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ここでは、当センターが行っている不動産相談の中で、消費者や不動産業者の方々に有益と思われる相談内容をQ&A形式のかたちにして掲載しています。
掲載されている回答は、あくまでも個別の相談内容に即したものであることをご了承のうえご参照ください。
掲載にあたっては、プライバシーの保護のため、相談者等の氏名・企業名はすべて匿名にしてあります。
また、参照条文は、事例掲載日現在の法令に依っています。

1702-B-0225
売買契約をする当事者に代理人がいる場合の留意点と記載方法の整理

 不動産売買において、取引の当事者が契約締結に立会えないケースや締結の能力のない当事者の場合では、代理人が契約締結するが、実務上で注意する点や、契約書の署(記)名押印方法について知りたい。

事実関係

 当社は、不動産売買の媒介業者である。売買取引の際、売主・買主である売買当事者が遠隔地に住んでいたり、仕事上の都合で契約締結に同席できず代理人に依頼したりするケースが度々ある。また、未成年者である子が祖父から相続で取得した不動産を親権者である両親が代理人となって売却したり、夫婦共有不動産の売却を夫のみが契約時に同席して妻の所有部分も含めて契約したり、破産管財人が本人に代わって不動産を処分したりすることなども、少なからずある。
 このように、不動産売買の際に、取引の当事者が契約締結に立会わなかったり、代理人が契約締結したりする場面が多々あり、手順など不安に思う場面が多々ある。

質 問

 売買契約の当事者(売主や買主)が契約に立会えず、代理人が本人に代わって売買契約を締結するときの留意事項と、契約書に署(記)名押印するときの記載方法を整理しておきたい。

回 答

 質問のように、売買契約において、代理人が契約をすることは日常的に見られる。代理人が契約するときは、代理人に契約を代理する権限があるかをよく確認することが必要である。
 代理人には、任意代理人と法定代理人があり、その代理権の確認方法には違いがあるものの、最低限でも本人の意思確認、委任状及び代理人の本人確認などをする必要がある。媒介をする宅建業者は、代理権限の有無に十分留意しなければならない。かりに確認を怠ったり不十分であったりしたために当事者に損害を与えてしまった場合は、宅建業者の注意義務違反を問われることがある。

<任意代理の場合>

 不動産の取引で代理人がいる場合は、本人が第三者に代理権を与え売買をする、任意代理が多数である。代理人の資格は法的には規定されておらず、誰でもなることが可能(民法第99条・第102条)であり、宅建業者は、その代理人に代理権が本当にあるかどうかの確認を慎重に調査することが求められる。
 代理権の存在は、一般的に、代理人が相手方に本人の印鑑証明書付の委任状を提示して行われるが、不動産取引等の高額かつ重要な取引では、さらに突っ込んだ確認が必要である。
 例えば、親族であれば本人の実印のありかを知っていることが多く、本人に無断で印鑑証明書の交付手続きをすることも、出来なくはない。こういった場合は、印鑑証明書付委任状だけでは不十分であるため、必ず本人と面談の上、本人確認と不動産売却の意思確認及び当該代理人に委任した事実の有無を確認することが必要である。電話で確認する方法もあるが、原則は面談したほうが確実であろう。

【任意代理のときの代理人の署(記)名押印方法】

 売主 住所 大阪府大阪市○○区○○2丁目△△番△号
氏名 近 代 一 郎
 近代一郎代理人
 東京都○○区○○1丁目△△番△号
 近 代 次 郎  ㊞          注)本人の印は不要

【共有名で、一方の共有者が、他方の代理人となるときの署(記)名押印方法】

 売主 住所 東京都○○区○○1丁目△△番△号
氏名 近 代 一 郎  ㊞
住所 東京都○○区○○1丁目△△番△号
氏名 近 代 正 子
近 代 正 子代理人
東京都○○区○○1丁目△△番△号
近 代 一 郎     ㊞    注)本人の印は不要


