不動産コンサルティング技能試験

学 習 方 法

出題範囲と学習上の留意点

不動産コンサルティング技能試験の受験のための「学習すべき範囲」と「学習上の留意点」は以下のとおりです。

01 事業・実務

 不動産コンサルティング業務は、「不動産に関する専門的知識・技能を活用し、公正かつ客観的な立場から、不動産の利用、取得、処分、管理、事業経営及び投資等について、不動産の物件・市場等の調査・分析等をもとに、依頼者が最善の選択や意思決定を行えるように企画、調整し、提案する業務」です。
 このことから[事業]・[実務] の科目では、不動産取引に関する専門知識だけでなく不動産を取り巻く環境を分析する能力および事業計画能力、企画提案能力などが要求され、さらには様々な不動産の開発・活用手法をはじめ、不動産投資や資産の組み換え、不動産の証券化、相続対策、既存建物の有効活用に関連する様々な提案などに関する幅広い知識が必要となります。また、依頼者との会話の中で依頼の動機・目的や背景、資産状況、家族関係等をヒアリングし的確に把握することも重要なポイントとなります。
 [事業]・[実務] の主なポイントは次のとおりです。

 [事業] については、不動産コンサルティング技能登録制度や関連する法令・業務に関する最近の動きをはじめ、不動産コンサルティングの相談受付から企画提案書の提出に至る一連の作業、すなわち相談受付、業務委託契約、調査、事業構想の策定、資金調達、事業収支、企画提案書等に関する実践的な知識が求められます。
また、個別の事業手法や関連業務に関する基礎的知識も必要です。具体的な項目の例としては事業受託方式、等価交換事業・固定資産の交換、定期借地権・定期借家権、テナント計画、建物の設計・施工、賃貸管理、不動産の証券化、不動産投資分析、CRE戦略、相続対策提案に関連する項目(背景、任意後見・民事信託やプライベート・カンパニー等の制度の活用)、既存建物の課題解決に関する項目(建替え、リノベーション・コンバージョン等)などがあります。特に少子高齢社会の進展や空き家の増加及び既存住宅流通の活性化等の政策などにも関連して、相続対策提案や既存建物の活用にも注目が集まっています。

 [実務] は、不動産コンサルティングの実務知識に関する内容です。具体的には土地有効活用コンサルティング、定期借地権・定期借家権のコンサルティング、相続対策提案、不動産の証券化、既存建物に関するコンサルティング等、不動産コンサルティングに係る応用事例について依頼者ニーズに応えるために必要な法律、税制、建築を含めた総合的な知識と能力の活用が求められる問題です。

02 経  済

 [経済] については、「不動産市場に与える影響」という観点から「現に動いている経済・動きつつある経済」の動向を日々のマスコミ報道や公的な公表資料などから把握する素養(経済センス)が必要です。公認 不動産コンサルティングマスターには不動産の物件・市場等の調査・分析等を行う際に「不動産を取り巻く経済情勢の把握、マーケティングに関する知識およびそれらの分析能力」が求められるからです。依頼者との会話でも経済や金融に関する話題が出てくることはよくあり、これに対して相応の対応ができないと依頼者からの信頼を得て業務を受託することも難しくなるでしょう。
 具体的には、「需要と供給の関係」を始めとする経済の基本的な仕組み、経済を動かす主体や要因、経済動向を把握し判断するための代表的な経済指標や公的公表資料、国の経済財政政策や実行状況、土地を始めとする不動産の市場動向、対外不動産投資を含む不動産投資市場の動向などに関する理解とその活用が求められます。
 特に、最近の重要な事項としては人口減少社会や高齢化、産業構造の変化、第4次産業革命への対応(AIやブロックチェーン等)、日本の財政状況や財政改革に向けた政策、世界経済からの影響の高まり・国際連動性、ESG投資などがあげられます。

