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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1808-R-0193
建物賃貸借契約における賃借面積に関する「数量指示による賃貸借契約」適用の可否

 事務所の賃貸借契約の媒介をしたが、賃借人が賃借した契約書上の面積と実際に使用できる面積が異なり、実際の面積が狭かった。賃借人は、面積の差異による支払済み賃料の返還と今後の賃料の減額を要求している。

事実関係

 当社は、事務所・店舗の媒介を主とする宅建業者である。3年前に事務所の賃貸借契約をした法人賃借人の更新手続きを進めようとしたところ、賃借人から、実際に使用できる賃借面積は、賃貸借契約書に記載されている面積より8㎡狭いことが判明したので、従前支払った賃料及び敷金の返還と更新後の賃料の減額請求をしてきた。当該ビルは、県庁所在地の中心部に近いので賃料は高く、賃借人は、面積当たりの賃料を算出した上、面積単価に面積の差異を乗じた金額を提示している。
 法人の賃借しているビルは4階建の商業ビルで、1階が店舗、2階以上が事務所となっている。法人は、3階部分の3区画のうちの1区画を賃借している。賃借人の募集に当たっては、ビルの賃貸人からの情報に基づき、テナント募集用の物件概要を作成した。賃貸借契約の際の重要事項説明書及び契約書の床面積の表示面積は、賃貸人が示したものを記載して作成した。ビルの登記記録は契約前に取得し、所有者の確認をしている。登記記録の面積は他の建物と同様に階別の床面積は記載されているが、個々の区画の面積表示はない。
 法人が実際に使用できる面積が契約書等に記載された面積と異なることは、法人が事業拡大のための社員採用に備え、事務所のレイアウト変更の検討の際に工事業者が事務所内を実測したことにより判明した。
 契約締結以降、賃借人から賃貸人や当社に対して、賃借人が使用している事務所の広さに関して面積の差異の問合せや、事務所使用上に支障があるとの苦情はなかった。

質 問

 建物賃貸借契約で契約書等に表示されている床面積と実際に使用できる面積に差異があったときは、賃貸人と賃借人との間で賃料額の増減をする必要があるか。

回 答

1.  結 論
 賃貸借契約における賃料額を面積単価で合意していない限り、契約当事者は賃料額の増減を請求できない。
2.  理 由
 ビル等の貸室の賃貸借契約において、募集時や契約書の表示面積が実際に使用できる面積よりも広い場合がある。ビルの貸室の契約の場面ではよくあるといわれている。理由は、廊下、洗面所や給湯場所等の共用部分の面積の加算、面積が壁芯または内法であるかという計測方法の違い、登記記録上のフロア面積は明らかであるが、区画された貸室面積が未計測である等である。いずれの場合でも、賃借人は賃貸借契約に表示される面積を信じて使用するため、賃借人が実際に使用できる面積が狭い場合は、使用方法に制約を受け賃借に支障をきたすことや賃料額に異議を唱える場合がある。賃借人は、面積不足を事由として、錯誤による契約解除や債務不履行による損害賠償請求、既払いの差額賃料の返還請求を行うなど、賃貸人と賃借人間、あるいは媒介業者を巻き込んだトラブルを生じかねない。
 不動産の売買契約では、契約締結の際に一定の面積を表示して取引がなされる。いわゆる数量指示売買をしたときは、売主に担保責任があり、数量に不足がある場合には、買主は売主に対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができ、また、買主が数量不足の状態の取引を承諾しない場合、買主は契約解除又は、損害賠償請求が可能である(民法第563条、同法第565条)。賃貸借においても、賃貸借契約は有償契約であり、売主の担保責任と同様に賃貸人には担保責任があり、賃借人は賃料減額請求及び契約解除、損害賠償請求ができる(同法第559条による準用)。
 しかしながら、契約時に表示されている数量と実際に引渡し又は使用できる数量が不足するからといって、無条件に売主又は賃貸人の担保責任を問えるわけではない。民法第565条における数量指示売買は、「当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積等を売主が契約において表示」し、かつ、「この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するもの」であり、「登記簿記載の坪数は必ずしも実測の坪数と一致するものではないから、売買契約において目的たる土地を登記簿記載の坪数をもって表示したとしても、これでもって直ちに売主がその坪数のあることを表示したものというべきではない」との最高裁判例がある(【参照判例①】参照)。これによれば、「数量を確保するために一定の数量を売主が契約において表示」した上で、「この数量を基礎として代金額が定められた」という当事者間の数量指示の2つの要件の合意がなければ数量指示売買に当たらない。
 賃貸借契約における数量指示賃貸借の要件として「数量確保を前提として賃貸人が一定の面積を表示すること」と「表示された数量を基礎として賃料等が定められたもの」という要件は、売買と同様である(【参照判例②】参照)。相談ケースの契約時の表示面積は、「賃料算出のための一応の基準として表示されたもの」にすぎないという【参照判例②】の事情が該当し、賃借人の支払済みの差額賃料の返還及び賃料減額の請求は難しいであろう。
 前述のように賃貸面積に共用部分が加算されて表示されたり、賃貸人の不確かな情報により賃借人が実際に使用可能な面積と異なることが想定される。媒介業者は、賃貸借契約の媒介に当たり、共用部分が契約対象の面積に加算されるときは、専用使用部分と共用部分の内訳を表示すること、賃貸面積が明らかでない場合は、建築図面等の確認や実際の賃貸部分を巻尺等で計測して面積を明確にして表示するなど 賃借人に誤解を与えないように配慮することが望ましいであろう。

