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2208-R-0252
土地の賃借人が下水道へ接続することの賃貸人の承諾義務の有無。

 公共下水道の供用開始地域内の借地権者が、公共下水道への接続のための借地の掘削と設備設置及び水洗トイレの改造を賃貸人に要求しているが、賃貸人は長年承諾を拒んでいる。

事実関係

 当社は売買の媒介業者である。土地の賃借人から借地権付建物の売却を依頼された。賃借人は、20年前から賃借していたが、転勤のため売却をすることになった。土地の賃貸借契約の内容を確認するとともに、土地賃貸人の譲渡承諾を得られることも確認できた。権利関係や現況の設備調査をしたところ、当該地域は数年前に公共下水が整備されているが、賃借人の建物は公共下水に接続していないことが判明した。賃借人に事情を聞くと、賃貸人から土地の掘削承諾が得られなかったため、いまだにトイレは汲み取り式であり、生活排水と雨水は、建築当時に敷地内に枡を設置して浸透させている状態である。この地域はもともと農地が多かったが、宅地化も進み、付近一帯のほとんどの住宅が公共下水に接続されている。下水への接続は、生活する上の重要なインフラであり、このままの状態では買主を探索することが難しい。

質 問

 借地権者である土地の賃借人は、賃貸人に対して、賃借人の下水を公共下水に接続することを要求することができるか。

回 答

1.  結 論
 公共下水道の供用が開始された地域においては、建物の所有者である借地権者に排水設備を設置して公共下水に接続する義務があり、特段の事情のない限り、賃貸人は、賃借人が行う設置工事を承諾する義務がある。
2.  理 由
 人の社会生活において、電気、ガスとともに上下水道等のライフラインは、必要不可欠のものである。特に下水道は整備が遅れていたが、徐々に公共下水が敷設され、全国平均の下水道普及率は約80%になっている(令和2年度末(注))。都市部では、90%を超えているところが多い。公共下水道の普及により、衛生的な生活が確保されるとともに、河川や海の水質保全につながっている。半面、普及率がかなり低い市町村も未だ存在する。
 公共下水道の供用が開始された地域においては、土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠(きょ)その他の排水施設を設置しなければならないとされており、設置を義務付けられている者は、建築物の敷地である土地では、その建築物の所有者であり、建築物の敷地でない土地は、その土地の所有者である(下水道法第10条第1項)。建物所有目的で土地を賃貸借している場合は、建物の所有者である土地賃借人に設置義務がある。土地が土地賃貸人の所有であっても、排水設備を設置することができる(同法第11条第1項、第3項)。
 さらに、公共下水道が終末処理場で下水処理を行う処理区域内に存する建物がくみ取り便所であるときは、その便所を水洗便所に改造しなければならない。改造するまでの期間は、当該地域の下水処理が開始されてから3年以内とされており、改造されないときは、公共下水道管理者は、水洗便所に改造すべきことを違反者に命ずることができる(同法第11条の3)。
 したがって、賃貸人は、賃借人に対して、公共下水道への接続および水洗便所の改造と整備を設けるための土地の掘削等を認めなくてはならない。土地の賃貸借は、賃貸人が、賃貸物である土地の使用収益を賃借人に約することで成立する(民法第601条)。裁判例では、「土地に排水設備等を設置することは、土地の利用に特別の便益を与えるというものではなく、むしろ、建物の所有を目的とする借地契約に基づく土地の通常の利用上相当なもの」とし、「賃貸人において、本件土地に排水設備等を設置することにより回復し難い著しい損害を被るなど特段の事情がない限り、その設置に協力すべきものである。賃貸人は、賃借人が本件土地につき排水工事及び水洗化設備の新設工事をするに当たり、これを承諾し、かつ、賃借人が行う工事の施工を妨害してはならない」というものがある(【参照判例】参照)。
 (注)公益社団法人 日本下水道協会調べ

参照条文

 民法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 下水道法第1条(この法律の目的)
   この法律は、流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項並びに公共下水道、流域下水道及び都市下水路の設置その他の管理の基準等を定めて、下水道の整備を図り、もつて都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、あわせて公共用水域の水質の保全に資することを目的とする。
 同法第10条(排水設備の設置等)
   公共下水道の供用が開始された場合においては、当該公共下水道の排水区域内の土地の所有者、使用者又は占有者は、遅滞なく、次の区分に従って、その土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管、排水渠その他の排水施設(以下「排水設備」という。)を設置しなければならない。ただし、特別の事情により公共下水道管理者の許可を受けた場合その他政令で定める場合においては、この限りでない。
     建築物の敷地である土地にあっては、当該建築物の所有者
     建築物の敷地でない土地にあっては、当該土地の所有者
   (以下略)
 同法第11条(排水に関する受忍義務等)
   前条第1項の規定により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとつて最も損害の少ない場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。
   (略)
   第1項の規定により他人の土地に排水設備を設置することができる者又は前条第2項の規定により当該排水設備の維持をしなければならない者は、当該排水設備の設置、改築若しくは修繕又は維持をするためやむを得ない必要があるときは、他人の土地を使用することができる。この場合においては、あらかじめその旨を当該土地の占有者に告げなければならない。
   (略)
 同法第11条の3(水洗便所への改造義務等)
   処理区域内においてくみ取便所が設けられている建築物を所有する者は、当該処理区域についての第9条第2項において準用する同条第1項の規定により公示された下水の処理を開始すべき日から3年以内に、その便所を水洗便所(汚水管が公共下水道に連結されたものに限る。以下同じ。)に改造しなければならない。
   (略)
   公共下水道管理者は、第1項の規定に違反している者に対し、相当の期間を定めて、当該くみ取便所を水洗便所に改造すべきことを命ずることができる。ただし、当該建築物が近く除却され、又は移転される予定のものである場合、水洗便所への改造に必要な資金の調達が困難な事情がある場合等当該くみ取便所を水洗便所に改造していないことについて相当の理由があると認められる場合は、この限りでない。
  〜⑥ (略)

参照判例

 東京高裁平成9年9月30日 判タ981号134頁(要旨)
 下水道法による規制、付近の土地の排水設備の設置状況及び本件土地の所在する場所の環境にかんがみると、本件土地につき排水設備等を設置することは、本件土地の利用に特別の便益を与えるというものではなく、むしろ、建物の所有を目的とする本件借地契約に基づく土地の通常の利用上相当なものというべきであるから、賃貸人において、本件土地につき排水設備等を設置することにより回復し難い著しい損害を被るなど特段の事情がない限り、その設置に協力すべきものであると解するのが相当である。そして、認定の事実関係のもとにおいては、賃貸人において、本件土地につき排水設備等を設置することによって回復し難い著しい損害を被るなどの特段の事情があることは認められないから、そうであれば、賃貸人は、賃借人が本件土地につき排水工事及び水洗化設備の新設工事をするに当たり、これを承諾し、かつ、右工事の施工を妨害してはならないものといわなければならない。

監修者のコメント

 土地の賃貸人は、借地権者の建物の水洗トイレへの改造は、ともかく土地の掘削を伴う排水設備の設置は、自己所有の土地に関することであるから、それを承諾するかどうかは自由である、と誤解している地主が少なからずいる。その多くは、悪気はなく、法律的なことの知識の欠如であるので、回答にある下水道法の内容をもって説得することである。
 なお、公共下水道への接続は、借地人の利益になることであり、その設備工事は、当面は借地人がその金額を負担することになるが、その土地自体の利益になることであるので、借地契約が終了する際には、有益費として、土地の価値の増加分について、借地人から貸主(地主)に、償還請求をすることができる(民法第608条第2項)。

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