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また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1708-B-0232
インターネットを利用しない区分所有者も、インターネット利用料金を支払う義務はあるのか

 マンション購入を希望する顧客に物件を紹介したところ、管理費にインターネット利用料金が含まれており、近隣の同種のマンションの管理費よりも割高であることがわかった。顧客は、利用しないものにまで一律に利用料金を支払わなければいけないのは不公平であり、利用料金相当額については、支払いたくないと言っている。こういった場合、支払わないことはできるのか。

事実関係

 当社は、不動産の仲介業者である。マンションの購入希望者に手頃な中古マンションを紹介したところ、購入する方向で検討しはじめた。しかし、顧客から、管理費がほかのマンションよりも高いようだと指摘されたので、そのマンションの管理組合に確認してみたところ、インターネット料金が含まれていることが判明した。顧客は、マンションは気に入ったので購入したいが、インターネットを利用しない者からも利用料金を徴収するのは納得できないし、管理規約にその旨が記載されているのは不公平なので、利用料金は支払いたくないと言っている。

質 問

1.  インターネットを利用しない区分所有者も、管理費に含まれているインターネット利用料金を支払わなければならないのか。
2.  インターネットを利用してもしなくても、利用料金を同一に支払わなければならないというマンション管理規約は不公平であると思うが、このような管理規約は有効なのか。

回 答

1.  結 論
 質問1について ― インターネットサービスを利用しない区分所有者も、インターネット利用料金の支払義務を負うものと考える。
 質問2について ― マンションの共用部分の設備の利用者と非利用者が存在していても、共用部分の維持・管理について一律に負担することは、合理性があれば不公平とはいえない。よって、利用料金を一律に徴する旨を定めた管理規約は有効である。
2.  理 由
⑵について
 マンションの管理や使用に関する、区分所有者相互間の事項は規約で定めることができるとされており、マンション管理業務にかかる管理費の負担等についても、規約によって定められている(建物の区分所有等に関する法律第30条)。
 しかし、管理費に含まれている費用については、今までも多くの問題点が指摘されている。国土交通省のマンション管理の適正化に関する指針(改正 平成28年3月14日)でも、かねてより管理費からの自治会費及び町内会費負担が問題になっていたが、これについては認めず、その徴収と支出は、管理費と分離して運用すべきとされた。
 本事例のインターネット料金が管理費に含まれるかどうかについて、判例では、インターネット回線設備は共用部分であるとしたうえで、マンション全体に設置されており、インターネット設備にも簡単に接続できることが、当該マンションの資産価値を高めていることも認めた。また、利用者と非利用者とを分離した場合、維持・管理または使用費用の算出の手間が生じコストもかかるため、一律に徴収することは合理的であるとして、利用者・非利用者で同一の管理費の負担を認めている(後記【参照判例】参照)。
 最近では、タワーマンションをはじめとして、共用部分の設備の充実とマンション生活の快適さや生活の満足感といったものを、分譲する場合のセールスポイントとしている場合もある。住民のためのパーティルームやシアタールーム、宅配ボックスなどが設置されていたり、区分所有者の親戚等が泊まれるゲストルームやプール、スポーツジムなどが設備されたりしている場合もある。これからも、共用部分でより充実した設備を備えたマンションが登場してくるであろう。その半面、このような設備が整ったマンションは、管理費が高いというデメリットもある。
 マンションの媒介においては、立地や間取り、価格のみにとらわれるのではなく、購入依頼者の生活スタイルに適した物件かどうかという観点で紹介する物件を選ぶことも必要であろう。
 なお、管理規約の内容については、区分所有者の特定承継人(譲受人)にも効力が生ずるものと定められており(同法律第46条)、規約で定められた費用の負担については、後にマンションを購入した者でも、支払い義務を負うことになる。

参照条文

 建物の区分所有等に関する法律第30条〈建物区分所有法〉(規約事項)
 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
 前2項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
・⑤ (略)
 同法律第46条(規約及び集会の決議の効力)
 規約及び集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対しても、その効力を生ずる。
 占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。
 マンションの管理の適正化に関する指針(改正 平成28年3月14日 国土交通省告示第490号)
 (略)
 (略)
 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項
1 ~6 (略)
7  良好な居住環境の維持及び向上
 マンションにおけるコミュニティ形成については、自治会及び町内会等( 以下「自治会」という。) は、管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。
8  (略)
〜六 (略)

参照判例

 広島地裁平成24年11月14日 判時2178号46頁(要旨)
 インターネットサービスが本件マンションの全戸に一律に提供されているということは、本件マンションの資産価値を増す方向で反映されるから、これらに要する費用についても、本件マンションの資産価値の維持ないし増大に資するものといえ、その観点からは、各区分所有者が、本件インターネットサービスの利用の有無にかかわらず、その費用支出による利益を受けていると言える。(中略)
 本件インターネットサービスの利用の有無を考慮することなく一律にインターネット利用料金の支払いを負担すべき旨規定している本件管理規約は、建物の区分所有等に関する法律30条3項の趣旨に照らしてみても、区分所有者間の利害の衡平が図られていない故に無効であるとまではいえない。

監修者のコメント

 インターネット利用料金やケーブルテレビの加入料金を一律に管理費に含ませることについては、新たに管理費に含ませる場合に、しばしば管理組合内部で意見が対立することが多い。しかし、これをどうするかは管理組合が自治的に決定できることであって、管理規約の問題に帰結する。回答にあるインターネットについての裁判例の判決も言うとおり、一律にすることも必ずしも不合理とはいえず、マンション一棟がケーブルテレビに加入し、その加入料金を管理費に含ませることに決まった場合、「自分はケーブルテレビは一切見ないからその決定は不当だ」とは言えないと考えられる。そのような問題が管理規約の改正において生ずることは理解できるが、質問のケースは、これからそのマンションを購入しようという者の主張であり、どうしてもその不公平は許せないというのであれば、そのマンションを購入しないことにすればよいのであって、その選択肢は自由に保障されているのである。

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