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1908-B-0264
区分所有建物の専有部分が共有となっている場合、支払義務のある管理費等は、不可分債務か否か。

 マンションの売却を依頼されている。売主は管理費等を滞納している。売主は夫婦の共有であるが、離婚を協議中である。入居している夫は勤務先からリストラされ、資力がないため、別居の妻に滞納額全額の支払を依頼したところ、持分の割合に応じた額しか支払わないといっている。

事実関係

 当社は、売買の媒介業者である。離婚予定の夫婦が居住していたマンションの売却の相談を受けている。マンションは夫婦の共有名義になっており、持分はそれぞれ二分の一である。互いにマンションを売却することには合意しているが、離婚協議を始めた1年前から管理費と修繕積立金の支払を滞納している。管理組合は居住している夫に対し支払督促をしているが、未だに支払われていない。当社は、売却にあたり滞納があるとその滞納額は買主に承継されるので、マンションに居住している夫に対して滞納額の支払を依頼したところ、離婚原因でもある勤務先の解雇により資力が乏しいため、支払は難しいと拒否された。このままでは売却活動ができないので、既に別居している妻に対して滞納額の支払を求めたところ、半年前からマンションには入居しておらず、支払うにしても自己の持分相当である滞納額の半分であれば支払う用意はあるが、マンションの持分は二分の一であり滞納額全額を支払う義務はないと言っている。

質 問

 区分所有者が複数いる場合、共有者の管理費等の支払義務は、持分に応じた額なのか、全額なのか。

回 答

1.  結 論
 管理費等の支払義務は、不可分債務と解され、区分建物の各共有者は、管理費等の全額について支払義務がある。
2.  理 由
 共有物の管理にかかる費用は、持分に応じて支払義務を負い(民法第253条)、債務者が複数いる場合、別段の意思表示がない限り、分割債務が原則である。しかし、例えば、夫婦が各二分の一の共有でマンションを購入する場合、民法原則(同253条)では、それぞれが価額の二分の一を支払えばよいが、共有者の一方が支払い、他方が支払わないときは、売主は目的を達せられることができない。そのため、売買契約では、各共有者が全額を支払う、あるいは連帯して支払うとの債務不可分の履行の意思表示をして約定することがほとんどである。
 区分所有建物であるマンションの管理費等の支払義務は、可分債務(分割可能な債務)と解すれば、建物の共有者は、それぞれ自己の持分割合に応じた額を支払えば足りるが、不可分債務と解すれば、各共有者は全額の支払義務を負うことになる。区分所有法は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」(区分所有法第19条)とあり、一見、区分建物の各共有者の負担は、持分に従う可分債務のように理解される。しかし、「区分所有者とは、区分所有権を有する者」(同法第2条第2項)であり、各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による(同法第14条第1項)とされていることから、区分所有法にいう共有者は個々の専有部分の共有者でなく、一棟の区分建物の区分所有者を指すものであり、債務は共同して負担するものと解されている。
 ただし、金銭債務は持分で分割できるが、専有部分を共有する者は、マンションの共有部分が維持管理されることにより共同不可分の利益を得ることができるので、区分建物を共有する者が負う金銭債務である管理費等の支払債務は「性質上の不可分債務」(同法第430条、第432条)と解され、区分建物の各共有者は、管理費等の全額を支払う義務があるとされている(【参照判例】参照)。
 相談ケースの場合、媒介業者は、売主の管理費等の滞納額は買主に承継されることになるので、売主の共有者のいずれかが予め清算するか、売買代金の一部により支払う約束を取り付けなければ、売買当事者間の紛争になりかねず留意が必要である。

参照条文

 民法第253条(共有物に関する負担)
   各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
   (略)
 同法第427条(分割債権及び分割債務)
   数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
 同法第428条(不可分債権)
   債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合において、数人の債権者があるときは、各債権者はすべての債権者のために履行を請求し、債務者はすべての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。
 同法第430条(不可分債務)
   前条の規定(注:不可分債権者の一人について生じた事由等の効力)及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
 同法第432条(履行の請求)
   数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
 建物の区分所有等に関する法律(「区分所有法」)第2条(定義)
   この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。
   この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。
   この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
   この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。
  〜⑥ (略)
 同法第11条(共用部分の共有関係)
   共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
  ・③ (略)
 同法第14条(共用部分の持分の割合)
   各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
  ・③ (略)
   前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
 同法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
   各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
 同法第21条(共用部分に関する規定の準用)
   建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。

