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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1710-B-0236
媒介業者は買主の支払能力について調査する義務はあるか

 当社は媒介業者であるが、売買契約の媒介をしたが、買主が資金調達不調により手付解除をした。売主は、買主の支払能力を調査するのは媒介業者の義務であるとして、媒介報酬の支払を拒んでいる。

事実関係

 当社は不動産売買の媒介業者である。2か月前に収益物件の賃貸マンション一棟の売買契約の媒介をしたが、買主の資金手当てが難航し、決済日までに残代金の支払が不可能となり、買主からの申し入れにより手付解除となった。買主によると、手付金は自己資金で賄ったが、手付金以外の残代金及び諸費用については、金融商品取引による投資利益を見込んでいたが、金融情勢の変化により予定していた運用益が得られる見込みが立たず、売買解約は解除したいとのことであった。当社は、買主は、収益物件を購入するいわゆる投資家であるとの認識は持っていたが、資金計画についての詳細は特に確認をしていなかった。
 当社は、買主の手付放棄による解除の覚書を作成した。契約解除に伴い、当社は売主に媒介報酬の残額の請求をしたところ、売主は、当社が買主の支払能力についての事前の調査をしなかったために契約解除に至ったのであり、報酬の残額を支払う義務はないと拒んでいる。売主は、媒介業者が売主の売却動機が資金繰りであり、早期に、確実に売却しなければならない事情を知っており、買主の資金計画を把握していなかった媒介業者は、業務上の注意義務を怠ったと主張している。事前に、当社が買主に対し支払代金の調達法をヒヤリングし、突っ込んで確認・調査すれば、買主の資金調達方法に不安があり、資金不足は明らかとなり、代金調達が確実でなければ、当該買主との売買契約は避けられたと当社の業務上の落ち度を指摘している。

質 問

 当社は、契約前に買主の資金計画について詳細な確認及び支払い能力についての調査はしていないが、媒介業者は、契約前に買主の支払能力の調査をする義務があるのか。

回 答

1. 結 論
 媒介業者は、原則、買主の支払能力について、調査する義務はないが、調査すべき特段の事情があるときは、調査する義務を負う場合がある。
2. 理 由
 宅建業者の不動産売却の媒介業務は、媒介契約に基づき、種々の販売活動により買主を探索することであり、その結果、購入を希望する者との間で売買契約を成立させれば、義務を履行したことになる(標準専任媒介契約約款第4条)。宅建業者は、買主の売買代金支払いの調査義務を負うものではなく、仮に売買契約成立後に、買主が約定の代金を支払えなかったときは、約定による手付金の放棄あるいは違約による契約解除をすればよく、売主は手付金額又は違約金額が受領でき、相談ケースのように早期に売買代金が入らないという、期限の利益は逸失するかもしれないが、金銭的損害が発生することはない。よって、原則として、宅建業者は、買主の売買代金支払能力の有無についての調査義務を負うものではないと解されている。また、当該契約が債務不履行その他の理由によって解除となっても、宅建業者の媒介行為に対する報酬請求権には何らの影響を及ぼさないのが原則であるべきと解されている(【参照判例】参照)。
 しかしながら、宅建業者が行う媒介契約において、媒介業者において買主の履行能力に不安があることを知悉(ちしつ。詳しく知ること)し、もしくはこれを容易に知り得た等の特段の事情がある場合には、媒介業者が買主の支払能力について調査する義務を負う場合もあるものと解されている(【参照判例】参照)。
 不動産媒介契約は、法律上の準委任契約であり、受任者である宅建業者は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理しなければならない(民法第644条、同法第656条)。また、宅建業法でも同様に、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならないことを規定している(宅地建物取引業法第31条)。宅建業者が、これに反した行為をし、受任の目的が達せられないときは、損害の賠償義務を負うこともあり(民法第415条)、受任者として受任行為の履行が不完全のときは、その報酬は減額される場合がある(同法第648条第3項)。
 宅建業者は、不動産売買の媒介にあたり、買主の支払能力を調査する義務はないものの、資金計画を確認し、支払能力に不安や不審な点があれば、さらに詳細に聞き取りや調査し、裏付けを得るようにしたい。

参照条文

 民法第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。
 同法第644条(受任者の注意義務)
 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
 同法第648条(受任者の報酬)
 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。
   委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
 同法第656条(準委任)
 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
 宅地建物取引業法第31条(宅地建物取引業者の業務処理の原則)
 宅地建物取引業者は、取引の関係者に対し、信義を旨とし、誠実にその業務を行なわなければならない。
 (略)
 標準専任媒介契約約款第4条(宅地建物取引業者の義務等)
 乙は、次の事項を履行する義務を負います。
 契約の相手方を探索するとともに、契約の相手方との契約条件の調整等を行い、契約の成立に向けて積極的に努力すること。
 (以下略)

参照判例

 神戸地裁平成2年9月6日 判タ748号173頁(要旨)
 仲介人は、原則として、売買等の契約の成立を仲介するものであって、買受人の支払能力の有無についてまで一々調査する義務はないといってよく、したがって、仲介人の仲介行為によって売買契約が成立した後に当該契約が債務不履行その他の理由によって解除となっても、仲介人の仲介行為に対する報酬請求権には何らの影響を及ぼさないのが原則であるべきである。
 しかしながら、-(中略)- 仲介人において買受人の履行能力に不安があることを知悉し、もしくはこれを容易に知り得た等の特段の事情がある場合には、仲介人が買受人の支払能力について調査する義務を負う場合もあるものと解するのが相当である。

監修者のコメント

 質問の売買の場合の買主の支払能力や賃貸借の場合の賃借人の支払能力について媒介業者が売主や賃貸人から責任追及されるケースは、裁判にまでならないとしても、よく見られる。売主、貸主の言い分は、仲介する以上、相手の支払能力も調査すべきだというものであるが、回答のとおり、積極的な調査義務はなく、特に疑うべき事情があるときには可能な限りの調査をすべきであると言える。
 ただ、問題が生じたときは、トラブルに巻き込まれる可能性があるので、売買のときは、代金の調達等について聞き取り調査をし、賃貸借のときは賃借人の収入を証明する書類の写しを提出してもらうなどの方法を取ることが望まれる。

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