不動産コンサルティング技能制度 発足25周年記念事業トークセッション「ストック活用コンサルティングが明日を創る」
不動産流通推進センターは7月20日、「不動産コンサルティング技能制度」発足25周年を記念し、トークセッション「ストック活用コンサルティングが明日を創る」を開催した。その模様は全国にライブ中継された。ライブはセンターとしても初の試み。その意気込みにふさわしい白熱の議論が展開された。ここでは、その中から主な論点を紹介する。
リノベーション住宅推進協議会会長
内山博文氏
リノベーション住宅推進協議会会長
内山博文
スタイルオブ東京株式会社社長
藤木賀子氏
スタイルオブ東京株式会社社長
藤木賀子
明海大学不動産学部長教授
中城康彦氏
明海大学不動産学部長 教授
中城康彦
住宅新報社特別編集委員・論説主幹
本多信博氏
住宅新報社特別編集委員・論説主幹
本多信博
司会
皆様、こんにちは。本日は公益財団法人不動産流通推進センターが主催するトーク・セッションにご来場いただきまして誠にありがとうございます。

私は、事業推進室広報を担当しております黒川眞理と申します。おかげさまで、不動産コンサルティングマスター、旧コンサルティング技能登録の制度が発足してから25周年を迎えました。これからも、不動産コンサルティングの一層の周知を図り、仲介取引サービスの延長とは異なる業務分野を確立していくことが当センターの責務と考えております。ではここからは、住宅新報社特別編集委員・論説主幹の本多信博様に進行をお願いしたいと思います。
本多
住宅新報の本多と申します。本日は、豊かな価値を生むストック活用とはどういうものか、その今日的意義について議論を進めていきたいと思います。最初にリノベーション市場の現状についてどう見ていますか。
内山
私が会長をしているリノベーション住宅推進協議会は、業界とエンドユーザーに対してリノベーション住宅の啓蒙を進めていく団体です。現在会員が全国に800社、全ての地点に支部があります。年間百数十社ずつ会員が増えています。

最近は特にITと不動産、それにリフォームを絡めた新しいタイプの企業も参加してきています。ただ、リノベーション業界はいまだ、バリューチェーン(業界内の仕組みづくり)が構築されていません。金融、不動産、設計、施工といった面での定まったつながりがありませんから、あらたに参入してもすぐに儲かるビジネスモデルは作りにくいでしょう。誰にでもできる仕事ではありません。
本多
深いですね(笑)。藤木さんはどう見ていますか。

信頼される仲介とは?

藤木
スタイルオブ東京という会社を経営している藤木です。基本的には不動産売買の仲介会社ですが、もともとコンサルをしたくて会社を立ち上げました。10年前ですが、その頃はコンサルといってもフィーが取れませんでした。しかし、当時から中古を買ってリフォームするという人が徐々に増えてきていたので、リフォームと不動産サービスを一体化すれば絶対に成功すると思っていました。

あくまでも入り口としては中立のコンサルから入って、成約に結びついたら仲介手数料をいただきます。今はそれがコンサルのフィーの取り方かなと考えています。しかし、本当は、不動産コンサルはもっと価値があって、もう少し別のフィーの頂き方があるのではないかと最近は強く思っています。
本多
まずはコンサルで顧客の信頼を得るのが基本だということですよね。ところで国土交通省も今、中古を買ってリノベーションやリフォームをして家を持つという市場を活性化しようということで、中古市場活性化策を進めています。中城さんはこの中古市場活性化策について、特にどのようなところに期待されていますか。
中城
空き家の問題が日本経済にとって負のスパイラルの入り口にならないようにしていただきたいと思っています。そういう意味では、コンサルと仲介の融合・一体化が不可欠でしょう。

また、宅建業法の改正で、インスペクションがかなり重視される仕組みになりましたが、これはまだ入り口部分に過ぎない。つまり基本的には建築士が調べて、それを宅建取引士が説明し、関連する形で複数の専門家が協働化していく仕組みをつくっていくことになります。

同時に、この仕組みを意義あるものにするためには消費者も、そうした専門家を使う賢さを持つようになっていただきたいと思います。
本多
内山さんはどんな点に期待を。
内山
一点だけ申し上げたいのは、旧耐震のマンションや住宅についても目を向けていただきたいということです。今国会で決まった「安心R住宅」も、基本的に瑕疵保険に入っていれば「R住宅認定」を受けられるということになりそうですが、結果的に新耐震もしくは新耐震同等の性能がないと瑕疵保険に入れません。

