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掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1806-R-0191
賃借人の不注意により賃借物に補修が必要となった場合の、賃貸人の修繕義務

 当社は、賃貸の媒介兼管理業者であるが、賃借人の不注意で排水管に支障が生じた。賃借人は、賃貸人に対して修繕を要求しているが、賃貸人は、支障の原因は賃借人にあるので、修復はしないと主張が対立している。

事実関係

 当社は、賃貸の媒介兼管理業者である。管理している賃貸マンションの1室の排水管が詰まり、台所のシンクに水が溜まり、排水は少しずつしか流れない状態になったり、浴槽の排水を一度にすると風呂場内にも水があふれることもある。当社は、工事業者に点検させたところ、排水に支障が生じたのは、賃借人が長い間、調理用に使用した食用油を台所流し台の排水口から流していたことにより、排水管内に硬く変質した油汚れが付着したことが原因であるとした。賃借人は、賃貸人に対し、修理を要求したが、賃貸人は、排水管の不具合は賃借人の不注意により生じたもので、賃貸人に責任はなく、修理はしないと拒んでいる。賃借人は、賃貸人が排水を正常に使える状態に修理するまでは賃料は支払わないと言っている。当社としては、賃借人の使用の仕方が原因で排水管が詰まったのであり、賃借人が修理すべきではないかと思っているが、両者の主張が食い違っており困惑している。

質 問

 賃借している建物や建物内の設備の不具合が、賃借人に責任ある場合でも、賃貸人は、修理しなければならないのか。

回 答

1.  結 論
 建物の賃貸人は、賃借人の責任で修繕が必要になった場合でも、修繕をしなければならない。
2.  理 由
 建物の賃貸人は、賃借人に対し、賃貸物を使用収益させる義務があり(民法第601条)、賃貸物の使用収益に支障が生じたときは、賃貸人は、修繕する義務を負っている(同法第606条第1項)。賃借人の故意等の全面的に賃借人に責任がある場合は、賃貸人の修繕義務はないとされているが、賃借人に責任の一端があるものの、必ずしも賃借人の責任が全面的にあるとはいえない場合には、賃貸人が修繕義務を負うと解されている。相談の建物は、建築後の経過年数も長いため排水管が劣化し錆が生じて排水パイプの内径が細くなっていたところに、賃借人の不注意により日常的に食用油を流していたことが、排水の詰まりを生じさせた原因である。
 同様のケースにおいて、「賃借人の責任で修繕を必要とする状態に至った場合においても、合理的な期間内に修繕を行うべきである」と支障を生じさせた原因が賃借人あっても、賃貸人の修繕義務は免れないとした裁判例がある(【参照判例】参照)。
 賃貸人は、賃貸人の責めに帰すべき事由により建物および設備等に不具合が生じた場合は当然であるが、災害や外部からの不可抗力(自動車が塀を壊す等)による場合でも賃貸人に修繕義務がある。ただし、賃貸物の滅失等修繕不能の時は、修繕義務は生じず、契約継続不能による契約解除となろう。
 なお、賃借人の責めに帰すべき事由による不具合についての損害賠償責任と賃貸人の修繕義務は別途の問題であり、賃貸人は修繕しなくてはならない。相談のような場合、賃借人は、賃貸人が修繕に要した費用の一部の負担を求められる場合もあるであろう。
 また、賃借人の使用収益に支障が生じた場合、賃貸人の修繕義務が履行されるまでの間、賃借人は、賃料の支払いを拒絶できる(同法533条)が、拒めることのできる支払賃料は、使用収益ができない部分の割合に過ぎず、使用収益がすべて不能の場合を除き、賃料全額の支払いを拒絶することはできない。一部の使用収益に支障があるといって、賃借人が賃料の全額の支払いを拒否すれば、賃借人の賃料支払いの債務不履行となり賃貸人から契約解除される理由となりうるので、注意が必要である。

参照条文

 民法第533条(同時履行の抗弁)
 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
 同法第601条(賃貸借)
 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
 同法第606条(賃貸物の修繕等)
 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
   (略)

参照判例

 東京地裁平成7年3月16日 判タ885号203頁(要旨)
 建物の賃貸人は、賃貸建物の使用収益に必要な修繕を行う義務を負うから、賃借人の責任で修繕を必要とする状態に至った場合においても、合理的な期間内に修繕を行うべきであり、したがって、右期間内に修繕が行われなかったときは、賃借人は信義則上、以後の賃料の支払を建物の使用収益を生じている限度において拒絶し、あるいは減額の請求をすることができると解すべきである。

監修者のコメント

 本ケースのような場合、建物や設備の不具合が賃借人の責任(故意又は過失)かどうか自体が争われることが多い。原因不明であれば最終的には裁判で決着をつけなければならないが、想定される金額を考えれば話合いで解決したほうが賢明である。
 ただ、相談事例は賃借人に責任のあることを前提としているので、結論及び理由は、回答のとおりで付け加えることはない。
 もっとも、賃借人は建物等の使用について善管注意義務を負っているので、賃借人の責任により修繕を余儀なくされたのであれば、その費用を損害賠償として請求できることはもちろんである。参照判例も、そのことを前提としている。

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