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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1910-B-0266
管理費等の負担額を区分所有者の属性や使用目的で差異を設けることの適否。

 当社が売買の媒介をした区分所有店舗の買主から、当該マンションの管理組合が、法人所有または事業用使用と個人所有の居住用で管理費に差異を設ける検討がされているが、決議に反対できる根拠はないかとの相談をされている。

事実関係

 当社は売買の媒介業者である。1年前に法人が社宅に使用する目的でマンションの一室を購入した。このマンションは、最寄駅から近い10階建で、1階と2階は店舗と事務所用、3階以上は居住用となっており、住居系と商業系が混在している。
 買主である法人の担当者から、同マンションの管理組合の理事会で運営費の収支改善のため、管理費等の見直しが協議されていることを聞かされた。現在の管理費等は、区分所有者の専有面積に応じた割合で負担している。見直しにより全戸が値上げになるようだが、見直しの柱として、所有名義や使用用途によって区分し、管理費に差異を設けることが検討されている。区分は、個人所有の住居、法人所有の住居、店舗(飲食店含む)・事務所の3区分である。区分別の管理費算出方法として、個人所有住居の面積単価(平米当たり)を基準として、法人所有住居は1.3倍、店舗・事務所は1.5倍とする案である。修繕積立金についても同様の改定が検討されている。
 3区分して管理費に差異を設ける理由として、法人は管理費等の負担能力が高く、営利目的の事業用物件の店舗・事務所は、さらに負担能力が高いとみている。店舗や法人所有者の中には、改定案に同意できないとの声も多くある。当社が媒介した買主も同様に反対している。

質 問

 区分所有建物の管理組合は、所有者属性や使用目的により管理費等の徴収額に差異をつけることができるか。

回 答

1.  結 論
 区分所有物件の管理費等は、区分所有者が所有する専有部分の床面積の割合に応じて負担するのが原則であり、負担額に差異をつけることに合理性がない限り、所有者属性や使用目的により差異を設けることはできないと解する。
2.  理 由
 区分所有建物における管理費等は、規約に別段の定めがない限り、各区分所有者の持分に応じて、各区分所有者が負担することが規定されている(区分所有法第19条)。各共有者の持分は、各区分所有者が有する専有部分の床面積の割合である(同法第14条)が、持分と異なる管理費等の負担を規約で定めることも可能である。区分所有法は、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項を規約で定める(区分所有法第30条第1項)場合は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設の形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるようにする必要がある(同法同条第3項)。
 管理組合が、法人と個人という区分所有者名義により管理費等の徴収額に差異(法人が個人の1.6倍)を設けた規約の決議について争った裁判例では、「所有名義により法人組合員と個人組合員とで差異を設けること自体が直ちに区分所有法に反するとまではいえない」としながらも、「多数決によって決定されるのであるから、管理費等につき少数者に不利な定めが設けられる虞がある。その該当者の承諾を得ているなど特段の事情のない限り、その差異が合理的限度を超え、一部の区分所有者に対して特に不利益な結果をもたらすことまでは是認していない」とし、「合理的限度を超えた差別的取扱いを定めた規約及び決議は、区分所有法の趣旨及び民法第90条の規定に違反し、無効となることがある」と公序良俗に反して無効としたものがある(【参照判例①】参照)。
 また、事業用途は管理費の負担能力は高いとの理由で居住用途と差異(倍額)を設けた規約決議に対して、「営利目的の事業用物件については当該居室からの収益が想定されるものの、このことから管理費の負担能力の高さまでが当然に基礎付けられるものとは認められない。事業用物件だからと言って、共用部分の使用頻度は通常の居住用物件と大きく異ならない」とし、事業用物件の倍額規定がなければ赤字となり健全な運営ができなくなるという管理組合の主張に対し、「赤字の解消は支出状況の改善又は居住用物件所有者らの負担割合との調整等によって実現されるべきもの」と管理組合が解決すべき問題であり、合理的な根拠のない倍額規定は区分所有法第30条第3項に反するものとして、無効とした裁判例がある(【参照判例②】参照)。
 なお、管理費等の負担に関する規約は区分所有者全員を対象とするが、例外として、区分所有者全員の利害に関係しないものは、一部の区分所有者を負担の対象とする規約を認めている(同法同条第2項)。例えば、事業用途と居住用途が混在している区分所有建物において、事業用途部分の利用方法や外部来店者が専ら使用するエスカレーターや階段等が居住用と区別されている場合に、事業用途区分所有者の使用方法や費用負担を居住用途の区分所有者と別途の規約を規定することが可能である。一部区分所有者を対象とする規約等を定める場合でも、区分所有者全員で構成する集会(管理組合総会等)の決議を要する(同法第3条)。このような、区分所有者全員が共用する部分とは別途に一部の者のみが共用する区分のある建物の場合は、合理的根拠があるとして、管理費等に差異があっても認められる可能性が高いであろう。

