世界の不動産事情

広岡 裕児氏 

1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。
パリ第三大学留学後、フランス在住。シンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。またフリージャーナリストとして著書『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書) 他。

広岡 裕児氏

2019年03月05日公開 

分業で行われるフランスの新規住宅供給(フランスの不動産事情<第9回>)

フランスでは、基本的に小規模な戸建て分譲以外は、土地の造成から建物の建設、分譲、賃貸まで全部を行うデベロッパーはおらず、各段階で分業になっています。

まず、土地の取得と造成基盤整備は、たいていの場合、混合経済会社(SEM)や地方公共会社(SPL)によって行われます。混合経済会社(SEM)は市町村が50%超85%の株式を持つ第3セクターで、地方公共会社(SPL)は2つ以上の市町村だけが出資する会社です。いずれも通常の株式会社で、独立採算、CEO以下執行役員・従業員は完全な民間人で、官からの出向はありません。ただし、公共がマジョリティなので、行政は収用権を委託することができます。また、ゴルフ場の例で述べたように細かく都市計画土地利用と組み合わせることも可能です。そのため、民間が行うよりも効率よく土地取得ができます。このような公共主体が事業を行うための「整備コンセッション」という手法も用意されています。

次の段階で、土地を買って建物を建築して販売する業者をプロモーターといいます。収用などの手段を使って安く取得された土地をプロモーターが購入して建物をつくって転売するにあたっての価格規制はありません。公益のために収用した土地で民間が儲けるのはおかしい、と批判がでるかもしれませんが、フランス人はもっとプラグマチックです。利幅が増えることによって買い手の数が増えるので、売れ残りリスクが減る。すなわち、会社の独立採算が可能になるので、会社の赤字を税金で補てんしなくてもいい。これは、まさに公益である、と見ます。

プロモーターは、資金調達のため、建物一括で購入する投資家を募るのが一般的です。戸建て分 譲の場合でも平面にマンションを建てたようなイメージで分譲地全体への投資家を求めることもよくあります。

この投資家は、自分で賃貸するのではなく、各戸毎に分譲します。その際、販売はプロモーターにではなく専門業者に委託することもあります。

もちろん生命保険など機関投資家が一括購入して自分で全体を賃貸することもありますが、その場合でも、不動産を所有して賃貸することだけを専門にした子会社に売却したうえで賃貸します。

各戸を購入するのは、一般の個人です。賃貸または自分で居住するわけですが、不動産民事会社という導管体会社が簡単につくれるので、相続や節税のために会社所有とし、賃借して居住することもよくあります。



<第1回>建物がうまくいけばすべてうまくいく!
<第2回>資産としての不動産
<第3回>“門”の内と外
<第4回>ノテール事務所
<第5回>ゴルフ場開発の資金は別荘地売却で
<第6回>Habitat indigne(「不適切な住宅」)と logement indécents
<第7回>不動産店舗取引の3つのキーワード「mur(ミュール)」「Bail(バイユ)」「Fonds(フォン)」
<第8回>リバースモーゲージとは似て非なる「ヴィアジェ」の話
<第9回>分業で行われるフランスの新規住宅供給
<第10回>開発・分譲で利用される「将来完成する状態での売却」とは?
<第11回>フランスの歴史的文化財(monument historique)
<第12回>賃貸収入の税控除と賃貸制度のしくみ
<第13回>固定資産税とは異なる「不動産税」の考え方
<第14回>老後資産の主役は「不動産」
<第15回>不動産の特徴を享受できる“SCPI”

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