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2511-R-0293
賃貸店舗が営業に使用できるかの確認をしなかった媒介業者の責任如何。

居抜き店舗の賃貸借契約の媒介をしたが、賃借人が予定していた店内改装が法令制限に抵触し開業できないことが判明し、賃借人は、契約を解除した。賃借人は、開業できるか否かの調査・説明を怠った媒介業者に責任があるとして損害賠償を請求すると言っている。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。賃借目的が飲食店開業である賃借人と賃貸人間の賃貸借契約の媒介をした。店舗は従前飲食店であったものを居抜き店舗として賃貸借契約をした。居抜きのため、内装や厨房設備はほとんどがそのまま使用でき、賃借人は開業費用の一部が抑えられると満足気だった。内装をやや特殊な仕様にしてレストランを営む予定だった賃借人は、賃貸借契約後、開業に向けて、厨房排気ダクトを改修して消防法令の要件を充足しようとしたが、天井高が建築基準法に違反することが判明した。賃借人は、賃借人の思い描くレストランを営むことが法的に不可能になったため、やむを得ず賃貸借契約を解除した。賃借人は、当社に対し、支出した内装工事費や開業できなかったことによる逸失利益、さらに、当社の債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を請求すると言ってきた。賃借人は、店舗の使用目的が飲食店である旨を事前に当社に知らしており、媒介業者は、レストラン開業が可能か否かの調査・説明すべき義務がりながら調査・説明しなかったのは宅建業法上の説明義務違反であると強硬な姿勢である。当社は、賃借人から使用目的を飲食店経営と聞いていたので、重要事項説明書には、「用途によっては法令の制限を受けることがあり、具体的な利用計画についてその他の法令の制限の確認が必要である」旨の記載をしていたが、賃借人が予定していた店舗改修が消防法や建築基準法等に適合するか否かについての質問も調査依頼も受けていない。

質 問

 店舗賃貸借の媒介業者は、賃借人が開業のための店舗改装等する場合の消防法、建築基準法等の法令上の適否や営業に際しての保健所や警察等による営業許可の要否等が、賃借人の希望する使用形態に合致し、利用できるか否かを事前に調査・説明する義務があるか。

回 答

1. 結 論
 原則、賃借店舗が法令に合致するか否かについては、賃借人自身が契約締結に際して調査すべき事柄であり、媒介業者に調査・説明する義務はない。ただし、用途地域により店舗の営業が不可である地域が明らかな場合や賃借人から営業可否に関して調査依頼を受けた場合はこの限りでない。
2. 理 由
 媒介業者が調査・説明義務を負う重要事項の項目は、宅建業法に規定されているが、建物の用途や使用方法が制限される都市計画法、建築基準法その他の法令に関しては、契約内容の別(宅地か建物か、売買か賃貸か)に応じて説明する必要がある(宅建業法第35条第1項第2号)。法令に基づく制限では、用途地域により店舗や事務所その他の施設の利用が可能か否かが規定されており、店舗に関しては、第一種低層住居専用地域では小型店舗も開業ができず、中・大型店舗も用途地域において制限がある。遊戯施設や風俗施設に至っては、第二種住居地域・準住居地域や近隣商業・商業地域等に限られ、建築及び開業制限が厳しく、面積制限がある。その他の施設も制限があり、注意が必要である(「用途地域による建築物の用途制限」参照)。