03 金  融

 [金融] については、二つの留意すべき側面があります。
 一つは、「金融動向が不動産市場に与える影響」という側面からの見方であり、経済の一部として「現に動いている金融・動きつつある金融」の動向を日々のマスコミ報道や公的な公表資料などから把握する素養が必要です。各国の中央銀行などによる金融緩和や引締めは不動産市場に大きく影響することとなります。
 具体的には、金融市場の基本的な仕組み(担い手、金利の決まり方)、金融市場動向(各種の金融指標など)、日本銀行を中心とした金融政策の内容、金利水準や株価とその動向、為替水準の動向(円高・円安)と日本経済への影響、不動産金融(ファイナンス)に関する知識とその活用などです。
 もう一つは、投資対象資産としての不動産と金融資産との比較検討(投資選好、ポートフォリオ的視点)の側面です。
 具体的には、国債を含む金融商品の概要、金融商品のリスクとリターン、利用者保護のルール等に関する知識とその活用です。
 また、経済とも関連しますが、金融市場の急速なグローバル化や金融自由化、IT技術等の進歩によって、世界の為替市場などを通じた資金取引高は飛躍的に拡大しており、いわゆる「マネー経済」が世界全体や各国経済にも多大な影響を与えている状況なども理解しておく必要があります。
 経済と金融に関する、最近の市場動向や特徴・背景などに関しては、内閣府の「経済財政白書」や「世界経済の潮流」、国土交通省の「土地白書」、日本銀行の「展望リポート」や「短観」などの公的公表資料の内容を理解しておく必要があります。

04 税  制

 [税制] については、税理士などの専門資格士の分野ではありますが、専門家を差配する立場となる公認 不動産コンサルティングマスターは基本的な構造・内容を理解しておく必要があります。
 具体的には、不動産の取得・保有・運用・売却に係る基本的な税制の概要、不動産の有効活用事業等に関連する税制、不動産などの財産評価、各種の特例・租税特別措置等の概要(等価交換、固定資産の交換、事業用資産の買換え、借地権)、その他では不動産証券化の税務(運用者・投資家)など不動産コンサルティングに関連する税務の知識が必要です。また、個人だけでなく法人に関する税務の知識も必要となります。各種の特例や特別措置については、適用期間や変更点、適用要件を整理しておく必要があります。
 特に相続対策提案のニーズが増しており相続・贈与に係る税務の理解は必要不可欠になっています。

05 建  築

 [建築] については、都市計画法・建築基準法等の法的知識だけでなく、建築企画から設計・施工・建物維持管理等に関する知識が必要となります。
 具体的には、事業企画の段階で建築に関する法令規制の知識及び建築に関する一連の知識が必要であり、事業計画を確定させる段階では設計・施工から竣工・管理までの各段階における建築の基礎的知識およびその活用が求められます。
 また、賃貸不動産の入居率アップに向けた空室対策、既存不動産ストック活用のためのリノベーションやコンバージョン、建築物に関する環境保全や省エネ対応の促進、建築物や設備に関する法適合性の確保や安全性(防災、耐震改修)なども今日的な問題として押えておく必要があります。
 事業・実務の項目でも触れていますが既存住宅の建物状況調査やリフォーム、建物のリノベーションやコンバージョンなどは不動産流通の活性化に関連する周辺業務としても注目されており、建築士などとのコミュニケーションを取れる知識を押えておくことが重要です。

06 法  律

 [法律] については、単なる法律的知識を修得するというものだけではなく、不動産コンサルティングを行っていく上で、現実のプロジェクト(目的)に対してどのような法律判断を必要とするのか、その知識と具体的な活用の仕方が求められます。つまり、それ相応の専門家としての知識が要求されることとなります。
 不動産コンサルティングを行うにあたっては二つの側面があります。
 一つは、不動産の有効活用・開発に係る公法的規制の側面です。
 具体的には、不動産に係る公的規制(都市計画法、建築基準法など)に関する知識及びその活用が求められます。また、東日本大震災などでの被害を受けて防災や災害復興等に関する法令、人口減少社会を反映してのコンパクトシティへの再編等に関する法令、省エネに関する法令などの新設や改正が行われており、その概要を理解しておく必要があります。
 もう一つは、財産としての不動産の管理・運用・処分・承継に係る私法的側面です。
 具体的には、不動産の売買や賃貸に関連する法律(民法、消費者契約法、借地借家法など)に関する知識とその活用が求められます。また、相続や遺言、成年後見制度などに関する身分法の分野(民法など)に関する理解も必要となります。これら以外にも、民事執行法などその他の民事法の一部や、会社法など法人に関する法律の知識も素養として必要です。

