HOME > 不動産相談 > 売買 > 既存住宅の売買契約で引渡された設備が使用不能だった場合、売主の修復に要する費用負担の相当額

不動産相談

過去の事例(年別)

  • 賃貸
  • 売買

ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1708-B-0234
既存住宅の売買契約で引渡された設備が使用不能だった場合、売主の修復に要する費用負担の相当額

 当社は、既存住宅の売買の媒介をした。建物引渡後に設備に不具合が判明した。当該設備は耐用年数が経過しているため、修理部品も同機種もない。買主は新品への交換を要求しているが、売主は、修理費用相当額の支払を主張している。

事実関係

 当社は、不動産売買の仲介業者である。築20年の一戸建既存住宅の仲介をした。売主は、1年前から海外に転勤していたが、海外転勤は長期になることが確実となったので国内の自宅を売却した。売主から買主へ物件を引渡してから1週間後に買主は家族とともに引越したが、ガス給湯器が使用できないと当社に連絡してきた。当社も立会って確認したところ作動しなかった。
 売買契約には売主本人が立会し、売主が告知した設備表には、給湯器「有」、故障・不具合「無」と記載した。給湯器は、台所と、風呂場、洗面所に給湯するようになっている。契約は、売主の主要構造物は3か月間、設備については2週間の瑕疵担保責任の特約を約定をした。契約の決済は、売主が帰国できなかったので、契約時に所有権移転書類を司法書士に預け、決済日に買主が代金の残額を振込んだ。物件の引渡は当社が預かっていた鍵を買主に渡すことで終了したので売主と買主の引渡の立会及び設備の稼働の確認はしなかった。
 当社は、善後策を講じるため売主に連絡をしたが、国外に居住しているということもあり、連絡が取れるまで数日を要した。当社が売主と連絡を取っている間に、買主は、給湯器メーカの修理会社で点検を依頼したところ、経年劣化と長期間使用していなかったことが原因で、修理では故障を直すことは難しく、交換を奨められた。買主は、売主には瑕疵担保責任があり、売主に設備の修理や交換を請求するところであるが、当社から売主への連絡も取れず、日常生活にも支障があったので、給湯器を新品に交換した。交換にかかった製品代金と工事費の全額は売主に請求すると言っている。
 当社と連絡の取れた売主は、給湯器の故障についての認識はなかった。契約の半年前に一時帰国した際に、売却物件である自宅で過ごしたときは使用できたので、設備表に故障・不具合「無」と記載したとのことであるが、当社が立会って作動しないのであれば、瑕疵担保責任を負うことはやぶさかでないが、買主の交換費用全額の請求に対して、設備は10年前に設置したので、売買対象は中古品であり、修理代程度は負担するが、新品設備の交換費用全額の支払は納得できないと言っている。

