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2304-B-0319
売買契約における決済期限の延長合意に伴い、融資特約に定めた融資解除期日も延長されるか。

 売買契約書に住宅ローン特約を約定したが、買主の資金手当てが遅れることになり、売主と合意のうえで、決済期日を延長した。その後、買主の融資承認が得られず、買主は融資不承認による契約解除を求めている。

事実関係

 当社は売買の媒介業者である。4か月前に既存マンション売買の媒介をした。買主は住宅ローン融資を受けるため、売買契約書に住宅ローン特約(融資解除特約)を約定し、特約に伴う契約解除期日を2か月後とし、決済期日は3か月後とした。売買契約締結後、融資解除期日の1週間前に買主から住宅ローン以外の資金手当てが遅れるので決済期日を1か月延長してほしい旨の連絡を受け、売主に打診したところ、承諾を得られた。当社は、契約書の決済期日が延長になるため、決済期日延長の覚書を作成し、売主、買主ともに署名捺印し合意を得た。また、当社は、同時期に買主の融資金融機関に融資承認見込みの状況を確認したところ、審査中であることを告げられたが、融資担当者の話しぶりからは融資は承認されるとの感触を得た。
 延長した決済期日直前になり、買主から、金融機関からの住宅ローンの融資が不承認となったので売買契約を解除したいとの申出があった。当社は、買主に対し、融資特約の解除期日は過ぎており、残代金支払いの履行ができない場合は、売主からの契約解除に伴い、契約書に定めた違約金の支払いが発生する旨を伝えた。買主は、決済期日の延長を売主と合意しており、延長合意に伴い融資解除期日も延長されていると主張し、契約の白紙解除を求めている。

質 問

 買主からの決済期日延長の申入れを売主も合意した場合、融資解除期日も延長されるのか。

回 答

1.  結 論
 売主との明確な融資解除期日延長の合意がない限り、決済期日延長の合意に伴って融資解除期日が延長されるものではないと解する。
2.  理 由
 不動産の売買において、買主の多くが住宅ローンを利用している。買主が住宅ローンを利用する場合、売買契約書に住宅ローン特約(融資解除特約)を約定する。融資予定の金融機関から融資承認が得られないときは、買主は、契約の白紙解除ができる内容である。売買契約は初めからなかったものとして、買主の支払った手付金は返還される。住宅ローン特約による契約解除には、「解除条件型」と「解除権留保型」がある。別途契約で定めた解除期日までに住宅ローン融資の承認が金融機関から得られなければ買主の意思表示とは関係なく契約が解除されるのが「解除条件型」である。金融機関から融資承認が得られなくても、別途、買主の資金手当が可能で決済できる見込みがあれば買主の判断で必ずしも契約を解除しないことができ、また、解除期日までに解除の意思を示し、契約解除もできるのが「解除権留保型」である。買主の意思によって契約の履行または解除権の行使をすることになる。通常の不動産取引の場合、住宅ローン特約は解除権留保型が多い。解除期日までに金融機関の承認が得られていなくても審査途中であるが融資が確実な場合、当初の融資申込み金融機関とは別の金融機関の融資が受けられるのが可能なときや他からの資金手当てが得られる場合は契約解除しないことも考えられる。
 売買契約後、買主の事情で決済日を延長することはよくあることである。しかし、決済日を延長したからといって、融資特約の解除期日の延長とは連動しない。「買主の都合により決済期限が延長された場合に、融資解除特約の期限も同様に延長されるかどうかについては、改めて、売主から明確な合意があったといえる場合でなければ、融資解除特約については効力を失うとみるのが相当」とし、「決済期限の延長については、売主は合意しているものの、融資解除特約については特に承諾を与えているとみることはできない。融資解除特約については、決済期限が延期された際に、その効力を失ったと解する」とした裁判例がある(【参照判例】参照)。
 媒介業者は、買主がローンを利用するときは重要事項説明書及び契約書に宅建業者の売買代金の金銭の貸借のあっせんの有無にかかわらず住宅ローン特約を記載する必要がある(宅建業法第35条、同法第37条、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方・第35条第1項第12号関係)。この場合、買主が金融機関から融資の承認が得られないときの解除期日を記載することが望ましいであろう。期日を定めない場合、売主にとっては決済時期までに決済できるか否かが不安定になる。
 なお、媒介業者は、売主または買主の要望で決済期日を延長するときは、明確な合意を示すために売主と買主間で決済日変更(延長)の覚書を取り交わすことにより、紛争防止になる。その際、買主が、融資が得られなくても親からの贈与や借入れ等で決済できるのであれば必要ないが、買主の融資承認が得られていないときは、ローン特約に付随する解除期日延長の覚書を取り交しておくべきであろう。

