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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1708-B-0233
売主が非居住者の場合の所得税額の源泉徴収義務

 当社は、売買の媒介業者である。海外居住の売主から自宅売買の依頼を相談されている。買主が売主に売買代金を支払うときは、売買金額から所得税額を控除して、差し引いた金額を授受する場合があると聞いたが、どのような場合に対象となるのか。

事実関係

 当社は、不動産の媒介業者である。ある法人の海外支店に転勤になった売主から国内所在の不動産の媒介依頼を相談されている。依頼者は、2年前に3年間の予定で日本企業の海外支店に転勤をしたが、海外支店の勤務が延長となり長期になる可能性があるため、日本の自宅を売却して現在住んでいる場所に自宅の購入を検討している。売却予定の不動産は、都内の住宅地にあり、親から相続したもので、売却価格は2億円前後の見込みである。
 他の宅建業者と当該物件の相場について意見交換したときに、売主が海外在住のときは、買主は売買価額の一定割合を源泉徴収して、税務署に納める必要があると言っている。当社は、海外居住者の不動産売却の媒介は経験がなく、おそらくほかの宅建業者も海外居住者の不動産売却についての税制はよく知らないのではないかと思われる。

質 問

1.  売主が海外に居住しているときは、買主は売買代金のうちから所得税の源泉徴収をしなければならないのか。
2.  海外に居住する賃貸人が、不動産を賃貸している場合も、賃借人が源泉徴収をすることはあるのか。

回 答

1.  結 論
 質問1.について ― 売主が海外居住している非居住者の場合、一定の条件に該当するときは、買主は不動産の売買代金支払いの際に一定金額を源泉徴収し、税務署に支払う義務がある。
 質問2.について ― 賃貸人が海外に居住している非居住者の場合、一定の条件に該当するときは、賃借人は賃料等の支払の際に一定金額を源泉徴収し、税務署に支払う義務がある。
2.  理 由
について
 非居住者とは、居住者以外の個人のことをいう。居住者は、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、居住者以外の個人を所得税法上の非居住者という(所得税法第2条第1項第3号、同5号)。非居住者は、日本国内の財産の譲渡や所得に対して、日本の所得税を支払う義務がある(同法第5条)。
 非居住者や外国法人から日本国内の土地等を購入して、その売買代金(譲渡対価)を国内で支払う者は、非居住者等に対して対価を支払う際は、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収し、税務署に支払う義務がある(同法第212条第1項)。この土地等には、土地や土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備、構築物が該当し、源泉徴収の所得の対象である(同法第161条第1項第5号)。非居住者が日本国内にある不動産を売却したときの所得に対しては、日本の所得税が課税され(同法第5条、同法第7条)、原則として確定申告が必要であるため、非居住者の申告漏れ等を防止するための制度といえる。
 購入者が、①個人の場合で、②購入者本人又は購入者の親族(注)の居住用、かつ③売買代金が1億円以下のときは、政令により、購入者の源泉徴収義務はない(所得税法施行令第281条の3)。したがって、購入者が法人の場合、購入者及びその親族の非居住用の場合、購入者が個人であっても売買代金1億円超の場合は、購入者は源泉徴収の義務が発生する。
 源泉徴収の対象となる売買代金については、支払う者(購入者)が、売買代金支払いの際に源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、国(税務署)に納付する必要がある。所得税の徴収は、手付金、内金、残代金の支払いごとにしなければならない(同法第212条)。源泉徴収する税額は、支払額の10%(同法第213条第1項第2号)と復興所得税率(所得税額の2.1%)の合計の10.21%である。例えば、手付金が500万円の場合、買主は、源泉所得税額51万5百円を徴収し、差引金額の448万9500円を売主に対して支払うことになる。
 (注)親族とは、配偶者、6親等内の血族及び3親等内の姻族をいう。
について
 不動産等の賃貸借についても、賃貸人が海外居住の場合、賃借人に源泉徴収義務のある場合がある(同法第161条第1項第7号)。賃貸人が非居住者で、賃借人が、法人等及び個人でも非居住であれば源泉徴収義務が生じる。なお、賃借人が個人で賃借人本人又は親族の居住用の場合は、源泉徴収義務がないが(所得税法施行令第328条)、賃借人が、法人等及び個人でも非居住であれば源泉徴収義務が生じる。
 源泉徴収は、賃料等の支払ごとに所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国(税務署)に納付する必要がある。
 源泉徴収する税額は、支払額の20%(同法第213条第1項第1号)と復興所得税率(所得税額の2.1%)の合計の20.42%である。例えば、月額賃料が20万円のときは、賃借人は、源泉所得税額4万840円の所得税を徴収し、差引金額の15万9160円を賃貸人に対して支払うことになる。
 源泉徴収をしなかった場合でも、買主・賃借人が納税義務者であり自己の資金で納税しなければならない。媒介業者は取引にあたり、売主・賃貸人が海外居住のときには、源泉徴収もれがないよう、注意が必要である。