参照判例

 東京高裁平成20年5月28日 ウエストロー・ジャパン(要旨)
 区分所有法第19条は、「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」と定める。ここでいう「各共有者」とは、同法第2条第4項にいう「共用部分」(数個の専有部分に通じる廊下又は階段室等が典型である。以下「マンション共有部分」という。)を共有する区分所有者を指すのであり、同法第11条第1項ただし書の一部共用部分を除くと、区分所有者全員ということになる。(同法第11条本文)。なお、区分所有者とは、区分所有権(専有部分を目的とする所有権)を有する者をいうものである(同法第2条第1項、第2項)。
 そして、区分所有法第14条第1項は、「各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。」と定める。
 以上によると、区分所有法は、マンション共用部分を共有する区分所有者(区分所有権を有する者)は、その有する専有部分の床面積の割合によりマンション共有部分の負担を負うものとしている(なお、同法第19条は、民法第253条の特則であるところ、民法第253条では、単純に、各共有者はその持分に応じて負担を負うと定めている。)。
 このことからすると、区分所有権を単独で有してマンション共用部分を共有している場合ではなく、区分所有権を共有してマンション共用部分を共有している場合についても、区分所有権を共有している者は、全体として、その有する専有部分の床面積(なお、区分所有権を有している者は、各自その専有部分全体を有し、全体につき使用収益をなしうるのである。)の割合により定まる管理費等の負担を負うというべきであり、区分所有権を共有している者ら相互の関係は、区分所有権を有するという一個の法律関係から発生するところの、一個の債務を共同して負担する関係(いわゆる多数当事者の債権債務関係)に立つものと解するのが相当である。
 ただし、本件の管理費及び修繕積立金のような金銭債務については、これを持分割合で分割し得るので、このような債務を分割債務ととらえるか、不可分債務ととらえるかが次に問題となる。この点については、区分所有者がマンション共有部分の管理費等の負担を負うのは、専有部分に通じる廊下、階段室等のマンション共有部分が、その有する専有部分の使用収益に不可欠なものであるということに由来するものと考えられるところ、区分所有権を共有する者は、廊下、階段室等のマンション共有部分の維持管理がされることによって共同不可分の利益(専有部分の使用収益が可能になること及びその価値の維持)を得ることができるのである。そうすると、区分所有権を共有する者が負う管理費等の支払債務は、これを性質上の不可分債務ととらえるのが相当である。

監修者のコメント

 不可分債務とは、その意味についての明文規定はないが、解釈上、数人の債務者が一つの不可分給付を目的とする債務を負担する法律関係をいい、典型例は、共有者が共有物を譲渡した場合の目的物引渡債務である。共有物を分割して共有者一人ひとりが自己の共有持分の部分を引き渡すというのは不合理だからである。では、金銭を支払う債務はどうかというと金銭は分割できるので原則的には不可分債務ではなく分割債務である。しかし、一つの目的物を数人が共同して賃借している場合の賃料支払債務は不可分債務と解されている。なぜなら各賃借人は目的物の全部に対して使用収益をなし得る地位にあるからである。相談ケースの管理費等もこれと同じ論理である。
 なお、不可分債務と似た概念に連帯債務がある。連帯債務は、数人の債務者が同一内容の給付について全部を履行すべき債務を負い、そのうちの1人が履行すれば他の債務者も債務を免れるという債務関係をいう。連帯債務には負担部分というものがあり、各債務者が最終的にはどれだけ負担するかが決まっている。不可分債務も連帯債務も債権者は債務者の1人に対し、また債務者全員に対し、同時もしくは順次に全部の履行を請求できるという点では同じであるが、債務者の1人に生じた事由が他の債務者に効力が及ぶかについて異なる。

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