何を隠そう、日本に一番多い戸建て住宅に目を向けてみると、そのほとんどが旧耐震で古いものがまだまだ多い。これを全部壊せということなのでしょうか。確かに、耐震補強に対する補助金や助成金のようなものはかなり付くようにはなっていますが、地方の方がそこまでお金をかけて耐震補強するかというと非現実的なわけです。そうした現実に目を向けた制度設計に期待したいのです。
本多
確かにあらゆる助成制度は新耐震基準を満たすことが前提になっていますね。国交省は、中古市場の規模を、13年の4兆円から2025年の8兆円ということで倍増する目標を住生活基本計画で立てています。実現のためには、かなり柔軟な施策が必要という気もします。新築の代わりということではなくて、中古ならではの魅力をどう引き出していくか、そうした視点が市場活性化策には必要なのかもしれません。中城さん、いかがでしょうか。
中城
ご指摘のとおりだと思います。ただ、そうはいっても、中古を買った人にも恐らく、買い替えが発生しますね。そうすると買ったものが次はどれだけで売れるかということが大事になってきます。ですから、米国のように安く買ってから追加投資することが、次に転売するときの価値に表れる仕組みが必要だと思います。その一つがインスペクションでしょう。

中古住宅で自分らしさ

本多
中古が伸びている理由は、やはり新築ではあきたらない人たちが増えているからではないでしょうか。主体的に、自分らしい住まいを手に入れたい。そういう願望が住宅市場でも強まってきている。言い換えると、日本でも本格的な住宅コンサルティングの時代が始まろうとしているのだと思います。
藤木
そうだと思います。でも現場にいると、本当にコンサルは難しいと感じてしまいます。そこで当社が今何をしているかというと、最初に相談会を開いて、そこに来られる方とお話をすることから始めます。

1回1時間~1時間半くらいで、ほぼ絞り込みができます。買うか、買わないか、何をしたいのか、お客様のコーチングをしながら、本当のニーズを探っていきます。

しかし、こうしたコンサルに時間をかけると問題が発生します。中古物件は流通スピードが半端ではないのです。物件を買うべきか、見合わせるべきか相談しているうちに物件がなくなってしまいます。いい物件は1週間が勝負でしょうね。
本多
本当にそうですね。普通の仲介会社がコンサルティング仲介を手掛けたがらない大きな理由が実はそこにあるように思います。悩ましく、難しい問題です。

では次に、今話題になっている空き家や空き地、これらをどう地域の再生、活性化につなげていくかというテーマに移りたいと思います。

これからの不動産コンサルティングには、いわゆるまちづくりの視点が欠かせないと思うからですが、内山さん、いかがでしょう。
内山
金沢で、築50年のビルをホテルに改装しました。仏壇屋さんの所有で検査済証がありませんでした。これを簡易宿泊所に用途変更したわけです。常識的には検査済証がないと用途変更ができないわけですが、実は今、内閣府の規制緩和の中でも検査済証のない物件の活用方法が議論されています。民間の検査機関でも役所でも、基本的には何らかのエビデンスがあれば用途変更を受け付けてくれる可能性が出てきています。

このホテルは地域や行政の方々にも使ってもらっています。金沢は伝統工芸が有名な地域ですから、若手のアーティストなども多いので、そういう方々に創作発表の場として使ってもらったり、地域のまちおこしをしている人たちがここで、プレゼンテーションしたりしています。

地域に何があればいいかということを考えながら展開していけば、やれることはいろいろあるのかなと実感しています。
本多
お話を伺うほどコンサルタントの仕事がいかに難しいかということも分かります。幅広い知識や経験が必要だろうし、自分の専門分野も持っていなければならない。

素朴な質問ですが優秀なコンサルタントになるにはどうしたらいいのでしょう(笑)。

AIの時代。人間は何を

藤木
不動産に係る専門職といえば土地家屋調査士や司法書士などがあると思いますが、将来的には弁護士業でさえ、AI(人工知能)に替わるのではないかと言われる時代です。これからは人間ができることは何かを真剣に考えなければいけません。