賃貸建物の媒介においては、宅建業法や同施行令では上記の制限が重要事項として明記されていないものの、少なくとも当該物件が営業できるか否かが明確な施設については、利用目的を確認した段階で、宅建業者は利用の可否について判断し、賃借人に説明すべきである。判断が難しい場合は、役所調査により確認する必要があろう(この点、かかる趣旨から、事業用建物貸借用の重要事項説明書に用途地域等の記載欄をあえて設けている書式もある)。
  一方、用途地域以外の各種法令制限があるときの判断については、賃借人が予定している実際の事業形態や建物改修を事前に媒介業者が確認することは難しい。「希望する営業をするためにはどの程度の設備を必要とするかは、用法順守義務違反に反しない範囲で賃借人が判断すべきものであり、現状の設備の性能が賃借人の営業形態に合致し、利用できるかどうかについても、法令上の制限の有無も含め原則として賃借人自身が契約締結に当たり調査すべき」とし、また、「かねてより本件店舗における営業に当たり、消防法上の問題は指摘されておらず、本件契約の際に行われた重要事項説明においては、用途によって法令の制限を受けることがあり、具体的な利用計画についてその他の法令の制限の確認が必要になるとされているのであるから、本件店舗において希望する営業が可能かどうかは、自己の営業にどの程度の設備が適切かを具体的に知っている賃借人自身がその営業に際しての法令上の制限も含めて調査するべきであった」と媒介業者の調査義務を否定した裁判例がある(【参照判例①】参照)。
しかし、上記の用途地域における店舗等の建築・営業制限に加え、自治体の条例による制限を設けているものがある。条例における制限は、用途地域における制限と同様に、明確に規定されているものであり、条例も宅建業者が調査すべき事項である。「不動産仲介業者は、媒介を行うにあたっては、委託の趣旨に従い、善良な管理者の注意をもって行い、委託者の目的が達することができるようにすべき義務があり、飲食店の店舗とする目的で不動産の賃貸借について仲介の依頼を受けた場合には、対象物件について、飲食店の店舗とすることに影響のある法令に基づく制限についても調査をし、その内容を依頼者に説明する義務があるというべきところ、本件建物は、第一種低層住居専用地域かつ第一種文教地区にあり、そのために、本件建物において飲食店の営業を行うことは、ほぼ不可能であったと認められるから、媒介業者は、これらの規制の存在及びその内容について調査をし、これを賃借人に説明する義務があったというべきである」として、媒介業者が、条例に関する制限についての調査・説明義務違反による損害賠償を認容した裁判例があるので留意が必要である(【参照判例②】参照)。

参照条文①

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
① 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
②・③ (略)
 同法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
① 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
一 (略)
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
(以下略)
 建築基準法第48条(用途地域等)
① 第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
 ②~⑰ (略)
  別表第二 用途地域等内の建築物の制限(第27条、第48条、第68条の3関係)
(い)第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物
一 (略)
二 住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの
三~十 (略)
 東京都文教地区建築条例第3条(第一種文教地区内の建築制限)
第一種文教地区内においては、法第48条の制限によるほか、別表1に掲げる用途に供するために建築物を建築し、又は用途を変更してはならない。ただし、知事が文教上必要と認め又は文教上の目的を害するおそれがないと認めて許可した場合は、この限りでない。
別表1(第3条関係) (略)
 文教地区における建築制限建築物の指定(東京都告示916号)
 東京都文京地区建築条例別表1第8号及び別表2第5号の規定により、次の用途に供する建築物を指定する。
一 共同住宅の主として住戸又は住室のある階に設ける飲食店
二 前号以外の飲食店で第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域及び田園住居地域内に設けるもの。ただし、第二種中高層住居専用地域内に設ける飲食店にあっては酒類提供飲食店(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)に限る。

