世界の不動産事情

広岡 裕児氏 

1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。
パリ第三大学留学後、フランス在住。シンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。またフリージャーナリストとして著書『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書) 他。

広岡 裕児氏

2019年07月08日公開 

固定資産税とは異なる「不動産税」の考え方(フランスの不動産事情<第13回>)

前回、フランスにおける不動産所得への課税をご紹介しました。今回は、「不動産税」について述べたいと思います。日本の固定資産税にあたるものですが、そこには、両国の土地・不動産に対する考え方のちがいがみられます。

不動産税(Taxe foncière)は、地方税で、既建築不動産税と非建築不動産税に分かれ、正式には建築済み(未建築)所有物に対する不動産税La taxe foncière sur les propriétés (non) bâtiesといいます。

既建築不動産税は建物、駐車場および建物の周囲の土地が対象です。集合物件ではそれぞれの区画ごとに課されます。foncière はfoncierという形容詞の女性形でFoncierというのはもともと財産としての不動産(immobilier)というよりも「土地」を意味する言葉です。そう考えると、ビルを建てるということは、人工地盤を作っているということなのだといえるでしょう。

ついでにいうと、セーヌ川の風物詩になっているペニッシュ(小型船舶)住居やレストランなどになっているも対象になります。さしずめ水の上に立った戸建て住宅です。

課税基準は、既建築、非建築ともに「地籍賃貸価値」、つまり売値である路線価とは違って毎月いくらで賃貸できるかです。事務所や店舗・工場などは実際の相場をベースにしていますが、住宅については、1970年に行われた全国調査をもとに、毎年インフレ率などを考慮した変動率をかけて修正されます(そのためかなり実勢価格とはかけ離れており、実際の賃料の参考とはされていません)。

住宅は、物件ごとに①建物の建築的特徴、②建築の質、③部屋の配置、④日常的設備(水道、トイレ、エレベーター、階段、カーペット……)、⑤全体的な印象(住まいの一般的な性格)をもとに高級(クラス1)から劣悪(クラス8)までの8つに分けられ、立地なども考慮しm2あたりで課税基準となる賃料が評価されました。

さらにたとえばガス電気は2m2分というように、賃料水準に影響を与える利便設備を広さに換算して理論的な課税面積を出します。70年の調査以降に建築された建物は、このカテゴリー別に近隣の地籍賃貸価値に準じて決められます。

非建築不動産も同じく1961年の全国調査をもとに年間変動率で修正されています。土地は、①農地、②牧草地、③果樹園、④ぶどう園、⑤森林、⑥荒地・灌木地等、⑦採石場・砂掘場等、⑧湖池沼・泉・塩田等、⑨公園・庭園や栽培用のものを除く庭、⑩建築現場、資材置き場、私道など、⑪公園、庭園、⑫鉄道、航行用の運河、⑬建築用地、⑭ゴルフ場のカテゴリーに分けられます。

地目の別だけではなく、租税総法典では「耕作の種類によって定められた収入にもとづいて」(1509条)と明記されています。森林の狩猟権の有無などの要素も考慮されます。

土地は、売買されることではじめて富が作り出されるのではありません。作物ができたり、何かに利用したりすることで土地そのものに富を生み出す力があるのです。



<第1回>建物がうまくいけばすべてうまくいく!
<第2回>資産としての不動産
<第3回>“門”の内と外
<第4回>ノテール事務所
<第5回>ゴルフ場開発の資金は別荘地売却で
<第6回>Habitat indigne(「不適切な住宅」)と logement indécents
<第7回>不動産店舗取引の3つのキーワード「mur(ミュール)」「Bail(バイユ)」「Fonds(フォン)」
<第8回>リバースモーゲージとは似て非なる「ヴィアジェ」の話
<第9回>分業で行われるフランスの新規住宅供給
<第10回>開発・分譲で利用される「将来完成する状態での売却」とは?
<第11回>フランスの歴史的文化財(monument historique)
<第12回>賃貸収入の税控除と賃貸制度のしくみ
<第13回>固定資産税とは異なる「不動産税」の考え方
<第14回>老後資産の主役は「不動産」
<第15回>不動産の特徴を享受できる“SCPI”

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