参照条文

 民法第559条(有償契約への準用)
 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 同法第563条(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)
 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
   前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
   代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。
 同法第564条(同上)
 前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ1年以内に行使しなければならない。
 同法第565条(数量の不足又は物の一部滅失の場合における売主の担保責任)
 前二条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。

参照判例①

 最高裁昭和43年8月20日 判タ227号133頁(要旨)
 民法第565条にいう「数量を指示して売買」とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度あることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するものである。ところで、土地の売買において目的物を特定表示するのに、登記簿に記載してある字地番地目および坪数をもってすることが通例であるが、登記簿記載の坪数は必ずしも実測の坪数と一致するものではないから、売買契約において目的たる土地を登記簿記載の坪数をもって表示したとしても、これでもって直ちに売主がその坪数のあることを表示したものというべきではない。

参照判例②

 東京地裁昭和58年3月25日 判タ500号183頁(要旨)
 「数量を指示してなした賃貸借」というには、当事者が目的物件が実際に有する面積を確保するため、賃貸人が契約において一定の面積のあることを表示し、かつ、これを基礎として賃料等の定められたものであることを要すると解される。(中略)
 本件各契約において、賃借人主張のような面積を基準として賃料等が算出されていたとしても、各契約当事者にとって右面積が本件各契約の重要な要素とされたものでないことは明らかであるから、右表示は賃借人の賃借部分が実際に右面積を有することを確保するためになされたものとは到底認め難く、むしろ賃料算出のための一応の基準として表示されたものにすぎないものというべきである。

監修者のコメント

 1㎡又は1坪単位の賃料を基礎にそれに面積を掛けた総額賃料を算出している場合は、回答のとおり、「数量指示による賃貸借」として、民法565条を準用する559条により、実際の面積が計算根拠となった面積より少なかった部分について、相談ケースの賃借人の主張ができる。しかし、相談ケースも世上多くのケースも数量指示によるものではない。
 ただ、このようなケースでも賃貸人が物件広告や契約書の表示面積が実際より大きく書かれていることを知っていて、賃借人が誤信していることを知ってあえて言わないでいるということであれば、信義則上の説明義務違反として債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償責任を負うこともあり得る。

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