参照判例①

 東京高裁令和3年9月15日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
賃借人にとって居抜き店舗は出店費用を低廉に抑えられるとの期待があるとしても、賃借した店舗において希望する営業をするためにはどの程度の設備を必要とするかは、用法順守義務違反に反しない範囲で賃借人が判断すべきものであり、現状の設備の性能が賃借人の営業形態に合致し、利用できるかどうかについても、法令上の制限の有無も含め原則として賃借人自身が契約締結に当たり調査すべきであって、居抜き店舗として借主を募集し、賃貸借契約の内容としてその旨合意したからといって、賃貸人である管理組合法人が賃借人に対し、本件店舗が賃借人の営業形態に適合することを保証したとはいえない。
  また、本件契約においては飲食業を営むことが目的とされていたが、本件契約の際に行われた重要事項説明においては、用途によって法令の制限を受けることがあり、具体的な利用計画についてその他の法令の制限の確認が必要になるとされているのであるから、本件契約において飲食業を営むに当たり消防法令に違反することがないことを貸主である賃貸人が保証したということもできない(したがって、仮に消防法令違反の状態が存したときにはそれを他の法令違反にならずに是正することができることを保証したということもできない。)から、賃貸人が本件契約上、賃借人に対し、消防法令上適法に本件店舗を飲食店として使用収益させる債務を負ったとは認められない。したがって、賃貸人に債務不履行が存したと認めることはできない。(中略)
  しかしながら、賃貸人である管理組合法人が、本件店舗を集会室として自己使用するにとどまらず、収益物件化して飲食店として第三者に賃貸しており、媒介業者は宅建業のほか建設業許可を受けて内装仕上げ業を営んでおり、賃借人が主張するように媒介業者代表者が賃貸人である管理組合法人の理事を長年兼任しているとしても、かねてより本件店舗における営業に当たり、消防法上の問題は指摘されておらず、前記のとおり本件契約の際に行われた重要事項説明においては、用途によって法令の制限を受けることがあり、具体的な利用計画についてその他の法令の制限の確認が必要になるとされているのであるから、本件店舗において希望する営業が可能かどうかは、自己の営業にどの程度の設備が適切かを具体的に知っている賃借人自身がその営業に際しての法令上の制限も含めて調査するべきであったといえる。

参照判例②

 東京地裁平成19年4月18日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
不動産仲介業者は、媒介を行うにあたっては、委託の趣旨に従い、善良な管理者の注意をもって行い、委託者の目的が達することができるようにすべき義務があり、飲食店の店舗とする目的で不動産の賃貸借について仲介の依頼を受けた場合には、対象物件について、飲食店の店舗とすることに影響のある法令に基づく制限についても調査をし、その内容を依頼者に説明する義務があるというべきところ、本件建物は、第一種低層住居専用地域かつ第一種文教地区にあり、そのために、本件建物において飲食店の営業を行うことは、ほぼ不可能であったと認められるから、媒介業者は、これらの規制の存在及びその内容について調査をし、これを原告に説明する義務があったというべきである。
しかるに、媒介業者は、賃借人に対して上記の説明をせず、そのため、賃借人は、本件建物において飲食店の営業ができるものと考えて賃貸人との間で本件賃貸借契約を締結したものであり、媒介業者には、賃借人に対し、上記の説明義務違反の債務不履行があったものと認められる。(中略)
本件建物は第一種低層住居専用地域かつ第一種文教地区にあり、本件建物において飲食店の営業をすることはほぼ不可能であったのであるから、媒介業者としては、これを賃借人に説明し、本件建物の賃貸借契約の仲介をしてはならなかったのであり、他方、上記のような法令上の規制は、保健所あるいは消防署の所管とは認められないから、媒介業者が、賃借人に保健所等への事前相談を勧めたことをもって前記説明義務を履行したものとは認められない。(中略)  
しかしながら、既に述べたとおり、媒介業者は、不動産取引を専門とする宅地建物取引業者であり、本件建物の敷地について本件各規制があり、本件建物において飲食店の営業ができないことは、媒介業者において調査し、賃借人に説明する義務があったのであり、賃借人においてこれを調査すべきであったとはいえない。
しかも、第一種低層住居専用地域でも飲食店舗の営業は一定の要件のもとに可能である一方、本件各規制は食品衛生法上の許可要件に関連したものではなく、保健所はその所管であったわけではないから、賃借人が自ら保健所に行って事前相談すべきであったともいえない。

監修者のコメント

 事業用の建物賃貸借契約の締結後に、賃借人の営業形態や内装・設備工事が法令に抵触することが判明してトラブルとなる事例は後を絶たない。解説が指摘するとおり、媒介業者は用途地域や条例等による用途制限は確認して説明しておくことが望ましいが、そこから先の、賃借人が予定する営業形態や内装・設備工事が消防法・風営法その他の規制に抵触するか否かは、賃借人側の個別事情に左右される領域であるので、原則として賃借人が自ら確認すべき事項であるといえる。
予防法務的には、法令の制限を受ける場合があることを重要事項説明書や契約書に明記するとともに、賃借人に実際に消防や役所に確認することを促し、賃借人が確認済みの上で契約を締結するに至ったことも、これらの書面に明記しておくことが望ましい。

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