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賃貸事例 0805-R-0031
賃貸アパート等の「立退き交渉」と非弁行為

 不動産業者の業務の中には、古アパートの入居者の「立退き交渉」などの業務が含まれることがあるが、これらの業務を行うことは、非弁活動として、弁護士法に違反することになるのか。

事実関係
 先日の新聞誌上で、地上げに絡む弁護士法違反の問題が報じられたが、我々不動産業者の業務の中には、賃貸アパートの入居者の「立退き交渉」などの業務も含まれることがある。
 
質問
このような業務は、弁護士法違反になるということか。
 
回答
1.結 論
「報酬」を受けるか否かによって、結論は異なる。

なお、因みに、弁護士法違反(非弁行為)になるかどうかの判断基準の1つとして、「立退き交渉」に関する業務が、弁護士法第72条で禁止している「法律事件」に関する業務に該当するかどうかについて、判例は、「賃貸人の代理人として、その賃借人らとの間で建物の賃貸借契約を合意解除し、当該賃借人らに建物から退去して明渡してもらうという事務をすること」が該当するとしており(広島高判平成4年3月6日判時1420号80頁)、また、その代理行為についても、同条で禁止している「代理」に該当するか否かの判断基準として、判例は、当該行為を実質的に判断し、「何人の名義をもってするかを問わず、実質的に代理が行われたと同一の効果を生ずる場合を含む。」としている(最判昭和39年12月2日刑集18巻10号679頁、大判昭和14年3月17日刑集18巻145頁)。
 
2.理由
1.  弁護士法違反になるかどうかは、(1)その依頼の内容がどのようなものであるか(「法律事件」であるか否か)、(2)その依頼に対し、不動産業者がどのような対応をしたか(その対応の内容が「法律事務」を行ったといえるか否か)、そして、その不動産業者が、それらの行為を、(3)「報酬」を得る目的で、(4)「反覆継続」する意思で行ったのか(「業」として行ったのか)、という4つの要件に該当するかどうかで判断される(後記【参照条文】参照)。
 
2.  判例によれば、(1)の「法律事件」とは、「法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうもの」とされており(東京高判昭和39年9月29日高刑集17巻6号597頁、札幌高判昭和46年11月30日刑裁月報11巻1456頁、広島高判平成4年3月6日判時1420号80頁)、(2)の「法律事務」とは、それらの法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件について法律上の効果を発生、変更する事項の処理をいうとされている(東京高判昭和39年9月29日高刑集17巻6号597頁、東京地判昭和38年12月16日判夕159号133頁)。
 したがって、不動産業者が、賃借人との間で立退き交渉を行った結果、そのまとまった内容を契約書にする行為のように、法律上の効果を保全・明確化する事項の処理も「法律事務」に該当すると解される。
 
3.  さらに、判例は、(3)の「報酬」を得る目的があったか否かについて、「報酬を受けるについては、必ずしも事前に報酬支払の特約をした場合に限らず、処理の途中あるいは解決後に依頼者が謝礼を持参するのが通例であることを知り、これを予期していた場合でも、報酬を得る目的があるというを妨げない」としており(東京高判昭和50年1月21日東高刑時報26巻1号4頁)、また、「報酬を得る主観的な目的があれば足りるから、現実に報酬を得たことによって本罪が成立するものではない」としている(東京高判昭和50年8月5日刑裁月報7巻7号786頁)。
 また、報酬は、事件を依頼する者から受け取る場合に限らず、第三者から受け取る場合であってもよいと解される。
 
4.  最後の要件である(4)の「業として」行ったか否かについては、判例は、「業とする」ということの意義について、「反覆的に又は反覆継続の意思をもって法律事務の取扱等をし、それが業務性を帯びるに至った場合をさすと解すべきである」とし(最判昭和50年4月4日民集29巻4号317頁)、「反覆継続の意思が認められれば、具体的になされた行為の多少も問うところではない」としている(最判昭和34年12月5日刑集13巻12号3174号)。
 
参照条文
  ○  弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)
   弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
 
監修者のコメント
 入居者の立退交渉は、明らかに弁護士法第72条の弁護士でない者が行ってはならない「法律事件」である。しかし、同条に関しては、あくまでもその報酬を受けることが同法違反の成立要件であり、【回答】にあるように慎重な判断を要する。

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