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2108-R-0237
フリーレント期間のある事業用定期建物賃貸借契約の違約金特約の有効性。

 当社が媒介したフリーレントを条件とする事務所の定期建物賃貸借契約で、賃借人は初回の賃料支払時期から滞納している。賃貸人は債務不履行による契約解除を申し入れた。契約は、賃借人がフリーレント期間及び残存期間の賃料相当分の違約金を支払う旨の約定がある。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介業者である。6か月前に事務所の定期建物賃貸借契約の仲介をした。建物は、最寄駅から徒歩15分、築40年の4階建て商業ビルの4階でエレベータがなく、立地や物件特性条件がよいとはいえない物件である。恒常的に空いている部屋もあるため、賃貸人は、少しでもテナントの稼働を高めるために契約条件を緩め、賃料設定を低めにし、フリーレント期間を設けて募集している。賃貸人は、将来的には建替えを考えている。
 媒介した物件の契約条件は、①期間3年の定期建物賃貸借契約とする②契約後3か月間はフリーレントとする③1年以内の契約解除の場合は、短期解約違約金として敷金3か月分を控除する④賃借人からの中途解約は6か月前予告とし、即時退去の場合は賃料6か月分相当を支払う⑤賃借人の債務不履行による契約解除の場合は、違約金として残存期間の賃料を支払う旨の内容である。
 賃借人が入居後フリーレント期間の3か月を経過した後、4か月目の賃料は支払われなかったため、賃貸人は賃料支払の督促をしたが、それから3か月間、つまり賃料支払時期以降の賃料の支払いがなされず滞納している。賃貸人は、賃借人の賃料不払の債務不履行を理由に契約解除を申し入れ、同時に、上記約定③の敷金からの3か月分の控除、及び⑤の賃料支払義務発生月以降の全期間分(2年9か月)の賃料相当額と遅延損害金を要求している。
 賃借人は、賃借人からの中途解約条項に基づく6か月分を支払い、即退去したいと主張しているが、1年以内の契約解除に伴う3か月分の賃料相当額及び全期間の違約金支払いを拒否している。

質 問

1.  3か月のフリーレントの賃貸借契約において、1年以内の解除の場合にフリーレント期間に相応する賃料3か月分相当の違約金条項は有効か。
2.  事業用の定期建物賃貸借契約において、賃借人の債務不履行を理由とする契約解除の場合、残存期間(相談ケースは全期間)の支払い条項は有効か。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 有効と解される。
 質問2.について ― 事業者間の賃貸借契約は、消費者契約法が適用されず、当該支払条項は有効と解され、また、この程度の金額であれば公序良俗に反することもないと考えられる。
2.  理 由
⑵について
 賃貸借契約におけるフリーレントは、賃貸借の入居初期に1~3か月程度の一定期間、賃借人の賃料支払を免除する条件を付した契約である。フリーレントは、借り手市場を背景にする場合や物件条件が劣っている等の場合に用いられることが多いが、賃貸人には賃借人募集のすそ野を広げ、入居者の確保が期待できるメリットがあり、賃借人にとっては入居時の初期費用が削減できる。一般的に賃貸人は、長期の賃貸経営を期待し、空室の回避と賃料収入の安定を期待している。賃借人が短期で退去されると、賃借人の思惑が外れることになる。そこで、フリーレントのある賃貸借契約の際には、賃借人が短期で契約解除する場合は、フリーレント期間分の賃料を違約金として定めるケースが一般的となっている。賃借人に対する違約金の予定債務の担保として、同額分の敷金を預かり、定められた期間内に賃借人が契約解除した場合には敷金から短期解約違約金として約定額を控除する。
 裁判例では、「契約開始後1年以内の解除がされた場合には、フリーレント期間に相当する3か月分の賃料額を敷金から控除することに理由がないとはいえない」とフリーレント期間の賃料額に相当する短期違約金を認めている(【参照判例①】参照)。
 また、事業用途の定期借家契約において、賃借人が中途解約したときに、退去時から期間満了までの残存期間の賃料相当分を賃借人は賃貸人に対し違約金として支払うことを約定した契約で、「賃貸借契約の約定期間、賃借人が賃貸人に対して約定の賃料等を継続的に支払うことを前提に、その終期前に本件契約を解除する場合には、賃貸人の逸失賃料相当額を損害賠償の内容とすることを合意したものと理解することができ、合意を不合理ということはできず、それ自体、公序良俗に反するとはいえない」として残存期間の支払を認めた裁判例がある。(【参照判例①】参照)。
 しかしながら、事業用普通建物賃貸借契約の裁判例では、上記同様の残存期間分の賃料支払の約定に対して、「約3年2か月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできず、1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効」と、残存期間分全額の支払いは認めず、1年分の支払いのみを認めたものがある(【参照判例②】参照)。
 定期建物賃貸借契約の場合は、原則、約定期間内は賃借人としても中途解約はできず、一定期間の契約継続が前提となっているため、期間分の賃料相当額を違約金とすることが認められる傾向にある。賃借人の中途解約権が留保されていても同様であろう。反面、普通賃貸借契約の場合に、1年分のみしか認めないのは、賃借人の退去があった場合に賃貸人が次の賃借人を募集し、入居させることができる期間を想定しているのであろう。
 なお、裁判例の違約金支払の期間については、定期契約、普通契約ともに目安であり、契約までの経緯や賃料額、その他契約条件、賃貸人及び賃借人の事情等を勘案して判断されることになる。
 また、賃借人が消費者のときは、消費者契約法が適用され、短期解約違約金や中途解約に伴う違約金額についてはおのずと制限される。フリーレントの場合のその期間に見合った短期解約違約金は認められる可能性があるが、中途解約違約金については、定期契約、普通契約であっても多大な残存期間相当の金額の支払いは否定されるであろう。一般的に、賃借人からの中途解約の予告を1~2か月前に約定し、即時解約のときはその期間に相当する違約金の支払により契約解除するのが妥当であろう。