<法定代理の場合>
1)  当事者が未成年者の場合
 年齢が満20歳に達していない者は、未成年者として法定代理人の同意を得ないで売買契約等の法律行為をすることはできない(同法第4条・第5条)。同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる(同法第5条第②項)。例外として、20歳未満でも結婚している者は、成年者と同様とみなされ法律行為が可能とされている(同法第753条)。
 未成年者が不動産を売買するには親権者である両親が法定代理人となって行うことになる(同法第818条)が、両親が離婚している場合や死亡等により一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う(同法第818条第③項、同法第819条第①~④項)。なお、子の利益のため必要があると認められるときは、家庭裁判所は、親権者を他の一方に変更することができる(同法第819条第⑥項)。
 宅建業者は、誰が親権者であるか戸籍謄本により確認することが必要であるため、代理人である親に戸籍謄本を提示してもらうことになる。

【未成年者の親権者が法定代理人となるときの署(記)名押印方法】

 売主 住所 東京都○○区○○1丁目△△番△号
氏名 近 代 一 郎
近代一郎法定代理人
東京都○○区○○1丁目△△番△号
親権者 父 近 代 太 郎  ㊞
親権者 母 近 代 正 子  ㊞
               注)本人の印は不要


2)  当事者が成年被後見人の場合
 成年後見制度は、精神上の障がいにより事理を弁識する能力が十分でない者に対する保護制度で、障がいの程度により成年被後見人、被保佐人、被補助人の3類型が法によって定められており、行為能力がそれぞれ制限される(同法第9条、第13条、第17条)。
 家庭裁判所の審判により法定代理人である保護者として、成年後見人、保佐人、補助人が選任されて開始する(同法第7条、第11条、第15条)。
 不動産の売買等法律行為を行う際には、成年被後見人は売買ができないので法定代理人である後見人が代理して契約締結することになる。成年被後見人が単独で売買契約したときは、取消の対象となる(同法第9条)。また自宅売買の場合は、家庭裁判所の許可を得なければならず(同法第859条の3)、許可を得ないでした自宅の売却は無効となる。
 なお、不動産売買の際にする被後見人であるか否かの確認は、後見人が確認できる後見登記事項証明書(法務局交付)によってする。
 被保佐人が不動産の売買をするには保佐人の同意が必要(同法第13条第3項)であるが、代理権付与の審判により、保佐人が一定の法律行為について代理権を得ることもできる(同法第876条の4)。
 被補助人の場合は、原則として法律行為をすることができるが、家庭裁判所が補助人の同意を要するとした不動産の売買等の法律行為については、補助人の同意が必要である(同法第17条)。
 実務のポイントとしては、補助人は、保佐人と同様に、一定の法律行為について代理権を得ることができる(同法第876条の9)、保佐人及び補助人は、ともにその権限については事前確認が大切であることが挙げられる。

【成年被後見人が売主の場合の後見人の署(記)名押印方法】

 売主 住所 大阪府大阪市○○区○○2丁目△△番△号
氏名 近 代 一 郎
 近代一郎成年後見人
  東京都○○区○○1丁目△△番△号
  近 代 太 郎 ㊞   注)本人の印は不要

<破産管財人の場合>

 破産者が、支払不能や債務超過の状態になってしまった場合、債務者または債権者の破産申し立てにより、裁判所が破産手続開始を決定し、同時に破産管財人を選任する。破産管財人には、通常弁護士が選任される。債務者の財産は、破産財団として組成され、その財産を換価し、債権者に分配する。その際、不動産があれば破産管財人が売主となる。なお、抵当権等の担保権が付されているときは、破産手続によらずに行使できる、別除権がある(同法第65条)。こういった不動産を実務で取引する際は、抵当権者等から抵当権抹消の承諾を得る必要がある。
 なお、破産管財人が売主となるときは、裁判所が発行する破産管財人資格証明書を確認する必要がある。また、当事者に代わり破産管財人が行う任意売却をする場合には、裁判所の許可が必要であるため、任意売却にかかる裁判所の許可書の確認をしておくことが必要である。