●令和7年の出題範囲はこちら

●過去問題はこちら
令和5年度試験抜粋:問題見本(択一式)
令和5年度試験抜粋:問題見本(記述式)

学習方法

AまたはBで基礎を固めた後、Cのスキルアップセミナーで実践力を養うことをおすすめします。

不動産に関する実務はもちろん、「事業・実務」「税制」「建築・公法」「私法」「経済・金融」の各分野について、不動産コンサルティングを行うために必要な知識を学習していただきます。
これから不動産コンサルティング業務を始めたいという方だけでなく、不動産業務の高度な展開を目指す方の勉強にもなります。
また、不動産コンサルティングに必要な基礎的知識の学習ができますので、不動産コンサルティング技能試験を受験する方にも役立ちます。

不動産コンサルティング入門研修インターネット通信講座

不動産業に就業しているすべての宅地建物取引士を対象に実施するもので、不動産コンサルティング業務の基礎的な知識・技能の修得を図ることを目的としています。

■講座の内容
 ・解説動画 事業実務:記述式過去問題解説
その他の分野:重点ポイント解説(合計約8時間程度)
 ・演習問題 正誤式210問、四肢択⼀式120問、各分野にまたがる総合問題
 ・受講期間内、繰り返し復習が可能。

■主催:(公財)不動産流通推進センター

入門研修の詳細はこちら
不動産コンサルティング・基礎教育

■講座の内容
令和7年度の基礎教育は、【事業・実務】、【建築・法律】、【税制・経済金融】の3コースの講義動画を、下記期間内に視聴する形式となります。受講期間内、繰り返し復習が可能です。
・「不動産コンサルティング基本テキスト」を使用した講義動画
・再生時間 各コース約300分
 事業・実務:約50分×6時限
 建築・法律:約50分×6時限
 税制・経済金融:約50分×6時限
・受講期間内、繰り返し復習が可能

■主催:不動産コンサルティング各地方協議会

基礎教育の詳細はこちら

上記Aの通信講座を9月30日までに修了した方、あるいは上記 Bの基礎教育を受講した方は、具体的なコンサルティングの考え方・進め方を学ぶ「スキルアップセミナー(半日集合研修)」の受講ができます。
※この講座の受講料は8,000円(税込)です。

スキルアップセミナー

■講座の内容
・総合問題の解説および周辺知識の整理
・事業・実務の記述式過去問題の解説
・経済分野の過去問題の傾向

■実施スケジュール

9⽉下旬より、東京開催(2回)・⼤阪開催(1回)を予定しています。
いずれもオンライン型(Zoomウェビナー)も同時開催いたします。
※後⽇配信はありません。

■主催:(公財)不動産流通推進センター

スキルアップセミナーの詳細はこちら

参考図書一覧

不動産コンサルティング技能試験を受験するにあたって、参考となる図書の一部を以下にあげておきます。

令和7年度 不動産コンサルティング基本テキスト(3冊セット )

公益財団法人不動産流通推進センター編著・発行
定価 7,000円(税込)
【ご注意】
本書は「不動産コンサルティング⼊⾨研修インターネット通信講座」・
「不動産コンサルティング基礎教育」のテキストです。
上記の講座に申し込まれる⽅は、ご購⼊いただく必要はありません。
    

購 入

令和7年(2025年)度版 背景・趣旨がよくわかる 改正点付き 不動産税制の手引

公益財団法人不動産流通推進センター編著・発行
定価 900円(税込)

購 入

令和7年(2025年)度版 背景・趣旨がよくわかる不動産関連 法令改正のポイント

公益財団法人不動産流通推進センター編著・発行
定価 900円(税込)

購 入

2025年版 不動産コンサル過去問5年間

住宅新報出版 4,950円(税込)
住宅新報出版のホームページより購入できます。

購 入

※ 不動産コンサルティング技能試験は、必ずしも上記の参考図書だけから出題されるものではありません。

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