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賃貸事例 1512-R-0153
学生向け賃貸マンションのキャンセルに伴う違約金特約の有効性

 当社は、ある特定の大学専用のような学生向けの賃貸マンションの入居者募集と管理をしているが、入学の時期が迫ってから申込みをキャンセルされると、来年の入学の時期まで学生が入らないということもあり、大変苦労する。そのため、当社は申込者がキャンセルをした場合には、申込金(4万円)を返還しないようにしているが、このような営業方法は問題があるか。

事実関係

 当社は、賃貸借の媒介業者兼管理業者であるが、当社が管理をしている学生向けの単身者用賃貸マンションは、毎年受験シーズンになると、決まって2~3の親権者が合格を見越して申込みをしていく。その理由は、このマンションが、ある有名国立大学が近くにある数少ないマンションの1つだからである。
 このような学生向けの単身者用賃貸マンションの場合、①当社は、その申込みの際に、あらかじめキャンセルをしたときは申込金を返金しない旨を書面で親権者に伝えたうえで、賃料の1か月分相当額の申込金(4万円)を受領している。その理由は、キャンセルされると、次の学生を入居させるまでに大変苦労をするため、そのペナルティとして没収するのである。
 また、②当社は、その大学の合格発表後の申込者に対しては、学生の入学の時期に合わせて契約の始期を定め、賃貸借契約を締結したうえで、賃料の2か月分相当額の敷金と4月からの1か月分の前払賃料および当該月の日割賃料を受領している。

質 問

1.  このような当社の前記【事実関係】①の営業方法について、何か問題があるか。問題があるとすれば、それはどのような問題か。それは、どのようにすれば解決できるか。
2.  当社は、合格発表後の親権者(借主)との始期付賃貸借契約を親権者(借主)が始期到来前にキャンセル(解除)した場合には、親権者(借主)が貸主に対し、賃料の約1年分に相当する違約金を支払うという特約を定めるが、その特約は消費者契約法第9条・第10条の規定に照らし、有効といえるか。その違約金の額が賃料の6か月分程度であったときはどうか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 問題点としては、貴社(媒介業者)の行為が法令に違反しており(宅地建物取引業法施行規則第16条の12第2号)、また、貸主が申込金をペナルティとして没収する法的根拠に乏しいという問題がある。したがって、貸主としては、少なくとも申込者(親権者)との間で賃貸借契約の予約あるいは入居者の大学合格を停止条件とする賃貸借契約を締結するなどして、その金銭を手付金として授受することにより、法的に問題なく手付金を没収することができるようにしておく必要がある(民法第557条第1項)。しかしそのためには、貴社(媒介業者)が借主(親権者)に対し、あらかじめ重要事項の説明をし、かつ、貸主との間の契約の締結も書面でキチンと行う必要がある(宅地建物取引業法第35条、第37条)。
 質問2.について ― 賃料の約1年分とか6か月分の額の違約金というのは、合理性を欠き、無効とされる可能性がある。なぜならば、いかに学生向けの賃貸マンションといえども、そのマンションが丸々1年間あるいは6か月間未入居のままということは、通常考えられないからである。それに引き換え、賃料の2~3か月分程度の額の違約金ということであれば、その1年の間に他の学生が入居することも考えられるし、そのマンションの入居者がすべて同じ大学の学生でなければならないとか、学生以外の入居を認めないというような特別な事情でもない限り、貸主には何らかのかたちである程度の収益が確保できると考えられるので、合理性のある特約として、有効と認められる可能性がある。
 なお、このような始期到来前のキャンセル(解除)に対する違約金を定めるのであれば、始期到来後の中途解約についても、借主からの解約申入れは、たとえば6か月前の予告を必要とするというような方法も考えられるが、問題は、そのような賃貸借契約や特約が一般の借主(親権者)に受け入れられるかどうかということであろう。

参照条文

 民法第557条(手付)
 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
   (略)
 消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
   当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
   (略)
 同法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
 民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
 宅地建物取引業法第35条(重要事項の説明等)
 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、取引主任者をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第5号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
 一~十四 (略)
  ~⑤(略)
 同法第37条(書面の交付)
 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、みずから当事者として契約を締結したときはその相手方に、(中略)、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次の各号に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
 一~十二 (略)
   (略)
 同法施行規則第16条の12(法第47条の2第3項の国土交通省令・内閣府令及び同項の国土交通省令で定める行為)
 法第47条の2第3項の国土交通省令・内閣府令及び同項の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
   (略)
   宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預かり金を返還することを拒むこと。
   (略)

監修者のコメント

 質問1.に関して、申込金ではなく、手付金として受領するという場合は、回答のとおり、重要事項説明も行い、予約又は契約を締結することが前提となるが、その場合のキャンセルで手付没収ができるのは貸主であって、仲介業者ではない。仲介業者は、契約成立の前提で仲介手数料を受領できる。
 質問2.は、消費者契約法第9条第1号の適用の問題で、裁判例はまだないと思われるが、特定地域の大学生専用賃貸マンションで、毎年4月直前にキャンセルされると、6か月あるいは1年間、空室になってしまうのが通常であるとの立証(証明)がなされないと、そこまでの違約金条項は一部無効とされる余地がある。

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