【破産管財人が売主になるときの署(記)名押印方法】

 破産者 □□□□破産管財人
 売主 住所 東京都○○区○○1丁目△△番△号
氏名 弁護士 ○ ○ ○ ○  ㊞
         注)印は裁判所への届出印


参照条文

 民法第4条(成年)
 年齢20歳をもって、成年とする。
 同法第5条(未成年者の法律行為)
 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
   前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
   (略)
 同法第7条(後見開始の審判)
 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
 同法第8条(成年被後見人及び成年後見人)
 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
 同法第9条(成年被後見人の法律行為)
 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
 同法第11条(保佐開始の審判)
 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。
 同法第12条(被保佐人及び保佐人)
 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。
 同法第13条(保佐人の同意を要する行為等)
 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
・二 (略)
 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
〜九 (略)
 (略)
 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
 同法第15条(補助開始の審判)
 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
   本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
   (略)
 同法第16条(被補助人及び補助人)
 補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。
 同法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等)
 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。
   本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
   補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
   補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
 同法第99条(代理行為の要件及び効果)
 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
   前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
 同法第102条(代理人の行為能力)
 代理人は、行為能力者であることを要しない。
 同法第753条(婚姻による成年擬制)
 未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
 同法第818条(親権者)
 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
   子が養子であるときは、養親の親権に服する。
   親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
 同法第819条(離婚又は認知の場合の親権者)
 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
   裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
   子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
   父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
   (略)
   子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
 同法第824条(財産の管理及び代表)
 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
 同法第826条(利益相反行為)
 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
   親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
 同法第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
 成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
 同法第876条の4(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
  ・③ (略)
 同法第876条の9(補助人に代理権を付与する旨の審判)
 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
   (略)
 破産法第2条(定義)
 この法律において「破産手続」とは、次章以下(第12章を除く。)に定めるところにより、債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
  〜⑪ (略)
   この法律において「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者をいう。
  ・⑭ (略)
 破産法第65条(別除権)
 別除権は、破産手続によらないで、行使することができる。
   担保権(特別の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この項において同じ。)の目的である財産が破産管財人による任意売却その他の事由により破産財団に属しないこととなった場合において当該担保権がなお存続するときにおける当該担保権を有する者も、その目的である財産について別除権を有する。

監修者のコメント

 媒介業者が売主の代理人と称する者から、本人の実印が押されている委任状と印鑑証明書を受け取り、これを信じて売買を進めたところ、その代理人と称した者は実は無権代理人であり、受領した売買代金を持ち逃げして買主に多大な損害を与えたという事案が起きることがある。この場合、売主本人の意思確認をしなかった、一挙手一投足の労を惜しんだために買主に損害を与えたとして、媒介業者の責任が肯定されるのが殆んどである。
 また、意外にも誤解されていることに親権者が未成年の子の代理人となるケースがある。例えば、夫が死亡し、妻と未成年の子が共同で相続した土地を売却する場合、子の共有持分を子の母が法定代理人として売却することができる。この場合、「利益相反行為」に当たるとして、子の特別代理人を選任しなければならないと考えるのは誤りで、親権者が子との共有不動産を一括して売却することは「利益相反行為」ではない。「利益相反行為」は、例えば、親権者が借金する際に、子の持分も含めて抵当権を設定する場合のように、親の利益になり、同時に子の損失となるような行為をいう。
 なお、近時、高齢者が所有する土地を代理人が売却するケースも増えているが、高齢者の判断能力に十分な注意を図られたい。たとえ、その子が親の代理人となって行った売却も、その委任をした時に親に意思能力がなければ、委任状があったとしても委任自体が無効で無権代理と同じであり、結局は紛争に巻き込まれることになる。

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