世界の不動産事情

広岡 裕児氏 

1954年、川崎市生まれ。大阪外国語大学フランス語科卒。
パリ第三大学留学後、フランス在住。シンクタンクの一員として、パリ郊外の自治体プロジェクトをはじめ、さまざまな業務・研究報告・通訳・翻訳に携わる。またフリージャーナリストとして著書『EU騒乱―テロと右傾化の次に来るもの』(新潮選書) 他。

広岡 裕児氏

2018年08月10日公開 

“門”の内と外(フランスの不動産事情<第3回>)

サッカーW杯でフランス優勝、試合が終わったのは午後8時頃、まだ日没までには間がありましたが、シャンゼリゼだけでなく、パリ中いたるところで人が溢れて交通マヒになりました。その興奮から一転、街はすっかりバカンスモードです。こんどは行き帰りの車で高速道路が渋滞になっています。

ところで、パリの出口には「Porte(ポルト)」という名がついています。門という意味で城壁都市の名残です。一部のリゾートで発達した都市は例外として、フランスの都市は、基本的に現在旧市街の中心といわれるところから始まり、時代とともに古い城壁が壊され郊外を飲み込んで新しい城壁が作られて拡大してきました。パリの地図でBoulevardとある大通りは古い城壁の跡で、結ぶと環状になり、市街の発展の歴史がよくわかります。パリにも一戸建てはありますが、ほとんどがまだ郊外だった頃の週末の別荘の名残です。

郊外に庭付き住宅をもって都心まで通うのは英国式ライフスタイルで、フランスは都市の中の集合住宅に住み、週末に郊外で自然や庭を楽しむのが理想とされています。

住宅地と商業地の用途地域分けはなく、地域ごとに同一の建物の中での容積率として商業用途と住居用途の割合が表現されます。

都市の膨張でパリ市と他県になる市街地も見分けがつかなくなっていますが、いまでも「門」の内と外では、不動産価格に厳然とした差があります。「外」は、環境も住人も違い、売却するにも苦労します。反対に内側は政財界の有力者も多く投資しており、供給調整や美観整備もされ、安定した投資商品となっています。

再開発や副都心をつくったりするときも、実際に壁をつくるわけではありませんが、まるで城壁で囲まれているかのような感覚で完結させます。ですから境界の内と外では大違いです。バブルの頃には、残念ながら、日本の方がパリや副都心ラデファンスのすぐ近くの新しい商業ビルに投資して、事務所空室60万から100万㎡といわれた不況の波をまともにくらってしまいました。

もちろん、内側の市街地だからといっても、地区による生活環境=資産価値の差はあります。とくに、もともと城壁都市は極めてコンパクトなので、東京ならいくつも駅が離れているような違いが道路一つで起きています。「すぐ隣だから」といって同じような価格で買ったら大間違いです。




<第1回>建物がうまくいけばすべてうまくいく!
<第2回>資産としての不動産
<第3回>“門”の内と外
<第4回>ノテール事務所
<第5回>ゴルフ場開発の資金は別荘地売却で
<第6回>Habitat indigne(「不適切な住宅」)と logement indécents
<第7回>不動産店舗取引の3つのキーワード「mur(ミュール)」「Bail(バイユ)」「Fonds(フォン)」
<第8回>リバースモーゲージとは似て非なる「ヴィアジェ」の話
<第9回>分業で行われるフランスの新規住宅供給
<第10回>開発・分譲で利用される「将来完成する状態での売却」とは?
<第11回>フランスの歴史的文化財(monument historique)
<第12回>賃貸収入の税控除と賃貸制度のしくみ
<第13回>固定資産税とは異なる「不動産税」の考え方
<第14回>老後資産の主役は「不動産」
<第15回>不動産の特徴を享受できる“SCPI”

世界の不動産事情

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