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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

2008-B-0278
同じ購入希望者について複数の媒介業者が個別契約条件を交渉した場合、商談成立とならなかった業者は報酬を請求できるか。

 当社より先に同じ顧客の媒介行為をしていた業者があったが、契約条件が調わなかったため売買契約には至らなかった。当社の交渉により売主、買主の条件が合意でき、契約をすることができた。先に交渉した業者は、買主に対して報酬を要求している。

事実関係

 当社は売買の媒介業者である。当社に来訪された住宅購入希望顧客に、条件に合った複数の新築、既存住宅物件を紹介して案内したところ、売主が宅建業者である新築分譲住宅を気に入り、購入の申込みを受けた。顧客は、物件価額以外の購入経費が嵩むので、物件価額から100万円の指値を希望している。当社は、売主に交渉したところ、100万円の値引きはできないが、60万円の値引きであれば応じるとの回答を得た。また、当社が受領する報酬額も上限額より低い金額を提示したところ、顧客は、資金を工面できる目途が付くので売買価額ともに報酬額を了承し、1週間後に売買契約することになった。
 翌々日、顧客から当社に連絡があり、他の媒介業者から、契約予定の物件はその媒介業者が先に紹介・案内し、価額の交渉までしており、当社の媒介で契約が成立したときは、媒介報酬を請求するといわれていると相談された。顧客によると、その媒介業者や当社を含め数社の媒介業者に物件紹介を依頼していた。確かに、顧客は、2か月前にその媒介業者から同じ物件を紹介され、気に入ったので、当社に示した額と同額の100万円の指値交渉を依頼したが、売主は、指値に応じなかったようだ。当社は、顧客が当該物件を他業者から紹介されていたことは知らなかった。なお、顧客に紹介した新築分譲住宅は、レインズに登録されていた物件の一つである。

質 問

1.  購入希望者が複数の媒介業者から同じ物件を紹介され、売買契約に至る場合、先に購入条件につき交渉した媒介業者の媒介で売買契約をしなければならないか。
2.  当社の媒介で売買契約した場合、顧客は先に条件交渉した媒介業者に媒介報酬を支払う必要はあるか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 売買契約締結にあたり媒介業者を選択するのは、信義則に反しない限り顧客の自由である。
 質問2.について ― 貴社に先立ち、他の媒介業者が売主と顧客の買受条件を交渉したからといって、その事実のみで報酬請求権が生じているとは解されず、報酬相当額の支払い義務はない。
2.  理 由
⑵について
 不動産の購入を検討している顧客は、通常、複数の不動産会社に接触して物件紹介を受け、また、インターネット等により情報を収集している。売却物件情報は、レインズへの登録によって不動産業者に周知され、複数媒介業者から同一物件を顧客に紹介されることは、めずらしくない。顧客の条件は基本的に変わらないのであり、レインズ登録情報によって同じ物件が検索されるのは当然のことである。他の業者から紹介を受けたことを告げる顧客もいるが、告げない場合もある。そのため、先に紹介・案内された物件に関心があれば、再度検討することもあるであろう。
 媒介業者に途中まで不動産情報の紹介や案内等の媒介行為をさせ、媒介業者を排除して、紹介を受けた物件を売主と売買契約をした場合には、媒介業者の報酬請求権を認めている(標準専任媒介契約約款第10条)が、2社の媒介業者から同一物件を紹介され、先の業者を排除して、後に紹介を受けた業者の媒介で契約締結した場合には問題となろう。
 相談ケースの場合、先の業者は、売主との顧客の買受条件交渉は不調で、媒介行為が交渉にとどまり、売買契約の成立には至らなかった。反面、貴社は売主との交渉で契約条件の合意がなされた。さらに顧客の資金計画を勘案し、貴社は報酬額も上限額から譲歩したことも顧客にとっては有利な条件となったため、結果、貴社の媒介で売買契約に至ったのである。顧客は、自身にとって有利な条件で契約を望むことは自然であり、貴社を売買契約成立の媒介業者として選択したのは当然といえる。裁判例でも、「媒介業者は、売り物に出された同一物件につき互いに競争的立場」にあり、買受条件が媒介業者によって異なった場合は、「いずれが最も自己の意向に近い有利な条件を提示するかによって、仲介者を選択することは、それが信義則に反しない限り自由になしうる」として、先に紹介した媒介業者の報酬請求権を否定している(【参照判例】参照)。
 貴社の売主との交渉力が勝り、契約成立に至ったものであり、先の業者も顧客の意向を十分に汲取り、売主と契約条件等について粘り強い交渉を続けていたのなら、成約に至った可能性もあったであろう。不動産流通業界は業者同士の競争も厳しく、自社が優位性を保つためには、いかに情報収集力や営業力、顧客対応力を備えるかが鍵となろう。

参照条文

 民法第648条(受任者の報酬)
   受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
   受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。
   受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
     委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
     委任が履行の中途で終了したとき。
 民法第656条(準委任)
   この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
 標準専任媒介契約約款第10条(直接取引)
   専任媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。
 ※専属専任媒介契約、一般媒介契約も同様の約款がある。

参照判例

 東京高裁昭和39年6月30日 判タ164号173頁(要旨)
 一般に不動産の買受希望者が売り物に出された同一物件につき互いに競争的立場においてその売買の仲介を取扱う複数の不動産取引業者に接触し、物件を下見した上代金額その他の買受条件につき交渉したに止まる場合には、そのいずれが最も自己の意向に近い有利な条件を提示するかによって、仲介者を選択することは、それが信義則に反しない限り自由になしうるところ、前記認定のとおり初期接触仲介業者(以下「業者A」という。)と後の接触仲介業者(以下「業者B」という。)とでは、買主が手許資金の都合上特に重視した売買手附金の額だけでなく、仲介手数料についても格段の相違があって、業者Aの提示する条件は買手たる買主の受け入れがたいものであったところから、買主が業者Aの媒介を利用せず、買主にとってより有利な業者Bの媒介の下に、売主との間に売買契約を成立せしめたのは、買手として誠に当然のこととせざるを得ない。そしてこの間買主側に別段信義に反する行為があったと認むべき資料はないので、右の結果業者Aが売買仲介の関係から外され、不利益を受けることになっても、それは自己の努力によって他の仲介者と比べて買手により有利な条件の提供をなしえなかった廉(かど)注1によるものとして甘受すべきものである。
 注1)廉(かど)=ある事柄の原因・理由となる点
 ※判例記載の関係者を分かりやすく言い換えています。

監修者のコメント

 媒介報酬(仲介手数料)請求権の成立要件は、①媒介契約の成立②媒介行為の存在③売買・賃貸借等の契約の成立④売買契約等の成約と媒介行為との因果関係の存在である。相談者である媒介業者は、この4要件をすべて満たしているのに対し、他の業者は、たとえ先に交渉したとしても、その媒介行為と現実に成約した売買との因果関係(④の要件)が認められない。
 なお、いわゆる「抜き行為」は、他の業者の所で、この4つの要件がすべて満たされ、又は満たされる可能性があったのに、これを文字どおり抜いてしまい報酬を受けるゆえに、抜かれた業者に対する不法行為(民法第709条)が成立するのである。

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