。賃借人は、今後2年間は居住したい希望があるため、当社は更新契約書に2年後に合意解約する旨の特約を約定する内容の提案を考えている。

事実関係

 当社は賃貸の媒介業者である。当社が賃貸管理している一戸建の賃貸人から相談があった。賃借人は高齢夫婦であるが、期間2年の普通賃貸借契約で今まで10回更新している。建物は築45年が経過し、外壁や建物本体及び設備が老朽化しているが、通常に居住が可能である。賃貸人は、現在の一戸建を取り壊し、賃貸マンションへの建て替えを検討しているので賃借人に退去をさせたいと考えている。賃貸人が、賃借人に契約解除と退去を打診したところ、賃借人は少なくとも2年間は継続して住みたいとの希望があったようだ。賃貸人は、短期間に退去をさせたいとの意向があるものの、賃借人は長年滞納もなく、今回の更新時に退去させるのは忍びないと、2年後に退去するのであれば建て替えは2年後でもやむを得ないと言っている。当社としては、更新契約書に賃借人が希望する2年間は居住を認め、2年経過後に合意解約する旨を約定する内容の更新契約を賃貸人及び賃借人に提案したいと考えている。期限付合意解約を結べば、賃貸人の建替え計画と賃借人の居住希望の条件を満たすことができる。

質 問

 いわゆる期限付合意解約は有効か。

回 答

1. 結 論
 現行の契約形態は普通賃貸借契約であり、期限付き合意解約は、実質的に更新無の賃貸借契約とみなされ、賃借人に不利な特約として無効となる可能性がある。
2. 理 由
 建物賃貸借契約の更新時等に、賃貸人と賃借人間で、一定の期限を設け、その期限到来時に賃貸借契約を解約する旨を合意することがあり、これを期限付合意解約という。賃借人が転居や不動産取得等の何らかの理由により退去する場合、現時点で任意に解約する合意解約は、問題はなく、むしろ、契約関係を解消する証として、合意解約書を結ぶことが望まれる。しかし、期限を設定して解約を約する期限付合意解約については、賃借人が期限到来時に自らの意思で退去する場合は格別問題は起こらないであろうが、賃貸人が、賃借人の弱い立場に乗じて本意でない期限付合意解約を押し付けることもあり、合意から時間が経過してから一方的に契約を終了させることが問題になったり争いに発展したりすることがある。  

賃貸借契約による賃借人は、借地借家法により保護を受けている。賃貸人は、正当事由がなければ契約の更新を拒絶できず、解約の申入れもできない(民法第28条)。この規定に反する特約で賃借人に不利な特約は無効である(同法第30条)。契約更新の際に賃貸人からの期限付合意解約の申出があっても賃借人は拒否することが可能であるが、仮に期限付合意解約を約定しても、争いになれば、相当の理由がなければ、上記借地借家法の規律の脱法として、無効と判断される場合がある。判例としては、「期限付合意解約をすることは、他にこれを不当とする事情の認められない限り許されないものでない」と判示するもの(【参照判例①】参照)や、「期限附合意解約は、借地法の適用がある土地賃貸借の場合においても、右合意に際し賃借人が事実土地賃貸借を解約する意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、しかも他に右合意を不当とする事情の認められないかぎり許されないものではなく、借地法11条(現借地借家法第9条)に該当するものではない」と判示するもの(【参照判例②】参照)がある。基本的には、期限付合意解約が有効となるための要件として、①賃借人が解約する意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由と、②他に合意を不当とする事情の認められないこと、が求められると考えておくべきである。
  妻が病弱の上、転居の資力がないという事情があるが、建物が朽廃状態で、賃借人も朽廃を認識している期限付合意解約を有効とした裁判例があるが(【参照判例③】参照)、相談ケースのように建物が老朽化しているのみでは、有効とは言えない可能性がある。また、相談ケースの賃借人が2年間は継続して住みたいとの希望が、2年以上住みたいのが賃借人の真意であれば、期限を2年とする合意解約は無効の可能性が高い。期限付合意解約が、有効か否かの判断は、ケースバイケースであり、当事者に争いが起きたときは、契約に至った経緯、契約中の状況、建物の状況、当事者の状況等を裁判所が総合的に勘案して判断することになる。
  更新時に、賃貸人と賃借人双方の希望を満たす方法に、定期建物賃貸借への切り替えがある(同法第38条)。現行の契約を合意解約した上で、新たに定期建物賃貸借契約を結ぶものである。しかし、この場合でも、賃貸人による強制的な要求や心理的圧迫により、賃借人の意に反して賃借人がやむを得ず同意したのであれば、定期建物賃貸借への切り替えは認められず、普通賃貸借契約の継続と見なされる場合がある。また、現在の居住用の普通賃貸借契約の契約締結が一定期間以前のもの(平成12年3月1日より前。)であるときは、切り替えができないので留意が必要である(良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法 附則第3条)。

参照条文①

 借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)
① 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
② 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
③ (略)
 同法第28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
 同法第30条(強行規定)
この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする
 同法第38条(定期建物賃貸借)
① 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
②~⑨ (略)
 良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法 附則第3条
第5条の規定の施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借(旧法第38条1項の規定による賃貸借を除く)の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第5条の規定による改正後の借地借家法第38条の規定は適用しない。

参照判例①

 最高裁昭和31年10月9日 判タ65号81頁(要旨)

参照判例②

 最高裁昭和44年5月20日 判タ236号117頁(要旨)
従来存続している土地賃貸借につき一定の期限を設定し、その到来により賃貸借契約を解約するという期限附合意解約は、借地法の適用がある土地賃貸借の場合においても、右合意に際し賃借人が事実土地賃貸借を解約する意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、しかも他に右合意を不当とする事情の認められないかぎり許されないものではなく、借地法11条に該当するものではないと解すべきである
  注)借地法第11条=強行規定(現、借地借家法第9条)

参照判例③

 東京地裁昭和41年11月11日 判タ202号181頁(要旨)
 いわゆる家屋賃貸借の期限付合意解約は、借家法第1条の2、第2条を脱法する目的でなされた場合等これを不当とする特段の事情のないかぎり許容され、借家法第6条にいう不利な条件に該当しないものと解すべきである。これを本件についてみると、当審における賃借人の本人尋問の結果によれば、賃借人が病気の妻をかかえて他に移転するに要する十分な資力もないことが認められるけれども、本件建物が既に朽廃し改築する必要があり、賃借人も右朽廃の事実を認めた上で賃貸人に対しその明渡猶予を求めて本件期限付合意解約を約定するに及んだものであるから、右期限付合意解約は借家法第1条の2、第2条を脱法する目的で付されたものでもないので、控訴人が明渡につき差し当って困難する右の状況にあるとの一事をもつてこれを無効なものということはできない。
  注)借家法第1条の2=更新拒絶(現、借地借家法第26条)
    同第2条=法定更新(同上)

監修者のコメント

 期限付合意解約については、その効力が争われることが多く、特に最高裁が、これを有効と認めるための要件として、「賃借人が事実土地賃貸借を解約する意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由」を求めていることに留意する必要がある。漫然と合意を交わすのではなく、例えば、立退料の提供、一定期間の賃料の免除、移転先の紹介等もあわせてしておくことも望ましい。
別手段としては、解説で紹介する定期借家契約への切替えという方法以外にも、合意により即時解約しつつ一定期間明渡しを猶予するという方法もある。ただし、これらの方法も、借地借家法の規律の脱法とみなされるリスクはあり、事案によっては裁判所が期限付合意解約と同等の枠組みで有効性を判断する可能性もあるので、注意を要する。

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