世界の不動産事情

広岡 裕児氏 

1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。
パリ第三大学留学後、フランス在住。シンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。またフリージャーナリストとして著書『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書) 他。

広岡 裕児氏

2018年12月10日公開 

Habitat indigne(「不適切な住宅」)と logement indécents(フランスの不動産事情<第6回>)

フランス第2の都会マルセイユで、老朽化した隣接建物2棟が崩壊し8人が死亡する事故が起きました。建物に隙間がなく壁が共用になっているので、倒壊の危険防止と救助活動の安全のためすぐ横の3棟も人工的に壊されました。

老朽化や衛生面の劣化で荒廃した建物は、市長が改善命令、除去命令を出し、場合によっては行政代執行することになっていますが、規則があってもなかなか実行されていないのが現状です。事故が起きたところは、あまり観光客がいかないような地区でしたが、問題のある建物は、立派な市街でもときどき見かけられます。

当たり前の話ですが、いくら地震がなくても、時が経てば建物の堅牢さは損なわれ不衛生にもなります。改善命令までいかなくても、そもそも築200年などというものですから、外観や構造はしっかりしていても、屋根の防水や水回りの悪さなどで、かなりの大規模修理が必要なケースはよくあります。

これは、法令でいう「不適切な住宅」(Habitat indigne)ですが、それとは別にlogement indécentsという概念もあります。「品位のない住宅」 と訳されていますが、趣味の問題ではなくて、入居者の安全、健康リスクがなく人間らしい生活ができるかどうかということです。建築基準とは別で、建物・共有部分の状態と各区画の両方が対象です。

区画については、水道、窓、換気、電気、暖房、そして広さ(最低9㎡)天井高(2.20m)、鉛・アスベスト、湿気ほか衛生上の問題などです。「快適さ」とは別なので、セントラルヒーティングや風呂シャワーはなくてもいいですが、個別暖房や温水付きの水道施設は必要です。天井高が低い部分は住居可能面積として計算されないのですが、規則が施行されたのが、16年前で、それより前は賃貸されていた広さの足りない屋根が斜めになった屋根裏部屋を投資用になどと勧められたケースがありました。幸い、事前にご相談を受けたので、購入なさいませんでしたが。


<第1回>建物がうまくいけばすべてうまくいく!
<第2回>資産としての不動産
<第3回>“門”の内と外
<第4回>ノテール事務所
<第5回>ゴルフ場開発の資金は別荘地売却で
<第6回>Habitat indigne(「不適切な住宅」)と logement indécents
<第7回>不動産店舗取引の3つのキーワード「mur(ミュール)」「Bail(バイユ)」「Fonds(フォン)」
<第8回>リバースモーゲージとは似て非なる「ヴィアジェ」の話
<第9回>分業で行われるフランスの新規住宅供給
<第10回>開発・分譲で利用される「将来完成する状態での売却」とは?
<第11回>フランスの歴史的文化財(monument historique)
<第12回>賃貸収入の税控除と賃貸制度のしくみ
<第13回>固定資産税とは異なる「不動産税」の考え方
<第14回>老後資産の主役は「不動産」
<第15回>不動産の特徴を享受できる“SCPI”

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