参照条文

 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
   宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
    ~七 (略)
     契約の解除に関する事項
    ~十一
    二 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容及び当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
    三・十四 (略)
  ~⑨ (略)
 同法第37条(書面の交付)
   宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
    ~六 (略)
     契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
     (略))
     代金又は交換差金についての金銭の貸借のあっせんに関する定めがある場合においては、当該あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置
    ~十二 (略))
  〜⑤ (略)
 宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方・第35条第1項第12号関係
  1  (略)
  2  ローン不成立等の場合について
 金融機関との金銭消費貸借に関する保証委託契約が成立しないとき又は金融機関の融資が認められないときは売主又は買主は売買契約を解除することができる旨、及び解除権の行使が認められる期限を設定する場合にはその旨を説明する。
 また、売買契約を解除したときは、売主は手付又は代金の一部として受領した金銭を無利息で買主に返還することとする。

参照判例

 東京地裁令和元年6月11日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 融資解除特約は、買主が金融機関から融資の承諾が得られなかった場合に、買主が何らペナルティを支払うことなく契約を解除することができるという特約であり、融資解除特約を行使されると、売主は売却の機会を失い、別の顧客を見つけなければならなくなるのであり、融資解除特約が売主にとって不利益な特約であることは明らかである。
 そうすると、本件のように、買主の都合により決済期限が延長された場合に、融資解除特約の期限も同様に延長されるかどうかについては、改めて、売主から明確な合意があったといえる場合でなければ、融資解除特約については効力を失うとみるのが相当である。特に本件のように、決済期限が1度のみならず、2度、3度と延長されている場合は、このように解するのでなければ、売主が一方的な不利益を被り続けることになる。
 これを本件についてみれば、決済期限の延長については、売主は合意しているものの、融資解除特約については特に承諾を与えているとみることはできないし、融資解除特約についても延期することを前提にした行動を売主及び媒介業者がとっていたと認めることもできない。したがって、本件においては、融資解除特約については、決済期限が2月〇〇日から3月〇〇日に延期された際に、その効力を失ったと解するのが相当である。

監修者のコメント

 決済期限が延長された場合に融資解除特約の期限も延長されことになるかについては、法理論的には、たしかに回答あるいは判例の言うとおり、両者は連動するものではない。しかし、このケースの買主が同時に延長されると考えたことを一概に責めることはできない。融資解除期限も決済期限と密接に結びついていると考えるのは不動産取引の素人であればやむを得ないことである。本ケースでは、決済期限の延長の覚書を媒介業者が作成したというのであるから、その際、融資解除期限までは延長されないことを覚書中に記載するか、そこまでしなくても、その旨を買主に説明して確認をすべきであった。このようなトラブルを防止するために、プロの宅建業者を介在させるメリットがあることを宅建業者自ら認識して仕事をすべきである。
 なお、本ケースとは別の問題であるが、融資に関しては、回答中にも説明がある「解除条件型」と「解除権留保型」の区別について、媒介業者は明確に認識して、依頼者に的確に指導・助言すべきである。「解除条件型」のときはあまり問題にならないが、「解除権留保型」のときは、融資が受けられなかった場合、買主は○月○日まで解除することができるというのであるから、その○月○日までに解除権の行使をしないで、期日を経過してしまうと、もはや解除ができなくなるからである。その場合は、買主が融資を受けられないので通常は代金を支払えず、債務不履行に基づく違約金などを支払わざるを得ないという踏んだり蹴ったりの事態になることもあるからである。この融資特約による解除期限の注意を怠ったとして、媒介業者の善管注意義務違反を問われ、損害賠償責任を負わされた裁判例もある。

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