世界の不動産事情

広岡 裕児氏 

1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。
パリ第三大学留学後、フランス在住。シンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。またフリージャーナリストとして著書『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書) 他。

広岡 裕児氏

2019年12月02日公開  NEW

都市計画図書でわかる土地や地域の将来(フランスの不動産事情<第16回>)

フランスで不動産を購入する場合、案外忘れられがちなのが「Urbanisme」(都市計画)です。

日本でも重要事項の説明の中で地目や規制などが知らされますが、フランスでも「renseignement d’Urbanisme」(都市計画情報)があります。市町村の役所で簡単に取れます。ただし、不動産仲介業者が説明する義務はなく、フランス語であることもあり、その存在すら知らないという日本人投資家の例もよくあります。売却に関するご相談をいただいたときに、はじめて建物の一部が文化財指定されていることに気付かれたということもありました。

都市計画情報の確認はもちろんですが、この情報のもとになっている都市計画図書の検討もぜひ行っておくべきです。地目や規制はいわば現在の姿ですが、これによって将来が見えるからです。それもかなり確実に。

新幹線に乗ると、車窓に延々と市街地が続きますが、フランスではそんなことはありません。人口が少ない、ということもありますが、集落・市街地の間に断絶をつくらなければならないと「都市計画法典」で決められているからです。

「計画なきところ開発なし」がフランスの大原則で、都市計画図なしに一切の市街地化はでません。また、既存の市街地との連続性のないところに家を建てる計画をたてても無効とされます。

計画図書は慎重に作られ、厳格に適用されます。

日本では、建築「確認」ですが、フランスでは建築「許可」です。民間に委託せず市町村長が出すのですが、出す側の責任も重く、極端な例では洪水で流されてしまう危険が明白な地域に許可を出した市長が刑事責任を問われ、逮捕されたこともあります。

ですから、いきなり隣に高層ビルができて、せっかくの眺望も何も台無しになった、というようなことは、かなり防ぐことができます。

そればかりではありません。

「単なる都市的な土地利用(規制)計画でも開発・整備計画でもなく、一定の社会経済の発展動向の見通しのもとにその両者を包含・統合し、かつ都市区域以外の空間の保護と利用のあり方をも視野にいれた総体的な制度システム(…中略…)都市空間の形成と利用のあり方をめぐる今日的な諸要請を、空間的広がりと時間的要素の双方を考慮しながら総合的に調整してそれに一つのまとまった統一的な形を与え、その実現のために必要な具体的な整備から爾後の空間管理までのあり方までをプログラム化する、実定法上の制度手段」 (「フランスの都市計画制度と地方分権化」、原田純孝、社会科学研究1993、3月、東京大学)です。

フランスの都市計画図書には、医療政策、文化政策、産業政策など政策全般が具体的に集約されています。しかもただの理念ではなく実行しなくてはならないのです。 しっかりと読み解けば、かなりはっきりとその土地・物件の地域の将来が、経済的価値まで含めて、見極められます。

これが、フランスで不動産が投資として貯蓄あるいは老後資金として信頼を持たれている大きな理由でもあります。





<第1回>建物がうまくいけばすべてうまくいく!
<第2回>資産としての不動産
<第3回>“門”の内と外
<第4回>ノテール事務所
<第5回>ゴルフ場開発の資金は別荘地売却で
<第6回>Habitat indigne(「不適切な住宅」)と logement indécents
<第7回>不動産店舗取引の3つのキーワード「mur(ミュール)」「Bail(バイユ)」「Fonds(フォン)」
<第8回>リバースモーゲージとは似て非なる「ヴィアジェ」の話
<第9回>分業で行われるフランスの新規住宅供給
<第10回>開発・分譲で利用される「将来完成する状態での売却」とは?
<第11回>フランスの歴史的文化財(monument historique)
<第12回>賃貸収入の税控除と賃貸制度のしくみ
<第13回>固定資産税とは異なる「不動産税」の考え方
<第14回>老後資産の主役は「不動産」
<第15回>不動産の特徴を享受できる“SCPI”
<第16回>都市計画図書でわかる土地や地域の将来

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