不動産相談

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不動産のプロフェッショナル

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
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1904-B-0259
宅建業者が業務で作成、使用した取引関連書類の保存期間

 当社は売買・賃貸の媒介業者である。宅建業者の取引した契約関係書類の保存期間は宅建業者によって異なるようだが、保存する期間はどのくらいが望ましいか。

事実関係

 当社は開業して間もない宅建業者である。当面は、売買及び賃貸の媒介を主業務とし、いずれは土地や建物の分譲も取り扱いたいと考えている。最近参加した不動産業団体の会合で、宅建業者が宅建業務で作成、使用した書類の保存期間について話題となった。一般的に取引台帳と言われている「帳簿」の備付けは、宅建業法により5年間の保存義務があることは承知しているが、不動産の取引の際に作成した媒介契約書、重要事項説明書や契約書及び説明等に使用した関連書類の保存期間は宅建業者によりまちまちであった。保存期間を10年、20年あるいは永久保存している宅建業者や反対に取引後は処分している宅建業者もいた。当社には、長い間、保存をしておく保管場所も限られているとはいえ、取引した顧客から契約や書類内容についての問合せや苦情等に対応する場合があると思われ、取引後に即時処分することには懸念が残る。

質 問

1.  宅建業法で義務付けられている不動産取引の帳簿の保存期間は取引後5年間で間違いないか。
2.  不動産取引で作成した重要事項説明書や契約書及び取引関連書類の保存期間はどのくらいの期間を設けたらよいか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 宅建業者の帳簿の保存期間は5年と定められているが、保存期間の始期は取引時ではなく、各事業年度の末日に閉鎖し、閉鎖後5年間である。また、宅建業者が自ら売主となる新築住宅の取引の帳簿の保存期間は10年間である。なお、犯罪収益移転防止法に基づく「確認記録」「取引記録」については、7年間保存する義務がある。
 質問2.について ― 宅建業者が不動産取引で使用した関係書類の保存期間の定めはないが、取引完了時から10年間もしくは20年間保存している宅建業者が多いようである。
2.  理 由
について
 宅地建物取引業法は、宅建業者の行った不動産取引の帳簿に関し、「宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え、宅地建物取引業に関し取引のあったつど、その年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない」(宅建業法第49条)と規定され、具体的な記載事項が省令で定められている(宅地建物取引業法施行規則第18条第1項)。宅建業者の取引は、態様(当事者、代理、媒介)の別は問わず、対象取引(売買、賃貸借、分譲・建売等)の限定はない。帳簿の名称は、必ずしも「帳簿」とする必要がなく、「取引台帳」「取引記録」「取引帳簿」「成立台帳」と各宅建業者で異なっている。ただし、取引した契約書のコピーをまとめて保存するだけでは、帳簿としては認められない。様式は同規則に定められている項目を満たしていれば自由であるが、宅建業者の所属している団体が提供している様式を利用していることが多いであろう。帳簿の保存は、必ずしも帳票(紙)でなくてもよく、パソコン等のファイル又は磁気ディスクに記録し、必要に応じてその事務所で保存した帳簿をプリンター等で紙面に印刷できる状態があれば帳簿として認められる(宅地建物取引業法施行規則第18条第2項)。
 帳簿は、宅建業者の各事業年度の末日に閉鎖し、5年間は保存する義務があるが、宅建業者が自ら売主となる新築住宅の取引についての帳簿は、閉鎖後10年間保存しなければならない(宅地建物取引業法施行規則第18条第3項)。これは品確法による売主の瑕疵担保責任期間(10年)に関係するものである。
なお、犯罪収益移転防止法によって宅建業者が作成する義務のある「確認記録」及び「取引記録」の保存は、取引の行われた日から7年間保存する義務があり、宅建業者が帳簿と確認記録を併せて記載する場合は、5年間の保存義務がある帳簿にかかわらず、7年間保存しなければならないことに留意が必要である。
について
 宅建業者が不動産取引にかかわる場合、さまざまな取引関係書類を揃えることが通常である。例えば媒介関連の書類には、媒介契約書、種々の調査で収集した書類、重要事項説明書とその添付資料、契約書、買主のローン関連書類、顧客あてに作成した資金計画表や顧客との交渉・折衝記録等、宅建業法上の必要書類や公的な書類をはじめメモ等の私的文書まで種々雑多なものがある。宅建業者が保存すべき書類は帳簿が義務付けられているが、その他の取引に関係する書類等については規定がない。
 しかし、不動産売買取引では契約から決済まで相当の期間を要し、契約から決済までの間には取引した顧客や宅建業者から契約内容の確認、瑕疵担保責任期間の約定、特約条項の履行状況等、契約内容の進行を確認しなければならない。また、決済終了後においても、宅建業者に重要事項等の調査・説明ミスによる苦情や紛争等を申立てられることがあり得る。賃貸借契約においては、契約の締結は賃貸借契約の入口であり、賃貸借の終了までは長い期間を要する。賃貸管理業務も受託する場合には、賃貸借期間中は、賃貸人、賃借人それぞれの履行義務や約定事項の履行・不履行の対応の必要があり、賃借人の賃借物の明渡し時には原状回復や敷金返還等の約定に従った契約当事者のなすべき事項がある。宅建業者が媒介の場合は、このような管理行為に立ち入る必要性はないものの、契約した媒介業者として登場せざるを得ない場面もあり得る。媒介業者として契約当事者間の意見の相違に対し、契約時の状況について判断することや、場合により宅建業者が行った媒介業務に対して債務不履行や不法行為を追及されることも想定される。
 契約当事者間、宅建業者と取引相手との間のトラブルに適正な判断をするには取引関係書類が拠り所となる。そのため、宅建業者は一定期間、当事者間の主張の相違に対して判断するために取引関係書類を保存することになる。
 保存期間に関しては、売買契約の場合、永久保存をすることまでは要求されないと思料するが、宅建業者及び契約当事者の債務不履行による損害賠償ができる期間である10年間(民法第167条第1項、同法第415条)、または、不法行為による損害賠償請求権の期間である20年間(同法第709条、同法第724条)の保存が望ましいと考える。賃貸借契約では、賃貸借中は更新手続き、賃料滞納、中途解約、用法違反等の違約条項等があり、明渡し時には、賃借人が退去し、原状回復工事及び敷金返還等の約定がある。宅建業者は、個別の賃貸借契約のすべての契約行為が終了するまでは書類を保存することが望ましい。
 なお、保存するには物理的なスペースが必要であるが、保存場所が制限されるときは倉庫会社等の保管サービスの利用や電子機器で保存することにも検討の余地があろう。