参照条文

 民法第90条(公序良俗)
   公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第3条(区分所有者の団体)
   区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
 同法律第14条(共用部分の持分の割合)
   各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
  〜④ (略)
 同法律第19条(共用部分の負担及び利益収取)
   各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
 同法律第30条(規約事項)
   建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
   一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
   前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
  ・⑤ (略)

参照判例①

 東京地裁平成2年7月24日 判タ764号217頁(要旨)
 区分所有法第19条は、持分に応じて管理費を徴収することの例外を規約で定めることを認めており、管理費等の徴収額につき所有名義により法人組合員と個人組合員とで差異を設けること自体が直ちに同法に反するとまではいえない。
 しかし、管理組合は全員加入である上、規約あるいは決議も、各区分所有者の専有部分の床面積の割合による多数決によって決定されるのであるから、管理費等につき少数者に不利な定めが設けられる虞がある。区分所有法も、直接管理費等について定めたものではないが、少数者の保護を図るために、規約の設定、変更等につき一定の制限を設けている(同法第3条1項後段)。その趣旨は、区分所有者による建物等の自主的な管理を認めつつ、それが一部の者に特に不利益な結果になることを防止しようとした点にあると考えられる。さらに、区分所有法第19条の趣旨や、元来建物の利用は持分に応じてなされていること等も考えると、同法は、管理費等の額につき法人組合員と個人組合員とで差異を設けることについては、その該当者の承諾を得ているなど特段の事情のない限り、その差異が合理的限度を超え、一部の区分所有者に対して特に不利益な結果をもたらすことまでは是認していないと考えるべきである。また、区分所有法を離れて考えてみても、かかる全員加入の非営利的な団体において、多数決で定められた負担金に差異を設ける規約、決議等は、目的又はその差別の方法が不合理であって、一部の者に特に不利益な結果をもたらすときは、私的な団体自治の範囲を超え、原則として民法第90条の規定する公の秩序に反するものというべきである。
 したがって、かかる合理的限度を超えた差別的取扱いを定めた規約及び決議は、区分所有法の趣旨及び民法第90条の規定に違反し、無効となることがある。

参照判例②

 東京地裁平成27年12月17日 判時2307号105頁(要旨)
 区分所有法第30条第3項は、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項を規約で定めるに当たっては、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない旨を規定しており、上記要件が充たされていない場合には規約の当該部分は無効になるものと解される。(中略)
 規約に定められた事業用物件の管理費額を通常の倍額とする規定(以下「本件倍額規定」という。)は,当該居室の使用目的が居住用であるか事業用であるかによって管理費額に差を設けるものであるところ、営利目的の事業用物件については当該居室からの収益が想定されるものの、このことから管理費の負担能力の高さまでが当然に基礎付けられるものとは認められない。
 また、本件各居室の利用状況は認定事実のとおりであり、これが共用部分の使用頻度の観点から通常の居住用物件と大きく異なるものであるとは考え難い。なお、本件各居室以外の事業用物件についても、上記観点から居住用物件と大きく異なるような利用状況にあることをうかがわせる証拠はない。
 管理組合は、本件倍額規定が存在しなければ赤字となり健全な運営ができなくなる旨も主張するが、仮にそのような状況にあったとしても、その解消は支出状況の改善又は居住用物件所有者らの負担割合との調整等によって実現されるべきものであり、上記のとおり合理的な根拠があるとは認められない本件倍額規定の存在を許容すべき理由となるものではない。
 以上によれば、本件倍額規定は区分所有法第30条第3項に反するものとして、無効というべきである。

監修者のコメント

 区分所有者が法人か個人か、用途が住居用か事業用かに拘らず、絶対に専有部分の床面積割合によって管理費等を算定しなければならないわけではない。回答の内容も参照判例も合理的根拠のある差異は容認している。問題は、具体的なその差異が合理的か否かであるが、結局は公平の観念で決しなければならない。本相談ケースでは、負担能力を理由としているようであるが、それだけでは合理的といえないであろう。個人でも大変裕福で経済的能力のある人もいるし、法人でも業績が良くなく赤字の法人もあるであろうし、業務用途の区分所有者も負担能力は千差万別であろうからである。本相談ケースで居住用目的のものについて個人と法人と区別する根拠は見出し難い。利用形態に差異がないのが通例だからである。ただ、回答も言うように、店舗や事務所の用途のものについて、当該専有部分に至る共用部分の使用頻度が居住用のものに比して不特定多数が出入りするため高い場合に差異を設けることは合理的根拠があると言えるであろう。

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