質 問

 売主の瑕疵担保責任を約定した売買契約において、売主が引き渡した設備に瑕疵があった場合、売主はその設備を新品に交換しなくてはならないのか。

回 答

1.  結 論
 売主の瑕疵担保責任は、当該瑕疵を使用できるように修繕すれば足り、新品に交換する必要はない。売主は、中古品があれば中古品へ交換するか、中古品価格相当の金額支払いにより責任を履行したといえる。
2.  理 由
 既存住宅の売買では、建物引渡後に、引渡対象である設備の不具合を巡って売主と買主との間で揉めることが多くみられる。売主が、設備を引渡し、故障無と申告したにもかかわらず、故障があった場合、買主は設備が故障しているので設備の交換を要求し、売主は引渡時に故障はなかったと修復を拒否して対立が起こる。設備には、相談の給湯器を始め、台所設備、エアコン、トイレ、床暖房等多岐なものがある。一般的な売買契約では設備表が契約書の附属書類となっており、建物に付属している設備について売主が申告するものである。申告は、「設備の有無(無の場合は契約時にあるが撤去するものを含む)」、「故障・不具合の有無」、「故障の・不具合の箇所及び内容」等を記載するものである。契約書には、設備が「有」かつ故障・不具合を「無」にしたときは、売主は買主にその設備が使用できる状態で引渡すことを約定するものである。消費者間の取引では、土地及び建物主要構造の瑕疵や設備の瑕疵について免責にすることも可能であるが、設備が故障等により使用できない場合、多くの契約では、買主は売主に対して約定期間内に修復を請求できる約定をしている。
 売主が、引渡の直前まで使用できていた設備であれば、引渡後の使用についても不具合は起こりにくいであろうが、相談のように売主が空家にしていて、引渡まで長期間使用していなかった場合は、不具合の生じる可能性が高くなる。
 買主が設備を使用できないときには売主は約定により修復する義務があるが、修復については設備が使用できる状態にすればよいと考えられている。売主の負担により修理すれば足りる。しかし、必ずしも、設備の修理ができない場合がある。例えば、各設備メーカーは、一定期間後は修理部品を備えていないことがある。部品がないときは、交換する以外の方法がなくなってしまう。交換となれば、買主は新品の交換を期待するであろう。売主にとっては負担が過大となってしまう。売買当事者間の折り合いがつかなければ争いとなるが、裁判例では、「本件給湯器は中古品であるから、本件瑕疵と相当因果関係が認められるのは、中古品の給湯器への交換費用相当額に限られるというべきである」(【参照判例】参照)と、設備表に記載された設備対象は中古品であり、交換の場合でも売主の負担する費用の額は、中古品交換相当額として、新品への交換や新品相当の費用を否定している。
 媒介業者は、既存住宅売買の媒介を受ける際は、売主からの申告のみを信頼せず、業者自ら設備を操作して作動の可否を確認することが必要であろう。また、買主への引渡しは鍵の授受だけで終わらせるのでなく、売主と買主、業者が立会の下に確認すれば設備不具合によるトラブルは防げるであろう。特に、空家になっていた物件は念入りに設備を確認すべきである。

参照条文

 民法第566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
・③ (略)
 同法第570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

参照判例

 東京地裁平成26年12月9日判決(要旨)
 本件給湯器は中古品であるから、本件瑕疵と相当因果関係が認められるのは、中古品の給湯器への交換費用相当額に限られるというべきである。(中略)また、瑕疵担保責任に基づく損害賠償は、瑕疵と相当因果関係のある損害の賠償責任を認めるものであり、債務者に対する制裁の趣旨で賠償責任を認めるものではないから、売主が虚偽の設備表を買主に示したことから買主が実際に支払義務を負った交換費用を売主が負担すべきとの買主の主張も採用できない。

監修者のコメント

 設備に不具合があった場合の売主の瑕疵担保責任は、損害賠償すなわち、それに代わる故障の修理費用の負担が原則である。ところが、本ケースのように修理が不能という場合は、設備の交換をせざるを得ないが、その交換品は、参照判例の言うように、あくまでも経年劣化状況が同等の中古品であり、その中古品がなければ、中古品相当額の損害賠償である。なぜなら、売買対象設備に不具合があったために、中古品を購入した買主が新品を取得できたのでは予想もしなかった利益を受けることになり、不合理だからである。本件でその中古品もないというのであれば、専門業者に中古品のおおよその価格を聴き、その金額を売主が負担し、それを超える金額を買主が負担するのが公平であろう。ただ、本ケースでは仲介業者にも落ち度がある。売主が海外にいて6カ月も空家になっていたというのであるから、設備について点検すべきであって、また容易に点検できたケースである。このようなケースで仲介業者の調査義務違反を問われ、責任が肯定された事案もある。したがって、仲介業者も受領した媒介報酬からいくらかを負担すべきである。仮に訴訟になったことを仮定すると、新品交換費用を、売主、買主及び仲介業者がそれぞれ3分の1ずつ負担するという和解案が裁判所から提示される可能性も十分にあり得る。

より詳しく学ぶための関連リンク

“スコア”テキスト丸ごと公開! 「瑕疵担保責任(瑕疵担保責任の期間と内容)」

ページトップへ