参照条文

 所得税法第2条(定義)
 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
・二 (略)
 居住者 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。
 (略)
 非居住者 居住者以外の個人をいう。
~四十八 (略)
 (略)
 同法第5条(納税義務者)
 (略)
 非居住者は、次に掲げる場合には、この法律により、所得税を納める義務がある。
 第161条第1項(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得を有するとき。
 (略)
・④ (略)
 同法第7条(課税所得の範囲)
 所得税は、次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める所得について課する。
〜二 (略)
 非居住者 第164条第1項各号(非居住者に対する課税の方法)に掲げる非居住者の区分に応じそれぞれ同項各号及び同条第2項各号に定める国内源泉所得
 同法第161条(国内源泉所得)
 この編において「国内源泉所得」とは、次に掲げるものをいう。
〜四 (略)
 国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物の譲渡による対価(政令で定めるものを除く。)
 (略)
 国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利若しくは採石法の規定による採石権の貸付け(地上権又は採石権の設定その他他人に不動産、不動産の上に存する権利又は採石権を使用させる一切の行為を含む。)、鉱業法の規定による租鉱権の設定又は居住者若しくは内国法人に対する船舶若しくは航空機の貸付けによる対価
〜十七 (略)
・③ (略)
 同法第212条(源泉徴収義務)
 非居住者に対し国内において第161条第1項第4号から第16号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得-(中略)-の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
〜⑤ (略)
 同法第213条(徴収税額)
 前条第1項の規定により徴収すべき所得税の額は、次の各号の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
 前条第1項に規定する国内源泉所得
その金額に百分の二十の税率を乗じて計算した金額
 第161条第1項第5号に掲げる国内源泉所得 その金額に百分の十の税率を乗じて計算した金額
 (略)
 (略)
 所得税法施行令第281条の3(国内にある土地等の譲渡による対価)
 法第161条第1項第5号(国内源泉所得)に規定する政令で定める対価は、土地等(国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物をいう。以下この条において同じ。)の譲渡による対価(その金額が一億円を超えるものを除く。)で、当該土地等を自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるものとする。
 同施行令第328条(源泉徴収を要しない国内源泉所得)
 法第212条第第1項(源泉徴収義務)に規定する政令で定める国内源泉所得は、次に掲げる国内源泉所得とする。
 (略)
 非居住者又は外国法人が有する土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋(以下この号において「土地家屋等」という。)に係る法第161条第1項第7号に掲げる対価で、当該土地家屋等を自己又はその親族の居住の用に供するために借り受けた個人から支払われるもの
 (略)

監修者のコメント

 非居住者が土地等の譲渡対価を受けた場合の源泉徴収制度は、平成2年に導入された制度であるが、その趣旨は、国内にある不動産を譲渡した非居住者が、確定申告の期限前に譲渡代金を国外に持ち出し、無申告のまま出国する事例があり、さりとて申告期限前にこれを保全する手段もなく、また申告期限後の決定処分をしても実際に所得税を徴収することは非常に困難という事情を考慮し、適正な課税を確保するために設けられたものである。
 すなわち、回答にある要件に該当する契約の場合、買主又は賃借人が自ら支払う対価から一定金額を源泉徴収しなければならず、これをしなかった場合でも徴収義務者として税務署に納付しなければならない。
 売買の場合、売買金額が1億円以下で、かつ個人が、自己または親族の居住用として購入する場合は問題とならないが、散見されるのは不動産会社がマンション用地、その他の事業用地を買収する際、売主が非居住者であることに気がつかず、多額の納付義務を負わされる事例である。これに関して、処分行政庁の処分の取消しを求めて裁判になることがある。要する諸事情から売主が非居住者とは考えなかった正答な理由があったかが、一つの争点であるが、一般的には裁判所は正答な理由は認めない極めて固い形式的判断をしている。1億円を超える売買にあっては、売主について慎重な上に慎重な調査をする必要がある。

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