私はコンサルタントとしていつも、お客様が言っていることを本当なのかと疑うことから始めます。お客様がこういう物件が欲しいといわれたときにはわざと「お客さん、本当にそんなことを考えているんですか」というようなリアクションをしてちょっと驚かします。するとお客さんは真剣に考え直します。そうやって本音を引き出してから、専門家を集めての最強のチームを組みます。そういう専門家たちを束ねるプロデューサー的な存在になるのが不動産コンサルタントの役割だと思います。
本多
やはりワンストップ体制で応じるチーム力やネットワークが鍵になりますね。
内山
ただ、もちろんチーム力も大事ですが、その前段として、コンサルタント一人ひとりの心構えについて申し上げたいことがあります。

それは「常識を疑え」ということです。例えば、検査済証がない物件の活用という話を先ほどしたように、僕らは結構業界の慣習によって自分の行動を抑制している部分があります。それが柔軟なコンサルタントを阻む大きな要因になっているのです。
本多
確かにそうですね。では、そろそろ最後の質問です。今日は、ストック活用をテーマに議論してきましたが、最終目的は新築市場に対して不動産の中古市場をどう活性化していくかということです。一言ずつお願いします。

借家権にも売買市場を

中城
不動産流通には売買と賃貸がありますが、これをシームレスにすることが大事なのではないかと思います。つまり、強くて制限のない所有権と、空間的にも時間的にも制約がある借家権ですね。中間に借地権がありますが。これらが大変硬直的です。

国土交通省は最近、「DIY賃貸」の普及を進めていまして、大変大事な試みだと思いますが、例えば借家権が売買できれば借家人も追加投資したことが資産になる。今の借家権は借地借家法で権利は守られているが、資産を形成することは不可能になっています。これを可能にすることを考えるべきではないかと思います。
本多
そうですね。中古市場の活性化の議論で少し欠けているような気がするのは、賃貸市場とどううまく連携させるかということでしょう。藤木さん、いかがですか。
藤木
何でもかんでもリノベーションするべきとは考えていません。また、お客様のニーズもありますが、壊すべきものと壊さない建物を不動産の価値という観点から峻別することも重要です。

例えば高度成長期に建てられた粗悪な建て売り一戸建てを今の性能基準に直すには相当お金がかかります。ですから、中古をわざわざ買って性能を新築並みにしようとするだけなら、今の建て売りを買ったほうがいいわけです。

ですから、壊すべきものは壊して、100年もつような住宅に建て替えるアドバイスこそ必要でしょう。これからはどうしたら長く使えるかという視点で建物を捉えることが大事ではないかと思います。

リノベとは“問題解決”

内山
リノベーションは何かと聞かれたら、それは「問題解決です」と答えます。小さな一軒家のリフォームも家庭の問題解決だし、大きなビル1棟は、オーナーの収益改善や地域活性化という意味での問題解決でしょう。ただ、現代は問題が複雑化していく一方で簡単にはソリューションが見出せません。

そこで、僕らはいまこそ未来に思いを馳せるべきなのです。今はこういう法規制があるから、これしかできませんという発想ではなく、未来はこうあるべきだから、法律はこうあるべきではないかと、逆算的に変えていこうという力がないと、世の中は変えられないと思います。
本多
ありがとうございました。まさに想像力ですね。想像力を身につけるには、私は鋭い感性を持つことが必要で、鋭い感性を持つには自分らしい住まいに住むことだと考えています。では、中城さん、まとめをお願いします。
中城
今日の議論はストック活用時代の本質は何かという問い掛けだったと思います。二点指摘したいと思います。第一は、先人の英知を引き継いで不動産を今に生かしながら、未来に引き継ぐということです。その間に6つのウィナーをつなぎます。すなわち、利用者、所有者、地域、その都市、国、最後は地球です。

一方で、それが自己犠牲に基づくものでは生きていく意味がないので、二点目としては、あたかも家庭菜園のように自分の意思で形をつくり、成果を生み出していく。まさに自己実現としての不動産、住まいであれば暮らしの舞台をつくるわけです。要するに自己実現と生きる喜びがセットになっている。それがこれからの時代を生きる私たちの役割だと思います。
本多
不動産コンサルタントとしての責務と喜びをうまく表現していただきました。
本日は、これからの不動産コンサルティングの主流になるであろうストック活用についてお話を伺ってきました。成熟社会を迎え、フローではなく、ストックに注目する不動産ビジネスの重要性が明らかになったのではないかと思います。パネラーの皆様、本日は貴重なご意見をありがとうございました。
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