参照条文

 民法第90条(公序良俗)
   公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
 同法第601条(賃貸借)
   賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
 消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
  次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
   当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
   (略)
 消費者契約法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
   消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

参照判例①

 東京地裁平成25年6月25日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 賃貸人と賃借人は、本件契約の締結に当たり、本件契約が少なくとも3年間は継続し、その間、賃借人が賃貸人に対して約定の賃料等を継続的に支払うことを前提に、その終期前に本件契約を解除する場合には、賃貸人の逸失賃料相当額を損害賠償の内容とすることを合意したものと理解することができる。上記の合意を不合理ということはできず、それ自体、公序良俗に反するとはいえない。(中略)
 賃貸人が、賃借人に対し、本件契約において3か月間のフリーレントを認めていることに鑑みれば、契約開始後1年以内の解除がされた場合には、フリーレント期間に相当する3か月分の賃料額を敷金から控除することに理由がないとはいえない。また、契約解除後、本件明渡までの賃料相当損害金の支払義務については、賃借人が本件建物を明け渡さないことによって生ずるものであって違約金と性格を異にする上、その合意内容に不合理なところもない。遅延損害金についても同様である。
 したがって、本件契約における他の損害金に係る合意を考慮しても、違約金の合意が損害金の二重取りであるとか、公序良俗に違反するということはできない。

参照判例②

 東京地裁平成8年8月22日 判タ933号155頁(要旨)
 解約に至った原因が賃借人にあること、賃借人に有利な異例の契約内容になっている部分があることを考慮しても、約3年2か月分の賃料及び共益費相当額の違約金が請求可能な約定は、賃借人に著しく不利であり、賃借人の解約の自由を極端に制約することになるから、その効力を全面的に認めることはできず、1年分の賃料及び共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効と解する。

監修者のコメント

 建物賃貸借契約における違約金条項には、多種多様のものがあり、その有効性は、暴利的で公序良俗(民法第90条)に反するか、信義則(民法第1条第2項)の観点からどうかというように一般条項に照らして判断しなければならない。したがって、機械的に3カ月はどうか、1年分はどうかというだけで判断できるものでもなく、諸般の事情を総合考慮して判断しなければならない。回答掲記の参照判例も、一つの参考として拠り所にはなるが、その結論自体を普遍化することはできないという前提で参考にされたい。

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