参照条文

 民法第167条(債権等の消滅時効)
   債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
   債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
 同法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 同法第709条(不法行為による損害賠償)
 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 同法第724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
 宅地建物取引業法第49条(帳簿の備付け)
 宅地建物取引業者は、国土交通省令の定めるところにより、その事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え、宅地建物取引業に関し取引のあつたつど、その年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならない。
 宅地建物取引業法施行規則第18条(帳簿の記載事項等)
   法第49条に規定する国土交通省令で定める事項は、次のとおりとする
 (各号略)
   法第49条に規定する宅地建物取引のあつた年月日、その取引に係る宅地又は建物の所在及び面積並びに第一項各号に掲げる事項が、電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスクに記録され、必要に応じ当該事務所において電子計算機その他の機器を用いて明確に紙面に表示されるときは、当該記録をもつて法第49条に規定する帳簿への記載に代えることができる。 →プリンター
   宅地建物取引業者は、法第49条に規定する帳簿(前項の規定による記録が行われた同項のファイル又は磁気ディスクを含む。)を各事業年度の末日をもつて閉鎖するものとし、閉鎖後5年間(当該宅地建物取引業者が自ら売主となる新築住宅に係るものにあつては、10年間)当該帳簿を保存しなければならない。
 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)第95条(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)
   新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から10年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第570条において準用する同法第566条第1項並びに同法第634条第1項及び第2項前段に規定する担保の責任を負う。この場合において、同条第1項及び第2項前段中「注文者」とあるのは「買主」と、同条第1項中「請負人」とあるのは「売主」とする。
  ・③ (略)
 犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)第6条(確認記録の作成義務等)
   特定事業者は、取引時確認を行った場合には、直ちに、主務省令で定める方法により、当該取引時確認に係る事項、当該取引時確認のためにとった措置その他の主務省令で定める事項に関する記録(以下「確認記録」という。)を作成しなければならない。
   特定事業者は、確認記録を、特定取引等に係る契約が終了した日その他の主務省令で定める日から、7年間保存しなければならない。
 同法律(同法)第7条(取引記録等の作成義務等)
  ・② (略)
   特定事業者は、前2項に規定する記録(以下「取引記録等」という。)を、当該取引又は特定受任行為の代理等の行われた日から7年間保存しなければならない。

監修者のコメント

 最も慎重な保存の期間は、20年間である。最近の裁判事例で、売主業者と媒介業者が接道義務違反の物件の説明義務違反があったとして、引渡しから17年後に買主から損害賠償を求められ、責任が肯定された事例がある(千葉地裁平成23年2月17日判決、判例タイムズ1347号220頁)。この事案について説明義務違反を債務不履行と構成すれば、とうに時効消滅しているが、不法行為として構成すれば、その時効は「損害及び加害者を知ってから3年」、知らなくても20年で消滅することになるからである。
 もっとも、まったく問題のない取引については、7年又は10年で十分と考えられるので、ケースごとに柔軟に判断すればよいと考える。

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