世界の不動産事情

小林 由美氏 

東京都生まれ。1975年東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行に女性初のエコノミストとして入社。長銀を退職後、スタンフォード大学でMBA取得。1982年ウォール街で日本人初の証券アナリストとしてペインウェバー・ミッチェルハッチンスに入社。1985年経営コンサルティング会社JSAに参加後、ベンチャーキャピタル投資やM&A、不動産開発などの業務を行い、現在にいたる。株式会社ジャングル 社外取締役。 著書に『超・格差社会アメリカの真実」(日経BP社)、『超一極集中社会アメリカの暴走』(新潮社) 他。

小林 由美氏

2018年12月10日公開 

【新連載】サンフランシスコの住宅価格(米国ベイエリアの不動産事情<第1回>)

世界中で最も住みやすい場所を探したら、サンフランシスコ地域はトップクラスに入るでしょう。気候は温暖で風光明媚。明るくて空は澄み渡り、アウトドア・レジャーが盛ん。自由な雰囲気に満ちていて文化水準は高い。住民の圧倒的多数は移民1世・2世なので古くからの因習も乏しく、地域に溶け込むのは容易。世界中から多くの人が集まってくるのも頷けます。

おかげで住宅価格は上がり続け、サンフランシスコの家賃は世界でもトップ水準になってしまいました。香港の不動産価格が高いことは昔から知られていましたが、今やサンフランシスコはニューヨークやパリ・ロンドンを抜いて、香港と1位を争う水準です(図1)。因みに東京は主要都市の中では7位で、シンガポールよりは安いけれど上海よりは高いという水準です。

図 1.2ベッドルームのアパート賃料が高い都市(2018年、月間家賃)


家賃が高いということは、住宅価格も高いということです。図2はサンフランシスコ・ベイエリアの住宅市場の推移です。住宅価格の中央値は、5年前の2013年には80万ドル(9,000万円)だったのが、2018年には137万ドル(1億5千万円)と70%以上上昇しました。この価格はコンドミニアムも含むので、郊外で平均的な一戸建て住宅を買おうとしたら200万ドル(= 2憶3千万円)、数軒がつながったタウンハウスやコンドミニアムでも130万ドル(1億5千万円前後)は覚悟しなければなりません。

図 2.サンフランシスコ・ベイエリアの住宅価格と販売戸数推移
(2013~2018年、9月から8月の12か月毎)


それでも販売戸数は年間1万2千前後で横ばい。市場滞留期間(販売までの日数)は2~3週間ですから、かなり活発な市場です。

でも住宅価格が上昇しているのはサンフランシスコだけではありません。全米で上昇してきました。図3は住宅価格指数の全米平均(= ブルーの折れ線グラフ)とサンフランシスコ近辺(= ピンクの折れ線グラフ)、そして消費者物価指数(= 緑の折れ線グラフ)の推移です。指数は1982-84年の平均を100として、1975年から最新の数字までを示しています。

図 3. アメリカの住宅価格指数と消費者物価指数(1982-84年の平均を100として、1975年~2018年)


いずれも上昇を続けてきましたが、目を引くのは2007年をピークにした住宅バブルとその崩壊過程です。2002年から住宅価格が急騰し始めて、全米平均指数は5年間で217から324まで1.5倍に上がりました。その後バブルは弾けて、2007年から5年間で324から267まで18%下がり、バブルのスタート時期に近い水準に戻りました。でも大不況が底をつくやいなや住宅価格は再び急上昇に転じて、昨年2017年にはバブル期の水準を越えました。今回の急上昇は、今一段落し始めています。

その間消費者物価指数は着実に上昇してきましたが、82~84年の水準に比較して245と2.5倍弱。それに対して住宅価格は344と3.5倍弱ですから、住宅価格は際立って上昇したことが分かります。そして平均的な給与水準は90年頃から実質横ばい、つまり物価水準程度にしか上がっていませんから、住宅費の負担が増えていることは確かです。因みに住宅ローンを借りる際には、毎年の住宅費(ローンの返済額+固定資産税+住宅保険)が年収の4割以下というのが目安になっています。

興味深いのは、サンフランシスコ近辺の住宅は住宅バブルの影響が薄かったことです。2001年にいわゆるドットコム・バブル (= .com) が弾けてシリコンバレーでは失業者が急増し、全米で住宅バブルが隆盛を極めていた時期も、住宅価格は低迷が続きました。それでも横ばいで、実感するほどの下落はありませんでした。2010年代になると、シリコンバレーで誕生したグーグルやフェイスブックなどが新たな情報革命を牽引し、サンフランシスコは再び活況を取り戻して、現在の高水準に至っています。

筆者は1980年に留学して以来、ニューヨークに住んだ3年弱を除いて、40年近くサンフランシスコ近辺で暮らしてきました。最初に足を踏み入れたのがこの地域で、そこでの風景や経験は映画やテレビで見ていたアメリカの姿に近かったので、これがアメリカなんだと実感しました。期待通り幸せいっぱいで、アメリカが大好きになりました。だから当初の予定だった2年の留学が終わった時には、そのままアメリカで暮らし続けることに何の躊躇いもありませんでした。

その後20年を経る間に、サンフランシスコ近辺は世界的に見ても極めて稀な特殊な地域であり、ハリウッドがそれまでに描き出してきたアメリカ像はかなり一面的だったり、あるいは虚像に過ぎなかったり、といったことを理解しました。それでも住めば都。頭痛の種は尽きなくても、興味深い種も尽きません。そんな日常生活を通して見聞きし、経験したり感じたりしてきたことをお伝えしたいと思います。


<第1回>サンフランシスコの住宅価格
<第2回>サンフランシスコ・ベイエリア
<第3回>アメリカの人口分布
<最終回>プロフェッショナル 対 ネット・ブローカー 対 情報システム・ブローカー?


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